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第38話 支援魔術師、教え子たちと決戦に臨む!!

 俺たちの目の前に現れたのは、片翼を生やした巨大なデーモンだった。


 その体躯は、二階建ての建物ほどの高さがある。


 デーモンにはあらゆる亜種が存在するが、その中でもこいつは最強クラスのデーモン。剣を振るい、口から瘴気を吐き、さらには体に光魔術を含む全ての魔術に耐性を持っていたりする。


 しかも巨体ゆえにタフで腕力が強い。聖魔術も効かない……弱点のなくなったデーモン──もはや、デーモンとは別物と言っていいだろう。


 レイナは刀を構え、珍しく深刻そうな顔をする。


「厄介なことになりましたね」

「君にしては随分弱気なことを言うな」

「きっと先生が一緒だからでしょう──来ます!!」


 ルキフェルはこちらへ漆黒の剣を振るってきた。


 大きいからといってその動きが鈍重というわけではない。レイナには及ばないが、達人並みの剣の速さだ。


「【加速】、【跳躍】!」


 俺たちは支援魔術を自らにかけ、後ろへ跳ぶ。一振り、二振り──ルキフェルが繰り出す高速の剣を避けていった。


 それが終わると、今度は口から闇の魔力を宿した強力なブレスをこちらへ放ってくる。


「【シールド】、【聖纏】!!」


 俺はそれを聖の魔力を宿したシールドを展開して防ぐ。


 攻撃自体は防げる……しかしこちらが攻撃となると厄介だ。


「ここはやはり攻撃しかないな」

「そうでしょう。ですので、ここは私が先生の魔術を──あら」


 俺たちの後ろから、「先生!」と呼ぶ声が。


 振り返ると、そこにはミアとルーナが来ていた。


「先生、やらせてください!!」

「お荷物だなんて言わないでよ?」


 盾を構えるミアと、杖を構えるルーナ。


 遅れてやってきたアルノとヴェルガーも武器を手に言う。


「先生、俺たちもやらせてくれ!」

「後方はもう味方も来ているから心配ありません! シェリカとアネアも残ってくれています!!」


 どうやら、皆俺たちに手を貸してくれるらしい。


 レイナははあとため息を吐くと諦めたような顔で言う。


「どうします、先生?」


 決まっている。俺は──支援魔術が一番得意なのだから。


「分かった。俺が皆を全力で支援する! 思いっきり戦え!」


 俺が言うと、皆おうと応じてくれた。


 やがてデーモンが黒いブレスを吐き終えると、ミアがまず走った。


「私が敵の攻撃を防ぎます!!」


 それを追って、レイナ、アルノ、ヴェルガーが走り出す。


「じゃあ私はチマチマ敵を削るか!」


 ルーナは杖を掲げた。


 皆、それぞれ自分の特性を理解している。


 ミアは大盾で常に敵と一番近い距離に立って攻撃を受けるつもりだ。


 レイナ、アルノ、ヴェルガーはミアと連携し、四方から隙を見て攻撃を繰り返すのだろう。


 だが、ルキフェルの剣は速く、容易には近づけない。恐らくだが、ジィルバスのように周囲を攻撃する魔術もあるだろう。


 ルーナはともかく強力な攻撃魔術で敵の勢いを削ぐ──これも魔術耐性があるルキフェルには、そこまでの効果は与えられない。


 だからまずは、敵に大きな隙を作る必要がある。その隙を作る機会をまずは窺おう。


 やがて接近したミアに、ルキフェルが剣を振り上げた。


 俺はミアへと両手を向ける。


 ミアの体に【不動】を、その盾には【鉄壁】をかけた。


 ミアは大盾を構えると、ルキフェルの巨剣をモノともせずに防いだ。


 大盾に剣を振るたびに、周囲へ鐘のような音が鳴り響く。ミアはそれを全て防いでいく。


 ルーナといえば、特にルキフェルの頭部を狙って魔術を放っていた。


 やがてレイナは一瞬の隙を突き、ルキフェルの足に一太刀浴びせる。ルキフェルが片手で周囲へと黒い瘴気を放つと、すぐに離脱した。


 強めにレイナの刀へ【聖纏】をかけたが、ルキフェルの傷口が広がる様子はない。外皮だけでなく、体の中にも魔術耐性があるようだ。


 魔力を使わせる必要もあるな──


 アルノはレイナを見て愉快そうに言う。


「随分と速いな」

「先生の支援魔術のおかげです。アルノさんはそんなこともできないんです?」


 それを聞いたアルノはふっと笑う。


「バカにされちゃ困る!! 俺だって先生の支援魔術を使えるんだ!!」


 ミアがルキフェルの剣を盾で受ける中、アルノが走りルキフェルを槍で突く。【加速】で相当な速さになっている。やはりアルノも成長したな。


 レイナも同様に隙を見て刀を振るった。ヴェルガーも攻撃する素振りを見せ注意を惹く。


 俺は皆の攻撃を強化するが……やはり大した効き目は見られない。もちろん、ルキフェルも全く余裕のない状況なのだが。


 皆は十分に連携が取れている──ここは、まずミアに隙を作ってもらうか。


「ミア! 敵の巨剣を弾き返せるか!?」

「やります!!」


 ミアは即答し盾を振りかぶるように構えた。


 俺がミアに【加速】をかけると、やがてルキフェルが巨剣を振り下ろしてきた。


 迫り来る巨剣に、ミアは盾を大きく振る。


 ──その剣と盾が触れようとするまさにその時、


「──【軽量化】!!」


 俺はルキフェルの剣を軽くした。


 ミアの盾は軽くなったルキフェルの巨剣を大きく跳ね返す。


「今だ!!」


 その隙を見て、ヴェルガーが走る。


「先生、跳びます!!」

「任せろ!」


 俺はヴェルガーの要望通り、【跳躍】と【軽量化】をかけた。


 高く跳んだヴェルガーはルキフェルの巨剣に剣を振り下ろす。


「重くするぞ!!」

「承知!!」


 俺は、ヴェルガーの剣に【不動】をかけた。


 ルキフェルの巨剣は重い一撃を受けると、所有者の手から弾き落とされる。


 慌ててルキフェルは地に落ちた巨剣を手に取ろうとした。だが、その巨剣には【不動】をかけてある。


 重い剣にルキフェルは一瞬混乱したようだった。


 この隙に、レイナとアルノが駆け寄った。


 アルノが槍を構えて言う。


「どっちが敵を多く攻撃できるか勝負だ、後輩!!」

「あなたは私の後輩ですよ、アルノさん!!」

「へ?」


 間抜けな顔をするアルノを尻目に、レイナは刀でルキフェルを斬りつけていく。足を中心に、たまに跳んで胴体や頭部まで。


 アルノも負けじと槍でルキフェルの関節部を中心に突いていった。


 ヴェルガーも大剣を振るい、ミアもメイスを振るった。


 頭部には、先ほどと同じく容赦なくルーナの攻撃魔術が飛んでいる。


「グアアああああああ!!」


 悲鳴を上げることがなかったルキフェルがついに悲鳴を上げた。


 巨剣を捨て去ると、周囲の皆を一掃しようと魔術を放とうとした。


 これはルキフェルを屠る絶好の機会──


 俺はルーナに振り返る。


「ルーナ、悪いが少しだけ魔力を分けてくれるか?」

「ついに私を頼ったわね」


 ルーナはふふんと愉快そうに笑った。


「いいわ。使って」

「ありがとう」


 ルキフェルは周囲に黒い瘴気を放つ。先ほどまでの小規模なものではなく、俺のもとまで届くような広範囲の魔術だ。


 もちろん、それを喰らうレイナたちではない。離脱し、瘴気を避けた。


 ルキフェルはこれで相当な魔力を使った──今なら魔術が通用する。


「【魔撥】!!」


 俺はルキフェルの体に魔力の吸収を阻害する【魔撥】をかける。


 さらにそこへ【水纏】を放った。


「ルーナ!! 電撃を喰らわせろ!!」

「任せなさい!!」


 ルーナはすぐに杖をルキフェルに振るった。


 瞬く間に、無数の雷が轟音を響かせながらルキフェルに落ちる。


「がぁあああああ!!」


 ルキフェルは悲痛な叫びを上げた。


 その体は大きくふらついている。


 ここまでくれば──


 レイナたちがルキフェルへと走る。


 ヴェルガーとミアはルキフェルの足を、アルノは胴体を攻撃する。そしてレイナは──高く跳び、ルキフェルの首を斬りつけた。


「グアあああああああああ!!」


 ルキフェルは耳をつんざくような悲鳴を上げる。やがてその体は地に伏すと灰へと変わっていくのだった。

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