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第14話 支援魔術師、久々にダンジョンで戦う!

 俺は今、ウルヴァン村のダンジョンにいる。


 石造りの廊下を進みながら順調にリビングアーマーを倒し、今はウィスプという目に見えない魔物と戦っていた。


 ウィスプは浮遊する火の玉のような姿をしているが、人や動物の目では捉えられない。多様な魔術を使い、奇襲攻撃を得意とする魔物だ。


 しかし、目では捉えられなくても、魔力でだいたいの位置が分かる。


 俺はさらに自身へ【魔視】をかけ、曖昧な魔力の反応を可視化させた。


 ウィスプが攻撃しようと動きを止め、魔法陣を作り始める。


 そこに、


「──【聖光】!」


 俺の放った光弾を浴びたウィスプは、青白い灰となって落ちていく。


 仲間がいるなら、【魔光】という支援魔術で魔力に光を纏わせる魔術で、ウィスプの場所を肉眼で捉えられるようにする。

 しかし今は俺一人。その必要はない。


 一人というのは寂しいが、色々楽なんだよな──


「よし、進むか」


 ここまで順調に進めている。しかし一つ不安なのが、倒されていないアンデッドが多くなってきた点だ。


「倒されたアンデッドが復活した……いや、ミアたちはアンデッドを倒さずに突破したか」


 今まではリビングアーマーの鎧にしろウィスプの遺灰にしろ、何かしら戦った跡が残されていた。分かれ道も、その足跡を頼りに進んできた。おそらくは、ミアたちが魔物を倒し進んだ跡だろうと。


 だが、だんだんと遺灰が少なくなっている。


 どこかでミアたちの遺体を見たわけではない。おそらくはダンジョンコア破壊を優先するため、道中の魔物を無視したんだ。


 ウィスプの攻撃の雨の中、焦って走り抜けた様が目に浮かぶ。


 きっとウィスプ対策を怠っていたのだろう。普通ならリーダーが撤退を考えるべきところだが……


 ミアたちが危ないかもしれない。【加速】と【俊足】をかけ、前へと急ぐ。


 レイナは……ついてきているな。つかず離れず、姿を見せずに尾行しているようだ。


 やがて、通路が左右に分岐する。戦いの跡がないので、どちらに進んだかは一見して分からない。


「さて、どっちか」


 この場合、いくつかの選択肢があるが、まずはミアたちがこの場を全力で走っていることを考える。近衛騎士たちは重厚な鎧を身に纏っており、すぐに汗を流す。


 そうでなくても擦り傷に与る出血など、床に跡があるかもしれない。


 俺は、【鷹目】という支援魔術をかける。これはより遠くのものを、鮮明に見ることができる魔術だ。


 それで両方の道を探ると、右の道に水滴の跡が見えた。


「こっちか」


 右の道を進み始める。ウィスプとリビングアーマーを高速で倒し、奥へと走っていった。


 すると、前方に濃い魔力の反応が現れる。


「人と──魔物が戦っているな」


 やがてそれは目にも分かるようになってきた。


 鎧の者たちが三名、リビングアーマー二体に立ち塞がれ、周囲からウィスプ五体の攻撃を受けている。


 あれが近衛騎士たちだろう。しかしミアの姿はなかった。


「お、おい!! さっさと聖魔術でウィスプの場所を洗い出せ!」

「い、今やっている!」

「そんなことより無理にでも撤退すべきだ! じゃなきゃミアの犠牲が」


 剣や盾で応戦する鎧の者たち。防戦一方だ。


 そんな中、一人の鎧の少年が戦鬪から抜け出してくる。


「こ、こんな場所で死ねるか!」

「ぼ、ボルダス、待て!!」


 ボルダスと呼ばれた少年は他の二人を置き去りにして逃げていく。俺のことも一瞥するだけで、通り過ぎていった。


 なぜかレイナの近くで盛大にコケたようだが、今はあの二人の救援が優先だ。


 まずはリビングアーマーの動きを【不動】で止め、聖魔術で倒す。その後は、ウィスプを──十秒で、全てを仕留めることができた。


 俺は近衛騎士たち二人に【自然治癒】をかけ、そのまま通り過ぎる。


「え?」

「あとは自分で帰れるな」


 そう言い残し、俺は前方に向かった。


 ミアならまだ耐えているはず。しかし急がなければ。


 まっすぐ通路を走ると、すぐに新たな魔力の反応を掴めた。


 広い空間の中、十体以上のリビングアーマーとウィスプが、一人の人間を囲んでいる。


 いわゆるキルゾーン。多くの魔物が配置され、侵入すれば四方から一斉に攻撃してくる空間だ。ダンジョンの行き止まりに作られていることが多い。


 入り口が扉で閉じられることが多いが、今回は先ほどの近衛騎士たちが扉を破壊したのだろう。


 一気にキルゾーンである石室へと突入する。


 するとそこには、大盾を手に必死に敵の攻撃を耐えるミアがいた。


「ミア!」


 呼びかけるもミアは顔を向ける余裕もない。ただしその横顔から驚いてることは見てとれた。


 まずはミアの体に【自然治癒】をかけ、体力と傷を癒す。さらに【鉄壁】をかけてミアの装備を頑丈にするが、【加速】や【俊足】は体への負荷が多いからかけない。


 ミアは容易にリビングアーマーの剣や、ウィスプの魔術を盾で防げるようになった。


 次は敵への対処だ。

 リビングアーマーに【不動】をかけ、ウィスプに【魔光】をかけて姿を露わにする。 


 するとミアは俺に呼応するかのように、メイスをリビングアーマーの兜へと振りかぶる。


 ──前と同じものをご所望か。


「──【不動】!」


 重さを加えたメイスによってリビングアーマーの兜が吹き飛ばされ、中の青白い霊体が露わになる。


 こうなれば、狙いを付ける必要もない。聖魔術の光でリビングアーマーを倒す。


 同じようにもう一体のリビングアーマーを。その間に俺がウィスプを聖魔術で倒す──それを繰り返した。


 やがて最後のリビングアーマーがただの鎧となって崩れていく。


「はあ、はあ……た、倒せた」


 息を切らしながら、ミアは周囲を見渡した。しかし盾を杖に、立っているのがやっとという状況。


 俺は慌ててミアに駆け寄る。


「ミア!」

「と、トールさん」


 ミアはこちらに振り向き、信じれらないといった顔を見せる。


「た、助かりました。でも、なぜ、ここに……」

「近衛騎士団の本部に行ったんだが、危ないやつと一緒だって」

「あ、あたしのために……来てくれたんですか」


 目を潤ませ、顔を赤くするミア。


「大丈夫か、ミア? まさかどこか」

「胸が、胸が……!」

「む、胸が痛いのか?」

「痛くありません! そうじゃなくて」

「じゃあ……うん、待って」


 俺は周囲の異変に気がつく。


 倒された魔物の遺灰から、魔力が一箇所に集まっていく。


「この動き──やつか」


 魔力が集まると、そこに黒い靄が発生する。


 その靄が一瞬にして霧散すると、そこには大鎌を持った黒いローブの魔物が現れた。


 胴体は黒い靄でできており、頭部には人間の十倍もの大きさの頭蓋骨が見える。足はない。


「デスイーターか」


 その向こうには、紫色に輝く結晶──ダンジョンコアがある部屋が現れる。


「しかも、ダンジョンボス──」

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