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辺境伯 3

 リディアが辺境伯領に来て数日が経った。

 最初のうちは辺境伯から何か言われるかと、ビクビクして過ごしていたが何日経っても何も言われない。さらに辺境伯は忙しいのか、またはリディアのことを避けているのかは分からないが、食事は部屋に運ばれてくるため辺境伯に会うこともなかった。

 リディアにつけられたメイドから庭の散策や屋敷の見学などは勧められたが、辺境伯への挨拶や面会等については言われなかった。部屋で過ごすのが好きなリディアは、持ってきた本を読んだり刺繍をしたりして気楽に過ごしている。

 このまま辺境伯に会わずに婚約破棄になれば良いと思いながら今日も一日部屋でのんびり椅子に座って過ごしていると部屋の外が何やら騒がしい。何事かと思っていると急に部屋の扉を開けられ、辺境伯が入ってきた。


「ずっと部屋に篭りきりだと聞いたが、どこか具合でも悪いのか!?」

「え??」


 辺境伯は近づいて来てリディアの顔をじっと見つめる。


「たしかに顔色が悪いな。医者を呼ぼう。」


 近くにいたメイドに医者を呼ぶように指示を出す。


「とりあえず、横になったほうが良い。歩けるか?」


 リディアは急なことに驚き、顔色の悪さや医者は必要ないことを説明しなきゃと焦るあまり、うまく言葉が出てこない。


「……少し失礼する」


 リディアが無言なのを、具合が悪いせいだと思ったのか辺境伯はそう言うと手を伸ばし軽々とリディアを抱き抱えた。


「ひゃっ!!!?」


 急なことに驚いたリディアは降りようと体を動かすがしっかりと支えられびくともしない。


「危ないからじっとしていろ」


 思っていたよりも近くで声が聞こえ、リディアは恥ずかしさで何も考えられなくなる。

 辺境伯はそのままリディアをベッドまで連れて行き、そっと寝かせると自身も手近な椅子に腰掛ける。てっきりすぐに出ていくと思っていたリディアは不思議に思って辺境伯のほうを見ると、不安と心配が入り混ざったような顔をした辺境伯と目が合う。


「慣れない場所に来て体調を崩したのだろう。気が付けず、すまない。もう少し気にしておくべきだった。」


 今までリディアに会わなかったことを気にしているのだろう。しかしリディアとしては部屋にこもって自由気ままに過ごせていたので謝罪されるような事は何もない。頻繁に会いに来られるほうが緊張して疲れてしまう。だがこの状況で一人きりのほうが気楽だとは言えるはずもない。


「いえ、皆さまには良くしていただいております。顔色の悪さも元からですので、辺境伯様が心配なさるようなことではありません」


 騙して婚約したにもかかわらず、きちんと客人として扱われている。本来なら冷遇されても文句は言えない立場である。そのように思っての言葉だったが、辺境伯は眉をひそめている。なにかまずいことを言ってしまっただろうかとリディアは不安になり辺境伯を見る。辺境伯が何かを言おうとした瞬間、扉をノックする音が響いた。


「お医者さまがお見えになりました」

「わかった。入れ。診察が終わったら教えてくれ」


 そう言って医者と入れ違いで辺境伯は部屋を後にした。

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