お茶会 3
きちんと手入れされた庭には色とりどりの花が咲き、目を楽しませてくれる。お茶会用のテーブルにはすでに人がいてお喋りに花を咲かせている。どうやらリディアたちが到着したのが最後のようだった。テーブルを囲んでいるうちの一人が、こちらに気がつくと席を立つ。
「来てくれて嬉しいわ」
「久しぶり! 誘ってくれてありがとう」
招待主と思われる令嬢とエレノアはお互いを抱きしめあって再会を喜ぶ。令嬢はストレートの艶やかな黒髪を腰まで伸ばしている。大きな瞳が可愛らしく物腰も柔らかで落ち着いた雰囲気をしている。ドレスはこっくりとした色合いでシンプルだが、一目見て上質な物だと分かる。
「そちらは、エレノアのお姉様かしら?」
観察しながら立っていたリディアは、話を振られて焦る。
「はじめまして、リディア=ウィレムスと申します。本日はお招き頂きありがとうございますっ」
スカートの端をつかみ上半身はそのままで膝を折り、最近習った内容を噛まずになんとか言う。
「はじめまして。アネットです。今日は来てくれてありがとうございます」
「お姉様、緊張しすぎよ。気心の知れた友達しかいないから、もっと楽にして大丈夫よ」
そんなことを言われても、お茶会なんてほぼ参加したことのないリディアにとっては無理な話だ。
「今日はリディアさんが一緒だと聞いて、楽しみにしていたんです。ゆっくりしていってくださいね」
「こちらこそ、よろしくお願い致します」
「お姉様、硬いわ」
「ふふふ、何事も慣れですわ。お茶を用意させるので席へどうぞ」
ギクシャクとした返事をするリディアにエレノアが容赦なく指摘する。それを見たアネットは気にしていないのか微笑んで二人を案内してくれる。
案内された席まで行くと、先に来ていた二人の令嬢が興味深々といったように席を立つ。
「はじめまして、エレノア嬢とは社交界で知り合った。テッサだ。よろしく」
背の高いスタイリッシュな女性が先に挨拶をしてくれる。髪をかっちりと綺麗にまとめ、スラリとした身長に合わせて体に沿ったドレスを着ている。目の覚めるような青い色がとても良く似合っている。
「はじめまして。私はセシリアと言います。よろしくお願いします」
もう一人は小柄な女性でうさぎのような小動物を思わせる。にこにことして可愛らしい雰囲気だ。セシリアの着ているドレスはフリルやリボンがところどころについており、下手をすると派手に見えるか幼稚になってしまうのだが絶妙な塩梅で配置されていてよく似合っている。三つ編みにした髪型も可愛らしい。
「リディア=ウィレムスです。よろしくお願いします」
「エレノア嬢から、あなたのことはよく聞いているよ」
「そうなんですか? エリィはなんて?」
あまり良いことは言われてない気がするが、思わず聞いてしまう。
「とても素敵なお姉様がいると言ってましたよ」
横からアネットが教えてくれる。
「え?」
「ちょっと! 恥ずかしいから言わないで!」
エレノアの白い肌が一瞬で赤く染まる。その反応からして本音なのだろう。まさかそんな風に言われてるとは思わなかった。
「それと、本当に双子だったんだね。よく似ている」
「似ていますか? 似ていないと言われることが多いですけど」
「全体の雰囲気は違いますけど、顔はよく似ていますよ」
テッサとアネットの言葉に驚く。セシリアもこくこくと頭を縦に振っているので同じ意見なのだろう。今まで似ていないと言われ続けていたせいで、あまり信じられない。
「お姉様は自分自身に無頓着すぎるんです。きちんと整えれば似ているのは当たり前でしょ」
「そうなの?」
「そうです。あと、もう少し外に出て健康に気を使えば、顔色も良くなってさらに似てくるわよ」
エレノアからも似ていると言われて嬉しくなる。さんざん他人から似ていないと言われて自信をなくしていた。時には酷いことを言う人もいた。リディアは親に愛されて育ったが、心無い一部の人のせいで、家族の中で一人だけ皆と違っているのではないかと不安になっていたのだ。
「――ありがとう」
涙ぐみそうになるのをなんとか堪える。これ以上話すと言葉と一緒に様々な想いが溢れでてしまいそうになる。
「立ち話もなんですから、座ってお茶会を始めましょう」
「そうだな」
「お姉様、お菓子は何にしますか」
リディアの胸が詰まって上手く言葉に出来ないのを察したのか、アネットは席へと促してくれる。他の皆も笑顔で移動する。
リディアはこの人たちとなら仲良くなれるだろうという淡い期待を胸に抱き、早くもお茶会へ参加して良かったと思うのだった。




