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辺境伯 1

 辺境伯領は国の東側に位置し、一年を通して気温はあまり上がらず、夏は涼しく過ごしやすい。


 そのため避暑地として人気が高い。自然豊かでこの地方にしか生えない薬草も多く、それを加工したスパイスや薬などが有名。以前は隣国との諍いもあったが現在は良好な関係を保っている。


 辺境伯は代々、国境を守り、騎士として活躍する者も多い。現在の辺境伯は社交を苦手としており、パーティーにはあまり参加せず、ごく一部の親しい人とのみ交流をしているらしい。



 屋敷を案内されながら、リディアは書物で得た辺境伯領の知識と辺境伯について聞いた話を頭の中でひたすら繰り返す。


 そうしていないと騙して婚約した罪悪感と、これからその相手と対面する緊張で倒れそうである。


 妹のエレノアから婚約を伝えられたあと、父からも正式に婚約成立を伝えられた。さらに婚約期間は習わしどおり辺境伯の元で過ごすことになっていた。


 相手を騙すようなやり方での婚約は出来ないと父にも申し出たが、辺境伯は良い人だから大丈夫だと笑顔で流されてしまった。


 婚約するくらいならお菓子は食べませんと子どもじみた抵抗も全く聞き入れられず、辺境伯領へ行く準備は順調に整い、当日を迎えた。


 婚約が決まって嬉しそうな父と妹に見送られ馬車に乗り、こうして今、辺境伯に会うために屋敷を案内されている。


「こちらで旦那様がお待ちです」


 そう言われて、案内された部屋に恐る恐る入るとそこには長身の男性がいた。

 少し長めの黒髪に、よく整った顔立ちと透き通るようなブルーの瞳は丸く見開かれ、驚いた顔でこちらを見ている。


「君がリディア=ウィレムスか?」


「はいっ」


 思わず見惚れていたリディアは名前を呼ばれて我にかえる。


「雰囲気がだいぶ違うな」


 怒ったような低めの声で問われ、リディアは早く謝罪をしなければと、頭を下げる。


「ももも、申し訳ございません。パーティーはエレノアで私はリディアなので違って、あのっ婚約は破棄しますからっ」


 焦せるあまり説明にならない言葉しか出てこなかった。

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