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PlanA kind  作者: 囮春
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あさのひかりとともに

 

 本を読み終えた。 ふぅ と、息が出る。 椅子に腰をかけ、目を閉じ、余韻に浸る。 面白いのか、そうでなかったのかと言われれば、面白い物語だった。少し、笑みが溢れるほどに___。 

 あぁでも、一つだけ、疑問があった。


「彼はなぜ、そうまで世界を愛したのだろう」


 薄く開いた瞼から光を感じた。 もう6時だ。

 本が積まれた机に、仲間入りをさせるように読み終え

 た本を置く。 几帳面な人、いや、本を大切にしている人が見れば、一言物申されるであろう所業。 いつかは、片付けなければ。 いつかは。


「わかってる。 ちゃんと、綺麗にするから」


 誰にも届かない言い訳をして、机を後にする。 これが、今日の僕___その1日の始まり。 


 ガチャ


 玄関を施錠し、あくびと共に出発する。 今日の1日が始まっていく____おはようございます。


 ここは、人が少なく観光客もあまり来ない、静かな港町。 石造りの家が建ち並び、雰囲気もあって、僕も気に入っている。 そう美しい町なのだ。 


『だからここに家を建たの。』


 確か、そう言っていた。 いつかの言葉を思い出し、坂を下る。 遠くから路面電車の音がする。


「____ドア閉まります。」


 毎朝のように揺られる路面電車を降り、仕事場へ向かう。 今日は、朝から日差しが強く、足取りが重くなる。 睡眠不足もその要因の一つだろう。 早く寝よう。


「アメく~ん、おはよ~!!」


「おはようございます。 今日は、朝早いんですね。」


 元気よく、人の目も気にせずに大声で走ってきたのは、仕事先の花屋<kind>の店主、さゆりさん。

いつも通りだと、店を開けた後に『ごめんごめん』と苦笑いしながら出てくるのがお約束だったのだが___。


「珍しいですね、こんな時間に。」


「そうなの! 今日こそって感じで、張り切ったの。 ほら、今日から私も20歳《はたち》! 大人だからね。 アメくんに、恥ずかしくない大人にならないと!」


「いつまで、持つのか見ものですね。 まぁ、わかってますので、そこまでの心配は、不要ですよ。」


 微妙な視線を向ける僕をよそに、今日から大の大人の仲間入りを果たす、さゆり氏は、大いに胸を張っていた。



「よいしょっと。 アメく~ん、そっちの鉢は、店頭に出しといてくれる?」


「了解です。 この青い鉢ですね?」


「そうそう。 おねが~い。」


 毎朝の準備。 店の中にしまっていた花たちをさゆりさんと二人で、店頭に並べる。 時間が過ぎるごとに人通りも次第に増えて、挨拶を交わす人の数も増える。 ありきたりな風景だが、『こういう普通に、もっと触れてほしいの!』と言われたのを思い出す。


「あれから___。」


 出かけた言葉を飲み込む。 今は、過ぎてしまった時間よりも、仕事をしよう。


「それも店頭に、並べますか?」


店のカウンターの上。 赤い花を指さしながら尋ねる。


「あぁ。 これはいいの。 贈り物だし。」


「贈り物? また、ですか?」


 さゆりさんは、モテる。 まぁ、見た目も魅力的なんだが、とにかく人当たりがいいし、面倒見もいい。 ボランティア等にも積極的に参加して、町のために頑張っている。 まぁ、それが原因で仕事に遅れることがあるのだが___。 それも、この人の味なのだろう。 良しとしよう。 


「ちがうよ。 今回は、た(・)ぶ(・)ん(・)お仕事かな~って感じ。」 


「たぶん?」


「まぁ、気にしないで。 これは、私の研究室に置いとくから。」


 研究室。 さゆりさんは、独学で植物の研究をしているそうだ。 僕は、一度も入ったことがないが、店の奥にその研究室があり、珍しい植物を保存、研究していると前に話していた。


「わかりました。 それでは、そろそろ時間ですね。 店のプレートをOPENにしてきます。」


「了解。 午前中は、任せていい? 少し、研究室に籠っているから。」


「いいですよ。 何かあれば、電話しますので、その時は出てくださいね。」


「うん! アメくんからのラブコールは、ちゃんと受け取るから!」


 ___よく言う。 前に連絡したときには、全然出なくて、とんでもない目にあわされたのだが。 この様子では、忘れているのだろう。 だから___。


「本当に、ですからね。 お昼抜きますよ。」


 この店では、昼に一度閉めて、一緒にご飯を食べることになっている。 その際は、料理が絶望的に苦手な、さゆりさんに代わって、僕が作ることになっている。 ___二年前から。


「ひえぇぇ。 それは、ご勘弁を。 アメちゃんのご飯を一日食べられないなんて辛すぎるぅぅ。」


 この通り、胃袋を掴んでしまえばこちらのものだ。


「じゃあ、受話器は、見える場所に置いておくね。 約束!」


「はいはい。 ほら、もう大丈夫ですよ。 行ってください。」


「うん! 愛してるよ。 アメちゃん!」


 ニコニコした笑顔を輝かせたまま彼女は、去っていった。


腕を上に伸ばし、体を逸らす。 う~んという声もれるほど、体を伸ばしたら___仕事を始めよう。 


 








 

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