第66話:炎の被害者と復讐者
ソリド
「無理だ!俺の刃じゃ、こいつの体に傷が付かねぇ!」
銀翼之混鳥に苦戦を強いられるソウタ一行。
イリス
「行って下さいガルドさん!跳台!!」
ガルドの前にジャンプ台が現れる。そのジャンプ台に向け走るガルド。
ガルド
「ドラァア!空回割りぃ!!!」
巨斧を持ち、
天空から銀翼之混鳥に重い一撃を入れるガルドとイリス。
銀翼之混鳥
「グルルアァァアアァァアア!!!!!」
ソウタ
「ナイスガルド、イリス!この隙は俺が狩る!
焼き鳥にして食ってやるぜ!核爆炎玉!」
ドゴオォオオオオオォオオ...!!!
銀翼之混鳥が怯んでいる隙に、
30mを超える爆炎の玉を投げつけるソウタ。
ソウタ
「やったか!?」
銀翼之混鳥
「キョアアァァアアァァァァアァァァ!!!!」
銀翼之混鳥は焼け野原から立ち上がり、雄叫びを上げる。
ガルド
「マジか、イリス、一旦コイツを抑えるぞい!」
イリス
「は、はい!」
二人が銀翼之混鳥を抑える中ソウタは...
ソウタ
「チッ、俺の炎は効かないってか?生意気な鳥だな、調教してやるよ。
簡単な事さ、銀の融点を超える温度で焼くまでだ!」
イリス
「待ってください、ソウタさん!そんな事したら近くの村にまで被害が!」
ソウタ
「言ってる場合か!ここで俺らが負けたら村どころか、
もっと色んな所に被害が出る!目先の未来じゃなくて、将来的な事考えろ!
多少の犠牲はやむを得ない!」
ガルド
「もしサイカンちゃんやイルカ君に被害が出たらどうする!?」
ソウタ
「死には...しねぇだろ...!」
ソリド
「テメェ!正気か!」
ソウタ
「これでこいつを倒せなければ、俺ら恥のレッテルを貼られるんだぞ!」
イリス
「それはッ...!!」
ガルド
「ぐっ...」
実はソウタ一行、
下剋上クエストとしてこの銀翼之混鳥討伐へ赴いていた。
下剋上クエストとは、近々評価が落ちている冒険者が、
自分たちの実力に見合わないクエストに挑むことを指す。
これをクリアすれば、無事名誉挽回、通常以上のクリア報酬が貰える。
失敗すればパーティは一律1ランク降格、そして大衆の門前で、
"イキって失敗した冒険者"として晒され、馬鹿にされることを余儀なくされる。
起源は何処かのギルドの高難易度クエストにイキって挑んだ冒険者が、
言い出しっぺ以外全員死んで帰ってきた事にある。
身に合わないクエストに失敗するとこうなるぞ、
といった意味が込められているが、現在では一種のギャンブルイベントとして、
この世界に存在している。
ソリド
「今更名誉なんていいだろ!今は銀翼之混鳥を村から離すことが先だ!」
ソウタ
「それで失敗して銀翼之混鳥が村を襲う事のほうがリスクだ!」
イリス
「早く結論を出して下さい!
私とガルドさんで押さえつけるのにも限界があります!」
ソリド
「...とにかく俺が囮になって銀翼之混鳥を引き付ける!
ある程度離れた所をお前の炎で燃やせ!失敗はしない!俺を信じろ!」
ソウタ
「...わかったよ。頼んだぞ、ソリド!」
ソリド
「こっち来いよこのバカクソ鳥!オラァ!」
ガキィン...!!
ソリドが銀翼之混鳥に攻撃を加えるも、硬い羽にダメージ入るどころか、
短剣が折れるソリド。
ソウタ
「ソリド!やっぱりここで...!」
ソリド
「まだ何も出来てねぇよ!」
ソリドの一撃が銀翼之混鳥の注意を引き付ける。
ソリド
「このまま森へ駆け込む...!んでもって、
森でギリギリ追いつかれないラインで撒き続ける!
そしたら森を抜けた所に先回りしたソウタが銀鳥を焼く!」
森へ駆け込むソリド。しかし...
銀翼之混鳥「ギ"ョ"エ"ア"ァ"ァ"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ア"ァ"ア"!!!!!」
スパァアァァアアン...!!!
銀翼之混鳥の鉤爪による一撃で森の木々が倒れる。
そしてその斬撃でソリドの腕が切れた。
ソリド
「クソっ...!」
ソウタ
「ソリドォオオォオオ!!!!」
ソリド
「気にすんな!俺の役目が終わるまで黙って見てろ!
超加速!」
銀翼之混鳥
「クオォオオオオォオオ!!!!!」
逃げるソリドを無理に追わず、
硬い羽を飛ばしてソリドに攻撃する銀翼之混鳥。
ソリド
「お前ら目ぇ塞げ!閃光弾!」
魔法具を使い、
銀翼之混鳥に目眩ましをするソリド。しかし、効力はほぼ無い。
銀翼之混鳥
「グルルエアァァアアァアア!!!!!!!!!」
そしてそのままソリドに向け突進し、その嘴でソリドの腹を貫く。
ソウタ
「ソリドオォオオオォオオオ!!!!!!!!」
ソリド
「今だソウタ!俺ごと焼けぇ!!!!!」
持てる全ての力を用いて叫ぶソリド。
ソウタ
「クソ鳥がぁああ!!!千度之光線...!!!!」
ゴオオォオオォオオオオォオオオオン...!!!!!
ソリドと銀翼之混鳥は豪炎に身を包む。
イリス
「ハァ...ハァ...やっと追いついた...」
ガルドとイリスは、
銀翼之混鳥の足止めで体力を消費していたため、
ソリドの事などつゆ知らず遅れてソウタの元へやってきた。
ガルド
「ソリドは...!?」
ソウタ
「あそこ...」
ソウタは燃え盛るソウタと銀翼之混鳥の方へ指をさす。
イリス
「まさか...!そんな!」
ソウタ
「ごめん...助けてやれなk...」
ガルド
「嘘だろ!ソウタ!構えろ!!」
ソウタ
「えっ」
???
「キ"ョ"エ"エ"ェ"エ"エ"ェ"ェ"ェ"エ"ェ"エ"エ"ェ"ェ"エ"!!!!!!」
イリス
「あれは...!?」
目の前に現れたのは、ソリドの武器や防具、経験値を取り込み、
上位種へと進化した銀翼之混鳥は、
金翼之神鳥と成った。
金翼之神鳥
「クルエェェエエェェエアアアア!!!!」
イリス
「ぐはぁあッ...」
高速でより硬くなった羽根を大量に飛ばし、その羽根にイリスが貫かれる。
ソウタ
「イリス...!」
ガルド
「よ"く"も"お"ぉ"お"お"お"ぉ"お"お"!!龍禍割りぃ!!!」
金翼之神鳥に一撃を入れたガルドだったが、
まるで刃が立たない。それどころか、
金翼之神鳥に近づいた事により、
ガルドが鉤爪で粉々に引き裂かれる。
ソウタ
「そんな...そんなのって...嘘だ...」
金翼之神鳥
「カルルルルル...」
膝から崩れ落ちるソウタに向けて、
ゆっくりと歩く金翼之神鳥。
ソウタ
「あ...あぁ...あ」
金翼之神鳥
「クエアァアアアァア...!!!!」
ソウタにトドメを刺そうとしたその時、
壊れた精神が、ソウタの内なる力を呼び覚ます。
ソウタ
「あ"ぁ"あ"あ"ぁ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"あ"!!!!!!」
ソウタの体から、10000℃を超える炎が吹き出す。
その熱は、村まで炎で包む威力だった。
金翼之神鳥
「ギョエアアァアァァアア!!!!!!」
サイカン
「なんやコレ!村が...!村が燃えとる!」
家が燃え、逃げようと外へ出たイルカとサイカンは、
村の惨状を目の当たりにする。
イルカ
「まさかあの男...!!」
サイカンとイルカの父
「お前達、危ない!」
我が家が崩れ、燃え盛る瓦礫が、イルカとサイカンに降り注ぐ。
イルカ
「お父さん!」
二人を押し倒し、イルカとサイカンの父が一心に瓦礫をその体で受け止める。
しかし、父は一般人である。大量の瓦礫を喰らい、生きている訳がなかった。
サイカン
「嫌や、嫌"や"ぁ"あ"ぁ"あ"あ"あ"あ"ぁ"あ"!!!!」
そして家の中に取り残されていた母親も、倒れた家の下敷きとなっていた。
イルカ
「そんな、そんなぁあ!」
兄妹が絶望の淵に立たされた時、
奇しくもソウタの炎で飛ばされた金翼之神鳥が、
村へ逃げ込んで来た。
ソウタ
「待てよ、ゴミ野郎が。波煌炎。」
金翼之神鳥に放ったその技は、
まだ生き残っていた村の人々を巻き込み、村を焼き尽くす、いや、溶かす。
そして金翼之神鳥をも溶かし、
不敵な笑みを浮かべるソウタ。そんな絶望的な状況で、
イルカとサイカンはとある人物に助けられていた。
イリス
「氷之防壁...」
イルカ
「イリスさん...!」
何とか一命を取り留めていたイリスは、
最後の力を振り絞ってイルカとサイカンを守っていた。
イリス
「ごめんねぇ...こんな私達がこのクエストを受けちゃって...」
しかし、防壁の中にイリスは入っておらず、この言葉を最後にイリスは絶命する。
サイカン
「お兄ちゃん...ウチ、悔しいよぉ...!
ウチがもっと強くなってたら...村の皆守れたのかなぁ...
何より...あの男が...ソウタが...ウチは許せない...!
いつか復讐してやる...!そうしたら...皆の...
お母さんとお父さんの無念も晴れるのかなぁ...!」
イルカ
「...!いや、やるなら俺がやる!お前の手は汚させない!」
サイカン
「ダメだよ...だってお兄ちゃんは...優しいんだもん。」
そのまま酸素不足で倒れるサイカン。
イルカ
「サイカン...!」
取り敢えず炎から離れた所までサイカンを抱えて置くイルカ。
家からナイフを取って村へ戻り、
ソウタにこの怒りを押し付けようとした時、ソウタが呟いた。
ソウタ
「漲るこの力...フフフ、この俺にダークヒーローにでもなれってのか?
いいだろう、俺が...この世界を...!ぶっ壊してやる...!
もう何もかも!アハハハハハハハハハハ!!!!」
イルカ
「お前...!何処まで傷口を抉るつもりだよ...!!!
戻せよ!もとに戻せよ!お前が壊したんだよ!もとに戻せぇ!
この村を!僕らの家を!村の皆を!父さんと母さんをぉ!!!」
ソウタ
「あぁ...悪かったな。まぁでもコレで分かったろ。
お前の妹にも伝えておけ。この世界の人間は所詮モブだ。
俺の仲間も、簡単に死んだ。この村もな。
お前とお前の妹は運が良かっただけだが、次助かると思うな。
冒険者志望なんてやめて、普通に生きて普通に死んでろってな。」
そう言い放ち、村を背に歩き始めるソウタ。
イルカ
「何処までクズだよテメェ!」
(あぁ、僕は弱い...!こんなに憎いクソ野郎なのに!
情が湧いてコイツを殺せない!あぁ...これが僕の"弱点"だ...
手にナイフ持ってんだろ!刺せよ俺!殺せよ!でも無理だ
妹も言ってたな...俺は優しすぎるのかな...いや、臆病なだけか。
だったらもう...心なんていらない!
もっと強くなりたい!コイツを殺せない自分が憎い!
そんな弱点、いらない!)
イルカがそう思ったその時ー
ー弱点、"心の弱さ"、並びに"身体能力の無さ"、克服ー
こんな声がイルカの頭の中に流れた。これがイルカの能力の発現である。




