第34話:それでも
ラン
「あっ、いちばん大事なことを忘れてた。」
俺
「?」
ラン
「この里では、仁義が大事なんだ。施されたら施し返す、それが仁義さ。
ヘラさんもここで暮らしていく以上、何か里に役立つことしないと、ダメだよ?」
俺
「そんなことか。まぁいくらでも役に立ってみせるさ。郷に入っては郷に従えだ。
とは言っても、私に出来るのは戦闘くらいだがね。」
ラン
「ってかずっと気になってたんだけど、その腰の物、もしかして"刀"?」
俺
「あぁ。家宝だったものだ。」
(アマツさんに作ってもらったとか言ったら、何か地雷踏むかもだからな。)
ラン
「へぇ。初めて見たよ!綺麗だねー!って、あっ!着いたよ!
ここがエルフの里名物、"森林の大図書館"だよ!」
俺
(ここに何かしらの文献が眠っているのか、それともないのか。)
ラン
「気が向いたら行ってみてね!」
俺
「あぁ。これが目当てでもあったんだ。」
ラン
「そうなんだねー。あっ、ホラ、こっちは川だよ!ここで魚を捕るんだ!」
俺
「それなら簡単に出来るな。」
俺は川の中に空間魔法を張り、電気を流した。
ラン
「おぉ?」
俺
「そしてこれをこう。」
空間内の魚を、草魔法でつくったザルに乗せる。
俺
「ほら。これでいいか?」
ラン
「おぉ!すっごいね!定期的にこれしてくれるなら、すっごい助かる!」
俺
「しばらく泊めてもらうなら、このくらいしないと。
"仁義"とはこういう事だろう?」
ラン
「そういうこと!よく分かってるじゃん!他には...あっ!こっちが、
ヘラさんが泊まる所だよ!」
俺
「かたじけない。案内はこれくらいで大丈夫だ。助かった。」
(なんだかたじけないって。侍か。)
ラン
「それほどでも。」
俺
(にしても、こんなに事が上手くことが運ぶもんなんだな。まぁ、
見つかった時点でうまくは行ってないんだけど。まぁ結果オーライだな。
...さて、自分の部屋に行くか。既に念話で宿に手回しをしてくれているそうだ。
エルフは仕事の早い事。今のとこ怪しい素振りはそんなに無いな。)
「マルコさんから話は通っていると思うが、私がヘラだ。」
宿屋のおばさんエルフ
「いらっしゃい。アンタの部屋は204号室だよ。多少の不便はあると思うけど、
一ヶ月間、楽しんどくれ。」
俺
「ありがとうございます。」
おばさんから鍵を受け取った。エルフってもんは、若いのか、
極端な老人くらいしかいないと思ってたけど、5〜60代位の人もいるんだな。
ガチャッ
ついに一ヶ月世話になる部屋に入る。
知らないホテルに入る時ってワクワクするよnー
俺
「え”っ」
きったねぇぇぇ!!!嘘だろ、どんだけ管理してないんだよ!
自然に囲まれてるとてこれは...ああ、読者には状況がわかってないのか。
ざっくり言うと、床はホコリまみれで所々虫に食われてる、物は散らかってる、
前の客が置いていったであろう食い物に蝿がたかっている!照明にも!
そして、なんか...全体的にベタベタしてる!床とか壁とか!
木製の部屋の悪いとこ全部出てんじゃん。
俺
「マジかよ...」
決めた。洗ってやろう。
俺
「クリーニングウォーター!」
水圧を300分の一くらいにして部屋中で洗剤と混ぜた水をかき回す!
魔質を下げ、冷波の反対である、
俺
「熱波!」
これで全部乾かす!これで少しはマシになったか...。
前言撤回。全然上手く行ってないわ。
ー視点はタチバナとミラへ移る。ー
タチバナ
「神級の人とか参加すんの?」
ミラ
「さぁ?少なくても"竜桜の宴"の神級冒険者はキリヤマさんだけですよぉ?」
タチバナ
「じゃあ竜桜の宴にライバルはいないな。」
ミラ
「王都には何人かいますけどリトナードにはいたかなぁ...?今調べますねぇ。」
タチバナ
「まぁ敵なしって考えて差し支えないか。」
ミラ
「神々の晩餐会に一人いるみたいですよぉ。名前は伏せてありますけどぉ。それと、
龍級冒険者はこのギルドにも数人いたはずですよぉ。油断は禁物ですよぉ。」
タチバナ
「それもそうだな。もうちょい連携技磨くか?」
ミラ
「それもいいですけど、個人技も磨かないといけないですよぉ?」
タチバナ
「わぁってるよ。」
タチバナは一人で街を出て、草原へ出る。
タチバナ
「俺、そういや必殺技無ぇな。」
タチバナが得意とする魔法の系統は風である。しかし、
タチバナは神器のせいであまり魔法を使わない。使う時と言えば、
空を飛ぶ時脚に風魔法を付けるくらいだ。実際、
飛ばすコントロールをしているのはミラなのである。
タチバナ
「ミラは魔法の操作が上手いから空を飛ばさせて貰ってた訳だが...
うん。俺がミラのサポート無しで飛べるようになろう。」
タチバナはひたすら練習をした。
タチバナ
「ムジぃな。色んな所に気を使わなくちゃいけねぇ。風魔法の出力と角度、
そして足の角度、体の重心。ミラはこれを簡単に操りやがるんだもんな。
すげぇな。やっぱ敵わねぇ」
ミラ
「頑張ってますね。一人で空を飛ぶ練習ですか。手伝いましょうか?」
タチバナ
「いや、大丈b...あぁっ!!!」
話しかけられて意識が低下し、足がズレて頭から落下するタチバナ。
タチバナ
「う"わ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
ミラ
「魔力操作!」
ミラの力でタチバナはゆっくり落下する。
タチバナ
「危ねえ。助かったわ。ありがと。」
ミラ
「しょうがないですねぇ。危ない時は私が補助しますので、感覚を掴んで下さい。」
タチバナ
「恩に着るわ!それじゃ、よろしく頼む!」
昼から日が暮れるまで練習し続けるタチバナだった。
ー視点はユルリカとハルカへ移る。ー
ユルリカ
「さっきの火事はなんで起こったの?」
ハルカ
「人為的かと思われますが。」
テラルド族の男
「通りかかった貴族が面白半分で放火したんだよ。俺等が慌てふためく姿を見て、
笑ってやがった。」
ハルカ
「その貴族、排除しますか?
いずれユルリカ様にも危害を加える可能性があります。」
ユルリカ
「まだダメだよ。やることが終わったら、
何かしらの形で反省してもらえればいいの。」
ハルカ
「かしこまりました。」
オルガ
「ハァ...ハァ..."やること"って?」
どうやら走って戻ってきたようだ。
ユルリカは経緯を説明した。
オルガ
「なんと!王子とその配下が協力!?そして、
ユルリカのパーティメンバーと獣人族と一部冒険者も!?
王国軍と戦うと言うのか!?」
ユルリカ
「まだ不確定の所はあるけど大体そう。久し振りに戻ってきて急だけど、
皆さんに協力して欲しいんです。」
テラルド族の男
「それに勝ったら、我々はようやく、
この奴隷のような生活から抜け出せると言うのですか?」
ユルリカ
「ええ。」
テラリア村の皆
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
テラルドの男
「これでついに人間たちに怯えずに済む!」
テラルドの女
「忌々しき人間どもに復讐ができるわ!」
テラルドの子供
「これで人間たちを苦しめられる!」
テラルドの兵士
「いくらでも戦ってやるぜ!」
ユルリカ
「でも!!!!」
ユルリカの一声で辺りは静まり返る。
ユルリカ
「条件が一つ。誰も殺さないこと!」
テラルド族の男
「何故です!?私の母は面白半分で通りすがりの兵に...
裸の状態で八つ裂きにされました。」
テラルドの子供
「お兄ちゃんも目の前で槍を貫かれて死んだ!なのにどうして!」
テラルドの女
「私の婚約者は私のために貯めたお金で町へプレゼントを買いに行った先で、
金を奪われて殺された!なのに何故よ!」
テラルド族の人達
「俺は!人間どもを惨殺してやりたい!」
テラルド族の人達
「私は!見せしめに人間の前で人間の首を飛ばしてやりたい!」
沢山の罵声がユルリカへ飛ぶ。それでも怯まずにユルリカは叫ぶ。
ユルリカ
「それじゃあやってること人間と一緒じゃないですか!!!!!!!!」
テラルドの人達
「だから何だ!殺られたからやり返すだけだ!!!
何が悪い!!!今回も放火されたし、
こっちだってテラルド族以上の犠牲者を出すつもりは無いぞ!」
ユルリカ
「それでも!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
殺すのだけは絶対にダメです!」
ハルカ
「ユルリカ様...」
また皆が静まり返る。
ユルリカ
「数がどうとかじゃないんです!!私は、皆に誰かを殺させたくない!」
テラルドの兵士
「少しくらい手を汚す覚悟はできてますよ!」
ユルリカ
「今私達テラルド族がどう見られているか、ご存知でしょう?」
テラリア村の人達
「...」
ユルリカ
「私達が人を殺してしまったら、身分問題は解消されたとしても、
植え付けられた印象が変わることなんて、2度と来ませんよ!!!!!
これは復讐のための戦争じゃなくて、和解のための戦いなんです!!」
もう、テラリア村にユルリカに対し反論する者はいなかった。
イカれてんのかテラルド族。
まぁそうなるほどの迫害を受けてきたのでしょうね。しらんけど




