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結局、毒殺されてよかったかも(最終話)

「ミナ、きいてほしい。あんなことをしでかしたきみの妹、いや、姉さんは、おそらく断罪されるはずだ。そんななか、いまここでこんなことをいうのも気がひけるんだけど……」

「ならば、やめた方がいい。わたしとちがい、皇子の言葉は影響力がちがいます。軽はずみな行動や不用意な言葉は、あなた個人だけでなく王族そのものを貶めることになる」

「セレス、それが親友の言葉か?応援こそすれ、いまさらどうして……」

「残念ですが、重罪人をだしたメイフォード家にさきはありません。メイフォード家は王族の馬の管理や調教を任されていたからこそ、その罪はきっちりと裁かれてしかるべしです。そのメイフォード家の子女の一人をということになれば、あらゆる王族、貴族、政治家どもに口をはさませることになります。連中にとって、こういうスキャンダルは花の蜜より甘いですからね」

「わかっている。だれよりも、わたし自身が承知している。そこでセレス。大親友であるきみの協力が必要にようになるというわけだ。ミナを、きみの養女としてだな……」

「な、なんだって?」


 侯爵様の叫び声が耳に痛い。


 二人の会話の内容はよくわからないけど、わたしが侯爵様の養女になるってどういうことなの?


「皇子。わたしの彼女にたいする気持ちをしっていながら、そのようなことをおっしゃるのか?こればかりは、いくら皇子の頼みでもおいそれと引き受けるわけにはまいりません」

「すまない。きみの彼女にたいする気持ちをしっていながら、あえて頼んでいる。ぼくは、真剣だ。一時の情熱や同情などではない。ここ数か月、いや、あの日の夜、彼女に会った瞬間、ぼくはそうと決めたんだ。彼女を得られれば、このさきの孤独やあらゆる重責をも乗り越えられる」

「身勝手なことを。それならば、彼女の気持ちはどうなるのです?それは、あなたの一方的な想い入れではありませんか。わたしの彼女にたいする気持ちは、あなたにひけはとらない。年齢差?そのようなものは馬に蹴られてしまえ、だ」


 侯爵様の両肩が、おおきく上下している。


 二人が同時にこちらを向いた。


 役人たちが必要以上に灯した灯りが、二人をキラキラ輝かせている。


「ミナ、愛している」

「ミナ、愛している」


 はい?


 どういう意味?


 キョトンとしていると、二人がちかづいてきた。

 侯爵様にわたしの左手を、ナダルに右手をそれぞれつかまれた。


「きみにたいする想いは、ぜったいにかれに負けない」

「きみにたいする想いは、ぜったいにかれに負けない」


 二人の真剣で熱いまなざしが痛いくらい。


「どんなときでもきみを守り、かならずやしあわせにする」

「どんなときでもきみを守り、かならずやしあわせにする」


 右の手も左の手も、握りしめられすぎていて痛いくらい。


「だから、だから、ぼくと……」

「だから、だから、わたしと……」


 思わず笑ってしまった。


 だって、二人ともまったくおなじことをいうんですもの。

 やはり、大親友どうしって息がぴったりなのね。


 そうよね。頭でっかちにかんがえることなんてない。


 第一皇子様であろうと「ドラゴンの騎士」であろうと、わたしにとっては馬丁のナダルと侯爵様。


 わたしの大親友。


 結局、ミナ・メイフォードは死んじゃうかもしれないけど、すくなくともわたし自身が殺すわけじゃない。妹自身が自分を殺すことになる。

 こういうことを、自業自得っていうのね。


 自分で自分の首を絞める結果になったわけよね。


 だとすれば、これでわたし自身は死の運命を回避できたわけかしら?


 だったら、これからはわたし自身の生の運命を築くことができるわけかしら?


 死んでしまった両親には申しわけないけど、あらためて人生をあゆませてもらいたい。


 このすばらしい大親友たちとともに。


「仔馬の競りに連れていっていただけますか?」

「仔馬の競り?」

「仔馬の競り?」


 キョトンとした表情の第一皇子様、いえ、ナダルと侯爵様に笑いながらお願いしてみた。


 だって、どうしてもいってみたいんですもの。


 すると、二人も笑いだした。


「きみは、暴れ馬より手強いな」

「きみには完敗だ。わかったよ。あの約束はちゃんと果たそう」


 ナダルも侯爵様も、目尻に涙がたまるほど笑っている。


 ああ、こういうのをしあわせっていうのかしら?


 だったら、一度は毒殺されるのもアリかもしれないわね。


                (了)

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