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告白

「ああ、いいにおい。気持ちが落ち着くわ」

「だろう?ハーブティーにしたからね」


 書斎のなかにハーブのやさしい香りが漂っている。


 隣のナダルにいうと、かれは「えっへん」とばかりににんまり笑った。


 その笑顔のキラキラも、もうみることができなくなるのね。


「ナダル、ハーブティーにしたのはわたしだし、淹れたのもわたしだ。どうしてきみが、エラソーにするのだ」

「あ、そうでした」


 ナダルは、ペロリと舌をだした。


 か、かわいい。かれは、ときおりそんなかわいいしぐさをする。


 それがまたかわいいのよね。


「カモミールにしてみた。気持ちが落ち着くようにね」


 侯爵様の心遣いは、いつものこと。そしてもちろん、侯爵様もキラキラしている。


 侯爵様とも今日でお別れだなんて……。


 春に仔馬の競りに連れていってもらいたかった。


「わたし、王都にもどることになりました」


 これ以上、時間をおいてもいいだしにくくなるだけよ。

 だから、勇気を振りしぼって告げた。


「なんだって?」

「ええっ?そ、そんな……」


 侯爵様とナダルに、まずはテリーのこととは関係がないということを説明した。


 両親が死んだから、もどるのだと。


「そ、それは……。なんといっていいか」

「ミナ……」


 ナダルが手をのばしてきてわたしのそれをやさしく握ってくれた。


 しまった。まずは、両親がだれなのかを説明すべきだったわね。それをいうなら、わたし自身のことも。


 ナダルの手に励まされ、わたしはいっきに語った。


 毒殺されたことからはじまり、ここにいる理由まで。


 語りながら、自分自身でも気持ちと現実、というのか事実というのか、そんな感じのものの整理がついてきた。


 最後に、「信じてもらえないでしょうけど」と付け足しておくのを忘れない。


 侯爵様とナダルは、ただわたしをみつめたまま口を開こうとしない。


 そうよね。こんな話、信じられるわけはないわよね。


 自分でもおかしかった。


 だって、わたしだって信じられないもの。


 自分が体験していなかったら、ぜったいに信じられないわ。


 早朝におしかけ、こんな奇想天外すぎる、それこそお話にでてくるようなことをきかされても迷惑なだけだわ。だから、謝ろうと思った。


 隠していることを話し、だましていたことを謝りたかった。


 この二つができたんですもの。はやくここから立ち去りましょう。 






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