侯爵様とナダルに会いに……
こんな時刻だと、侯爵様もナダルもまだ眠っているはずよね。
会えないかもしれない。それでもいい。
会うことができないのを覚悟で侯爵様のお屋敷にいってみたけど、門がひらいている。
不思議に思いながらプルルスを館の方へすすめた。
すでに二頭の馬が馬場でふざけあっている。
レウコンとメランは、今朝も上機嫌みたい。
もしかして、門はずっと開いたままで、馬たちは馬場に放置しっぱなしなの?
だとしたら、侯爵様とナダルらしいってこんなときだっていうのに笑ってしまった。
そのとき、早朝の冷たくって鋭い微風にのって、どこかからか声がきこえてきた。
「ブルルル」
プルルスが鼻を鳴らしてから、その声がきこえてくるほうへと足を向けた。
どうやら、厩舎の裏に向かっているみたい。
じょじょにあかるくなってきている。遠くで近くで、小鳥たちが機嫌よく朝の挨拶をしている。
どうやら今日は晴れるみたい。それから、あたたかくなりそう。
これなら、王都までの道中すごしやすいでしょう。
声は、やはり厩舎の裏からしている。
厩舎をまわった途端、プルルスの足が止まった。
かれからすばやく降り、その光景を静かに見守ることにした。
侯爵様とナダルは、細身の剣を握って対峙している。二人とも、すごく集中しているみたい。
プルルスとわたしの気配に気がつかないみたいだから。
そのとき、ナダルが気合の声とともに侯爵様に打ちかかった。
細身の剣がぶつかり合い、火花を散らせる。
気合とともに、何度も何度も火花が散る。それらは、明けつつある朝のひとときを完全に覚醒させようとしているみたいにみえる。
「すごいわ」
思わずつぶやいていた。
剣のことはよくわからないけど、二人が打ち合い激突する姿をみていると、二人とも尋常でない技量をもっていることがよくわかる。
どれだけつづいたのかしら。
それは唐突におわった。
距離を置いて向かい合い、剣を鞘におさめてから同時に一礼をした。
二人が剣をつかうなんてこと、まったくしらなかった。
そのとき、先日、ナダルがテリーを殴り飛ばしてから、『ぼくが剣をもっていなかったことを、神に感謝するんだな』っていっていたのを思いだした。
たしかに、あれだけの剣の腕前だったら、テリーを斬り刻むなんてこと簡単だったでしょう。




