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第七話【傍受】

不死林檎です。またまた人物紹介になります。


【codename:Doll/コードネーム:ドール】

暁月を探りに来たアラサーのプロスパイ。

気さくで明るい性格で、コミュ力が高いのが自慢だったがターゲットの暁月には効かなかった。

日常生活では暁月のつけた偽名、『アミィ』を使っている。


【夏野 暁月/なつの あかつき】

国家直属の組織で情報管理を任されている高校生。

クールでドライと思われがちだが、人付き合いが苦手なだけの単なるコミュ障。

アミィが来るまでマンションに一人暮らしだった。

 驚くべきことに、この家に来てからチャイムの音を聞いたのは初めてだった。

俺はここに来てからあれだけ頻繁に使っていたネット通販もしていないし、暁月に至っては言わずもがななので自分で相当ビビったんじゃないだろうか。

 丁度暁月は昼食の後片付けをしていたので、

「俺が出るよ~。」

と一言断ってから、玄関の扉を開けた。

扉を…開けた…。

ビックリしたのは今日二度目だが正直こっちが一番驚いた。悲鳴を上げなかった俺を暁月が褒めてくれたら良いのになぁ。

玄関で俺を待ち構えていたのは…ショートカットの人だった。

申し訳ないがこの言い方しかできない。非常に中性的なので、性別が外見で判断できないのだ。

その人の特徴というか、個性というか、なんなんだろうか。

顔面に紙切れを張り付けていた。当たり前だがその所為せいで顔が隠れている。

「こんにちは~。夏野さん、いますか?」

「ぁあ…いるよぉ、うん…取りえず入る…?」

「は~い。お邪魔しま~す。」

 戸惑いつつリビングに通すと、暁月はエプロンを外しながらキッチンから出てきた。

そこでその人と特に何も気に留めずに歓談するものだから、俺が可笑おかしいんじゃないかという気になってきた。頼むから顔に紙を張り付けてることに触れてくれよ。まず誰なんだ。

「すみません、ちょっと席を外してもらえませんか?」

紙の人に温かい紅茶を出しながら、暁月は俺にそう言った。そこでようやく合点がてんがいく。

この人は暁月の仕事の関係者だろう。いや、顔面に紙張り付けてんのは意味が分からんが。

成程、何か大事な話をするのか…。これはチャンスだな。何か重要な秘密を聞けるかもしれない。

「ん~…うん、わかった。何時間ぐらい?」

「えっと、じゃあ済みそうだったら連絡します。お願いします。」

ちぇ、うっかり入ったりとか出来ないな。しっかりしてるぜ。

まぁこの部屋には至る所に盗聴器仕掛けてるからな。最高音質の上等なやつ。

「んじゃ、ごゆっくり~。…ところで、お名前は?」

「私ですか?長閑、更科さらしな 長閑のどかです。宜しくお願いしますね~、えと、アミィさん。」

「うん、よろしくね。」

 俺は履いた靴のつま先を二、三度鳴らして整え、玄関を出た。俺のこと知ってんのか。そして…

「あの子、…女の子だったのか…。」


***


 ポケットに突っ込んだスマホの振動で目を覚ました。午後…五時ちょっと前。

近くのカラオケ店は満室だったので、漫画喫茶の一室で爆睡していた。お、メールだ。終わったんだな。じゃあ帰るか…。

 朱色の空を眺めながら帰り道を歩く。そういえば今住んでるあのマンション、徒歩圏内に学校も駅もあって、十分すぎるくらい立地がいい。凄い良い部屋だし、一体家賃とかいくらなんだろう。

俺も一応居候いそうろうさせて貰ってる身だし、折半せっぱんとかした方がいいかな…。

 「…お帰りなさい。急にすみませんでした。前から連絡しておけば良かったのですが…。」

玄関で菜箸さいばしを持ったままの暁月が迎えてくれる。

いいよ~気にしないで~。おかげでこっちは幸運にもお前の情報をゲットできるんだからな。

 暁月がお休みを言って部屋に入ったので、ダイニングテーブル付近の盗聴器を回収した。

念には念を入れて、俺の部屋で鍵をかけ、ワイヤレスイヤホンに接続する。

最初に耳に入ったのはカチャカチャという音。紅茶にシュガーもしくはミルクとか入れて混ぜ合わせてるんだろう。ここからが肝心の会話だ。

『…あの人ですよね?ウワサの同居人さん。他の皆も気になってたんですよ~、どんな人か。』

『うん…。』

ちょっと待ってこのタイミングで俺の話すんの?気になるけど。

『へ~!どんな人なんですか?』

『よく喋る人…。』

……。

『…。そ、それだけ…?』

『あ、えっと…よく音楽聞いたり、映画見たり本読んだりしてる…。』

いや俺は自宅警備員か。

『なるほど~。あ、どんな性格なんですか?面白いですか?カッコイイですか?』

俺に興味津々だなこの子…。やめて~仕事しづらくなるから勘繰かんぐらないでくれ~。

『元気だし、賑やかだよ。それに…』

暁月、この子相手にはいつもに比べて饒舌じょうぜつだな。…正直羨ましい。

しかし俺のことそんな風に思ってたのか。元気で賑やかねぇ、うるさいってことじゃねえか。

あ、今のとこ声が小さくて聞き取れなかったな。巻き戻し巻き戻し、再生っと。

『―良い人だよ。でもこんな性格だから…あの人が嫌な思いしていたら申し訳ないな、って…。』

……。

や、…やめろよ…俺は、そんな…。

『そんなことないですって。皆、夏野さんが優しい人だってわかってますよ。それに…しょうがないところも…あるじゃないですか…、あなたの【それ】は…。』

『…ありがとう。そろそろ、仕事の話を、』

ブツッ。

……。

これ以上聞いてられない。今すぐにでも暁月の部屋に行って、俺は良い奴じゃないんだって言いたい…。

この盗聴データを消…そうとした手が止まる。

俺にはこの仕事を辞めるわけにはいかない理由があるんだ…。ごめんな暁月、ごめんな…。

心の中で何度も謝りながら、パソコンに報告内容を打ち込んでいく。

何度も何度も、再生しながら。

出番は少なかったものの、初登場のキャラクター紹介になります。


【更科 長閑/さらしな のどか】

情報管理職の暁月の部下だが同学年。

顔面に紙を張り付けているという一言で表せる個性を持っている。素顔を知っている人間はほぼいない。話し方や仕草で女の子だと分かる。人と喋るのが好き。彼氏と同棲中。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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