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第四話【酒席】

不死林檎です。

例に漏れず今回もここでメインキャラクターを紹介します。


【codename:Doll/コードネーム:ドール】

暁月を探りに来たアラサーのプロスパイ。

気さくで明るい性格で、コミュ力が高いのが自慢だったがターゲットの暁月には効かなかった。

日常生活では暁月のつけた偽名、『アミィ』を使っている。


【夏野 暁月/なつの あかつき】

国家直属の組織で情報管理を任されている高校生。

クールでドライと思われがちだが、人付き合いが苦手なだけの単なるコミュ障。

アミィが来るまでマンションに一人暮らしだった。

 金曜日。それは土日が休みに当たる奴にとっては、何にも代えがたい至福の日であるだろう。

俺もその一人だ。今日は行きつけの居酒屋に、同僚たちと集まって遅くまで飲み明かす予定でいる。

既に顔見知りになった店員さんは、いつも四人掛けの座敷に案内してくれる。前に俺が、足を崩して座るのが好きだと言っていたのを覚えていてくれたのだ。

 「あれから進展はあったかしら?自称旦那のアミィさん?」

俺の向かいに座る、ビールを頼んだ赤髪の女性はまだ素面シラフのくせにテンションが高い。恐るべし金曜日マジック。

「残念ながらよかねえよ…俺も今どきラノベ主人公みたいなハート鷲摑みテクニックが欲しいぜ…。」

俺のしょげた様子を見て満足そうに笑う目の前の女性―南風咲はえさき かえでは器と態度と胸がデカい、大学からの同級生だ。今は俺の組織の息がかかった病院の女医をやっている。

「いやぁ、今どきの主人公には女の子が寄ってくるような長所とバフが備わってるんですよ?顔とか。」

楓ちゃんの隣に座った、よわい17にして組織に所属する、金髪を一つに結い、両耳のイヤリングが特徴の快活な少女、金雀枝えにしだ つづりは一足先に届いたオレンジジュースに口をつけながらそう教えてくれた。

 「顔…顔かぁ…、自信が無くはないんだけどなぁ…。他なんかない?」

「最近読んだやつでいくとですねぇ…うーん…。」

綴ちゃんは腕を組んで考え込む。その時俺たちの頼んだものが届いた。

「あれ?ウーロン茶頼んだの誰?瑞希?」

ジョッキを受け取った楓ちゃんは、俺の隣に座る青年、更待ふけまち 瑞希みずきに問いかけた。

「はい、それ俺です。ありがとうございます。」

いつにも増して疲労が目に見える。愛用している黒縁の眼鏡越しでも濃いくまが窺えた。

こいつが例の曜日の魔法にかかることはなさそうだ。

「リーダー、もしかして下戸なんですか?それとも未成年だったりします?まあ童顔ですもんね~。」

「と、年上だぞ、一応…!俺は童顔じゃない…童顔じゃ…。」

瑞希は綴ちゃんの上司でリーダーと呼ばれているが、そんな威厳はこのやり取りの通りまるで感じられない。馬鹿にされてるというよりは揶揄からかわれているような雰囲気だ。

 「でもさぁ、高校生のコと仲良くなりたいんだったらつづりんに聞くのが得策じゃない?」

楓ちゃんは串焼きをつまみながらさも他人事の様にぼやく。いつの間にかジョッキの中身は半分になっていた。

「えー、でも私は学校行ってないですし…。あ、そうだ、いつもご飯はどうしてるんですか?」

「飯?あー、朝は起きたらあいつもう学校行っちゃってるし、昼は学校で食べるよな。夜は…帰ったら俺の分がぽんて置かれてるんだよ。そういや、あいついつ食べてるんだろうな?」

「そうです、そこですよ!」

手に持った涼やかなグラスを置き、彼女は目を輝かせた。何か興味深い発見でもしたのだろうか。

「一緒に夜ご飯を食べればいいんですよ!食べてる間は宿題とかの理由につけて席を外せないでしょう?なんだったら協力して料理してもいいですね、これは下手な方が都合がいいかな?」

なるほど、流石若い子の発想だな。めっちゃ参考になるー。

「そりゃね、誰かと一緒に食べたほうが美味しいに決まってるわよね。あたしは一人で飲みに来てもつまんなくてしょうがないと思うわ。」

楓ちゃんも賛同を言い切ってしまうと、残りのビールを飲み干し、店員を呼び止めて焼酎を追加で注文した。

「やっぱり!リーダーもそう思うでしょ?家族と食べるご飯は美味しかったでしょ!?」

急に話題を振られたことに瑞希は驚きを隠せず、勝ち誇った顔の綴ちゃんに少々怪訝な表情で返した。

「家族との食事か…。俺のところはテーブルマナーなんかに厳しくてな。粗相のないように努めるのに必死だったし、晩餐中に楽しげに喋った記憶なんて無いぞ。」

「うわ、空気読めない!そんな事ばっか言ってるからまだ童貞なんですよ!」

「ゴホッ」


愉快な言い争いをしている綴ちゃんと瑞希、その様子を傍観しながら笑う楓ちゃん。俺はそんな三人を後目しりめに、今は家にいるであろう暁月のことを思い出していた。

今日は飲んでくるから遅くなる、晩飯は大丈夫。と、これだけを伝えるために、今朝はいつもより少し早く起きたのだった。玄関で靴を履きながら、わかりましたと短い返事をする暁月の姿を鮮明に思い出せる。あの背中にいつも食事の用意をありがとう。と一言声を掛ければよかったなぁと後悔した。

 「なぁに、恋しくなっちゃった?今は帰ろうかなって考えない方がいいわよ。あっちはあなたの分の今晩の食事を用意してないだろうし、変に気を遣わせたら駄目でしょう?」

一瞬対面した彼女に心を読まれたのかと肝を冷やしたが、どうも本気で言ってる様子じゃない。さっきの綴ちゃんと同じような揶揄いなんだ、と目の前の空のグラスの数が物語っていた。

それでも正鵠を射た発言に改めて女の勘って怖いな、と思う。

 そんなんじゃないよ、酔いが回ったんだよと適当に誤魔化し、若干焦りつつコップの中のカルーアミルクを一気に飲み干した。普段アルコールを摂取しないのと酒に弱いのが相まって、鈍器で後頭部を殴られたように意識が遠くなっていく。

その後は酔っ払った挙句寝てしまった俺を、瑞希がタクシーで家まで送ってくれたらしい。俺はそのことを次の日、二日酔いとともに暁月から聞いた。

 酩酊状態だった時のことはさっぱり記憶から抜け落ちたが、眠っている時何だか快方に向かうような夢を見た気がする。そのおかげか、金曜日(もしくは土曜日)によく眠ることができた。

今回初登場のキャラクター紹介です。三人は少し多すぎました。


【南風咲 楓/はえさき かえで】

アミィの大学の元同級生で今は病院で心療内科医をしている。

肩までの赤いロングヘア、身にまとった白衣が特徴。道を歩けば誰もが振り向き腰を抜かすほどの美貌を持ち合わせている。器と態度と胸が大きい。


【金雀枝 綴/えにしだ つづり】

アミィの組織に属する17歳の少女。年相応に元気で快活な性格。

金髪を短いポニーテールにして両耳に長方形のイヤリングをしている。瑞希(後述)の部下だがあまり敬っている様子はない。しかし一番信頼しているのも事実である。彼女もまた友達から提供されたキャラクター。


【更待 瑞希/ふけまち みずき】

アミィの組織の社長秘書。真面目で誠実だが少し不器用なところもある。社畜。

黒い短髪に眼鏡をかけていて、その下に見える隈が凄まじい。スーツの下にタートルネックのインナーを着ている。綴の上司だがあまり敬意を払われていない。副業として家庭教師も務めている。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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