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第一話【素性】

初投稿ですが、内容は別のサイトに投稿している漫画の小説版みたいなものです。

今まで漫画一本だったのですが、これを機に小説にも挑戦してみようという試みで始めました。

拙い文章ではありますが、宜しくお願いします。

 昼間か夕方かすら判別のつかない薄灰色の空は、今の住居であるマンションの壁に酷似している。

四月中旬だというのに、気持ちの良い晴れ間をここしばらく拝んでいない。花曇りとかいうやつだろうか。

そんなことを考えていたら、ポーンという無機質な電子音とともにエレベーターは定住の階に到着した。

玄関でなく、リビングの扉を開いたところで帰宅の挨拶をする。

「タダイマーッ!愛しの暁月ちゃん!旦那が帰ってきたよーッ!」

食卓とは別の、テレビの前のローテーブルに座ったままの、家の主はこちらを振り返る。

「…お帰りなさい。そして旦那ではありません、ただの同居人です。」

素っ気無い返しまで、いつも通りのテンプレ。


***


俺の名前はcodename:Doll。職業は諜報員―つまり端的に言えばスパイである。

そして先刻のドライな返事は、ターゲットとなる夏野なつの 暁月あかつきのものだ。

こいつは高校生にも関わらず、国家直属の組織で情報管理を任されている重役らしい。

今回の任務内容は夏野暁月の素性を同居の下に調べ上げ、情報を聞き出すことだ。

俺はコミュ力に自信があったから、社長直々の呼び出しに一切の不信感を持たず二つ返事で了承した。

そう、この時は楽勝だと思っていた…。

「…甘かったなぁ…。」

額に手を当て、溜息をつきながら小声で愚痴を零す。そう、…本当に俺が甘かったのだ。

話しかけたら、基本無視。稀に返事が返ってきたとしても、一言二言で会話は終了。

気さくなボディタッチは露骨に避けられ、食事や遊びに誘っても全て断られる。

せめて思春期特有の、俺に構うな的なだったらいいものが、どうもそんな感じではない。

誰に対しても必要以上の干渉はせず、感情の揺らめきすら見せない、非常にやりにくい相手だったのだ。

このままこの無理ゲーを続けていたら、リアルな問題…給料がヤバくなってくる。

頭では理解しても、やはり打開策は浮かばず今に至るのだった。

 ふと、手にしていた荷物を思い出す。おもむろにそれを袋から取り出し、暁月のパソコンを打つ手の傍に置いた。そしてこの場を辞する言葉を口に出す。

「お疲れ。俺もう部屋に戻ってるから、あんま無理すんなよ。」

わざわざこいつがよく飲む缶コーヒーのメーカーを覚えておいてよかった。

意図せず寄ったコンビニで、こいつへのお土産でも買ってやろうと唐突に思いついたのだ。

まぁ大した効果は見込めないと分かっていたので、そのまま俺は反応を見届けることなくわざわざ用意された自室に引っ込んだ。

 スマホを枕元の充電器にさして、部屋のベッドに寝転がる。

目を閉じてこれからの戦略を考えたが、愉快な名前の作戦しか思いつかず、脱線したり振出しに戻ったりを繰り返し、結局諦めて目を開いた。

本棚に並ぶ、『人間の心がわかる心理学』も『気になるアノ子と仲良くなっちゃう10の方法』も『好感度とは ~歴史に学ぶ詐欺師達~』も全てあまり参考にはならなかった。

人間が人間の為に描いたものだから、当てはまらないこともあるというのか。

しばらくボーっとしながら考え事をしていたが時は無情にも過ぎるもので、そろそろ風呂に入るかという気になってきた。今何時だ?部屋の時計よりスマホで時間を見てしまうのは現代人のさがだろう。

画面を明るくしたところで、目に入ったのは充電のパーセンテージと…新着メール?

職場の人間や友達とは、もっぱら某緑のふきだしアイコンのアプリを使っているからメールの通知音は鳴らなかったのか。差出人は考えなくても分かった。暁月あいつか。

初歩的な距離の詰め方である連絡先を交換しようとしたときラ…、緑のアイコンのアレを暁月はインストールしてなかったのでできなかったんだ。その時の俺は押しつけがましくメールアドレスを渡した。

普段はそんなことをしないから、かなり鮮明に思い起こせる。それを使って俺にメッセージを送ってきたってわけだな。何々、内容は…。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

差出人:夏野 暁月

件名:

本文:お土産ありがとうございます。

   美味しかったです。ごちそうさまでした。

   いい時間なので休みます。おやすみなさい。


   |返信| |メニュー| |戻る|

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 これを読み終えたとき、俺の脳は歓喜の声を上げていた。間違いなくこれはプラスの方向の反応だ。

メールという手段でこっちにアクションしてくれたこと、メアドを書き殴ったメモを大事に取って置いてくれたこと、こいつが律儀な性格だと知れたこと。ここにある全ての情報が有益なのだ。

仕事として、諦めるには早すぎる、絶望的でないかもしれない。俺にとっては探し続けた一縷いちるの望みをようやく手に入れたような気分だ。


そんなたかぶった感情とは裏腹に、…ほのかな痛みに胸を刺される。

この感覚が【罪悪感】ということを知ったのは、もう少し後のことだった。

今までと違って、騙しているのが罪の無い人間だから?

まだ若輩者でありますが、小説を書いている人たちと肩を並べて歩いていけるように努力していきたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

興味があれば漫画の方も探してもらえれば幸いです。

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