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駆け込み乗車、お断り

作者: たでんだた

余裕を持って家を出ればよいのだと、頭で解っていても、実際に行動するのは難しい。

あえてドタバタと、頑張って走っているのだと駅員に伝わるように、荒い呼吸で駅舎へと駆け込む。通勤用の半年定期券は直ぐに取り出せるよう、スマホケースに入れている。電車はまだホームに。ほっとしながら改札を通り抜け、小走りで一番手前の車両に乗り込んだ。と思ったら、落ちた。いや、完全には落ちていない。片足だけ、すぽっと太ももまで、ホームと車両の間に落ちた状態。先程の改札から、駅員が慌てた様子で駆け付ける。引っ張り上げてくれるのだろうとほっとする。駅員は自分のそばに屈み込む。何やら手に切符らしきものを握らされた。「?」と駅員の顔を見上げる。

「おめでとうございます。当電鉄初めての、駆け込み乗車による落下のお客様です。よって、特別列車、発車致します」

駅員は無表情に祝辞を述べて、すくっと立ち上がると、背筋を伸ばして、ピーッピッと笛を吹いた。まるでスローモーションのように、車両の扉がゆっくりと、しかし確実に、ピシャッと音を立てて閉まるのが見えた。視線を手の平に移す。子供のイタズラの方がまだマシではなかろうか。切符に書かれた赤い文字「地獄行」が目に焼き付いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  片足だけ、すぽっと太ももまで、ホームと車両の間に落ちた状態で発車。  これはかなり怖いです。  発狂しそうになると思います。 「おめでとうございます。当電鉄初めての、駆け込み乗車による…
[良い点] 「駆け込み乗車をすると、こうなっちゃうよ」という、他の利用客への見せしめ効果が凄そうですね。 私の良く使う沿線にも、ホームと電車の間が大きく開いていて「子供の足なら挟まりそう…」と心配にな…
[良い点] 駆け込み乗車に対する駅員(鉄道会社社員)の苛立ちは分かります。 でも、それやっちゃったら、後始末とかで駅員の負担が大きいのじゃ無いかと疑問に思いました。 駆け込み乗車した奴って、乗車…
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