ゆきちゃんの消失II
赤髪の少女は言った。
「ごめんな、私はお前を殺さないといけない。」
縁の直感は言っていた。これは「本物」であると。
脚に力が入らなくなった。
赤髪の少女は立っていたその錆び始めている街灯を片足で破壊した。軽くステップを踏む程度の動作で、金属製の街灯を破壊した。
そのまま金属片の散らばる地面に降り立った少女は言った。
「死にたくないだろ?まだ生きたいです、こんなところで死にたくないです。……フフ、まあ、見逃すなんて選択肢は存在しないんだけどね。今すぐ殺してもらうか、意味のない足掻きをして私を怒らせてこの星を巻き込んで死ぬか。ああ、自殺って選択肢もあるけど。なんにせよ、お前はこの場で死ぬ。」
脚から力が抜け、縁はその場にへたり込んだ。
私はここで死んでしまうのか。そう覚悟した次の瞬間。
「雷霆!」
その声と共に莫大な光が辺り一帯を包み込んだ。そのあまりの光量に、光が止んでからも数秒は目が見えなかった。
少しずつ目が見えてくると、赤髪の少女と対峙するように女性が立っているのが分かった。彼女は真っ黒な髪で、その右手には落雷を束ねたようなジグザグに曲がった形の大きな槍――のように構えていたが、杖のようにも矢のようにも見えた――を携えていた。
「結莉さん?」
「君は早く逃げるんだ。この場は私がなんとかする。その間にゆきさんを頼む。」
「でも……」
「早く!」
弾かれたように縁は走り出す。ベンチのゆきをお姫様抱っこのように抱き上げると、その重さにヨロヨロしながらも逃げ出した。
「私から逃げられるとでも思ってんの?」
赤髪の少女は空中を殴った。拳の速さは普通の女の子と変わらないくらいのはずなのに、そこから飛び出す衝撃は大気を切り裂き、より大きな衝撃派の波を次々に生み出していく。
しかし、その衝撃波は縁には届かなかった。雷霆がそれを打ち消した。
「……ほう。」
結莉は言う。
「まずは私を殺せ。」
赤髪の少女が言った。
「どう足掻いたって全部私に壊されるんだから同じだし、相手してやろう。……そうだ、自己紹介がまだだったな。私は破壊神。よろしく。」
破壊神は丁寧にお辞儀をした。
雷霆ってのはゼウスの武器です




