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布告

 全ての言葉が、日本語なのに日本語として聞き取れない。何を言われても、意味を理解できない。

 ゆきが目の前で消えてから、縁はその場で立ち尽くしていた。さらに、テレビのニュースで祇園寺結莉の死亡を知って、それから縁の記憶ははっきりしていない。

 なんだか動く気力が起きなくて、縁は昨晩からずっとベッドの上に居る。たまにスマホを開いたりしていたけど、脳みそがそこに表示されているものを理解しようとしてくれないので、やめた。

 飲まず食わずで居るのに、大小問わず便意だけはやってきてしまう。動きたくなくて我慢していたけど、そろそろ限界だ。女子高生として、というか、人間としての最低限の尊厳のために、排泄はトイレに行くことにした。フラフラしながら立ち上がったところだった。

『超科学の実在を知る者も、知らない者も。これを機に、創造神の存在を知るだろう。』

 ずっと日本語を拒絶してきた脳みそにも、ダイレクトに情報が伝わってきた。何かが聞こえたという感覚だが、耳は音を検出していない。だのに、その声は聞き覚えがあると思ってしまう。

「ゆき……?」

 聞き慣れた自称創造神の声だ。

 その声は、縁には反応せずに続けた。

『私は世界の全てを作り直す。全てを破壊し、再び創造する。私は、この不完全な世界を正す。望む者は静かに待とう。望まぬ者は……私を止めてみよ』

 縁は叫んだ。

「何言ってるの?破壊し創造するってどういうこと?ゆきなんでしょ?答えてよ!」

 返事は返ってこなかった。

「どうしよう……」

 ゆきは「私を止めろ」と言っていた。縁はゆきが何を言っているのかよく分からないが、「破壊し創造する」なんていう物騒なことは嫌だ。

「とりあえず、結莉さんに……」

 そう思い当たって、すぐに思い出した。結莉はもう居ない。頼れる相手はもう……

「ゆきを止めたいんだろ?」

 新しい声が聞こえてきた。聞いたことのある声だ。

「破壊神を差し置いて、世界の破壊なんて笑えるな」

 赤い髪に赤い瞳の女が、そんなことを真顔で言っていた。自称破壊神であるりんごだった。

「元気だったの?」

「死んだと思ってたのか?」

 りんごはぶっきらぼうに答える。

「良かった……。でも……」

 縁はりんごの右腕に視線を向ける。

「……死んじゃあ居ないだろ?」

 そう言うりんごの右肩から先には、何もなかった。彼女は右腕を完全に失ったままだった。

「これでもだいぶ回復したんだ。一時は上半身の右側と、頭も完全になくなってた。だから、今どういう状況なのか分からないんだ。教えてくれないか?」

「そう言われても……今しがた、ゆきが変なこと言って、それと……」

「それと?」

「……結莉さんが、亡くなった」

 縁もりんごも黙り込んだ。が、俯いて黙ったままの縁を見て、りんごが口を開いた。

「大方あれだろう。異能力の喪失による事故だろうな。……私もついさっき回復しきったばかりなんだが、今のこの世界では魔術場がほぼ完全に消滅している。つまり、異能力だとか魔法だとか、魔術場に依存する力は今は使えない。いつも通り能力を使う前提の行動を取っても、異能力のなくなった肉体はそれに耐えられない。」

 りんごはチラリと縁の方を見る。縁は俯いたままで、その表情は分からなかった。

「異能力が使えたら防げたことなのか、そもそも異能力が存在しなかった良かったのか。どっちなんだろうな」

 誰に向けてでもなく、りんごは独りごつ。

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