異能喪失
マンションの20階から、女が飛び降りて死んだ。まだ30分も経っていないというに、野次馬は大量に集まっていて、警察はその対応に追われている。
「通してください!私の知人です!」
そう叫びながら人ごみをかき分けて入ってきたのは、童顔で金髪の女。
警察が彼女を差し止める。女は走ってきたようで、息を切らしていた。
「彼女は……私と同棲しているんです……」
一方、立花縁は1人テーブルに向かって晩御飯を食べていた。結莉が作ってくれた大量の食事はお昼だけでは食べきれなくて、冷蔵庫に大量の唐揚げが残っている。
「明日で食べきれるかな……」
そう呟きながら、お皿の上の最後の一つの唐揚げに縁は箸を伸ばした。その箸が唐揚げを掴もうとすると、縁の後ろから伸びてきた手がそれを取り上げた。
縁は驚いて振り向いた。
「…………ゆき……!」
そこで唐揚げを頬張っていたのは、雪のように透き通った白い髪と、碧く輝く瞳の女。自称創造神その人であった。
縁は思わず彼女に抱き着いた。
「もう……。心配、したんだよ?ずっと、待ってたんだよ?」
返答はなかった。ただ、その左手で縁の頭を優しく撫でている。
「どこに居たの?何してたの?……ちょっとくらい答えてよ」
返答はなかった。ただ、その左手を縁の肩に移し、そして首に移し……
「…………!」
縁は咄嗟に離れた。首を絞めようとしてきたのだ。
「なっ……何すんの!?」
ゆきは無言のままだった。ただ、その左手をじっと見つめている。やがてその視線を縁の顔に向ける。口を開いて、閉じて、もう一度開いてから、一言だけ呟いた。
「許して」
その直後、縁の目の前からゆきは消えた。




