ゆきちゃんの休息
結果から言うと、ハッピーエンドというやつである。
破壊神は暴走した。宇宙の崩壊が始まった。そのままでは、当然、宇宙は完全に消え去っていた。しかし、そこに創造神が介入したらどうなるか。全てを破壊する力を全てを創造する力でもって中和したのだ。こうして世界の崩壊は止められた。全力を出し合って力尽きた両柱は和解した。
と、そこまでが縁が駆けつけるまでの間に終わっていた。
地面に横になって肩で息をするゆきが言った。
「ねーゆかりー、この子にも名前つけてやってよ。」
「……はい?」
「だからさー、いつまでも破壊神じゃ呼びにくいじゃん。」
「なんで私なのよ。」
「私は疲れちゃったから。ゆかりー、おねがーい。」
「えぇ……。」
縁はゆきに名付けたときを思い出してみた。
いきなり岩の中から出てきた謎の美少女。意味の分からないことを言われて、咄嗟につけた適当極まりない名前。髪が雪みたいに白かったから。それだけ。
「ほらー、はーやーくー。」
ゆきが子供みたいに催促する。
そうだな……。
「……りんご?」
「……赤いから、りんご?」
「……うん。」
「へぇ……。」
ゆきは幾度か「りんご」と呟いてみてから言った。
「……うん、いいんじゃない?縁らしくて。」
上半身だけ起こして破壊神のほうを向くとゆきは言った。
「よし、決定!キミは今日から『りんご』ちゃんだ!」
「はぁ?私は認めてないぞ!」
「いいじゃん、かわいいじゃん。『りんご』ちゃん。」
「あーもう、うるさいなぁ!もうそれでいい!」
かくして、ゆきちゃんと愉快な仲間たちに新しいメンバーが加入したわけだった。
ゆきと縁、それにりんごは家に向かって歩いていた。
「結局どういうことだったの?」
縁が言った。
「どういうことって?」
ゆきが言う。
「だからさ、結局ゆきがりんごに勝ったわけじゃん。でも、なんでゆきは最初、あんな簡単にりんごにやられてたのさ。」
「あー、あれはね。……完全に油断してた。」
「こいつ、全く警戒心持ってなかったんだよ。私が腹に手ぶっ刺してからようやく気付いたみたいだったけど。」
りんごが補足する。
「世界に居るのはいい人ばっかりじゃないから気を付けてよね?」
「えへへ……ごめん。」
「あと、りんごってあそこでずっと待ってたわけ?」
「ん……うん……。」
「なんで?」
「……私はゆきの大事にしているものから壊していこうと思ってたんだ。……多分。……だから、わざわざ探しに来るような奴が、ゆきの一番大事な人間なのかな……って思ってたのかな?」
「一番大事……」
縁は顔が火照るのを感じた。
「あれー?なんで顔が赤くなってるのかな?」
ゆきが茶化すように言う。
「あーうるさい!」
縁は逃げるように走り出した。
「あっ、逃げた!」
ゆきが追いかけて走り出す。
静かな夜の街並み、走る二人。冷たい空気が少しずつ火照った縁の頬を冷ましてくれる。
「……あ。」
縁は立ち止まった。追いついたゆきが飛びつくようにして縁に抱き着いた。
「つーかまーえた!……どうしたの?」
「ゆき。」
「……ん?」
上を向いたゆきの鼻先に小さな雪の結晶が降ってきた。
「雪だ……。」
ようやく走ってきたりんごが追いつく。
「いきなり走り出すなよ、もう。……どうしたんだ?」
「……雪、降ってきた。」
ゆきが言った。
「……帰ろっか。クリスマスパーティーまだやってなかったしね。」
縁はそう言って再び走り出した。
破壊神編、完結となります




