ゆきちゃんの消失Ⅶ
セフィロトの樹とかそういう概念に少し似てるかもしれない
縁は強く願った。願うことしかできなかった。ただ願うことしかできない自分の無力さを嘆いた。力が欲しかった。腕の中で静かに眠る神をもう一度起こす力が欲しかった。
やがて、強く願う縁の意識はどこか深い次元へ沈み込んでいった。
「……あれ?」
気づいたら、縁は見知らぬ場所に居た。
上も下も分からない、重力が存在しない場所。明るさという概念で表すことのできない何かで照らされた無限に広い空間。
縁の前には知らない人物が立っていた。(地面が存在しないのでこういう表現が正しいのかは分からない。)
それは色白で白髪の少女の姿をしていた。ゆきにとてもよく似ているが、別人であることは分かった。
「誰……?」
少女は縁を隅々まで観察してから、ようやく口を開いた。
「私は……創造神の能力、とでも言うべきでしょうか。」
縁は少し考え込んでみたが、
「わかんない。どういうこと?」
少女は溜息をついた。
「もう少し解り易く説明しましょう。まず、ここは宇宙の深淵。あなたたちが暮らしている次元とは異なる場所です。あなたが『ゆき』と呼んでいる宇宙の創造神の能力の根源はここにあります。それが私です。彼女が能力を使おうと意識したとき、私が呼び出されて能力を発動します。そしたら、それがあなたたちの住む次元……物理次元まで伝播して能力が顕現するんです。……わかりましたか?」
「……う~ん、よくわかんないけど、ゆきにこき使われてるってこと?」
「……まあそれでいいでしょう。」
「……あ、こんなことしてる場合じゃなかった!早くゆきを起こさないと!ねえ、どうやったら帰れるの?」
「……そのことですが。あなたは何を望んでいたんですか?」
「……ん?」
「ここはあなたみたいな人間が簡単に入って来られるような場所じゃありません。よほど強い気持ちがあったとか、色々な条件が合わないとここに来ているはずがないんです。まさかもう忘れたとかじゃないですよね。私はあの全能の創造神の能力なんですよ?」
「……そういうことなの?」
「はい。あなたがトリガーになってくれれば私は能力を発動できます。」
「……じゃあ、ゆきを起こしてくれる?」
「……わかりました。彼女は私の力で蘇らせます。あなたも早く戻らないといけないですね。普通の人間がこんな深層に長いこと留まっていたら、肉体との結びつきがなくなってしまいかねません。もう二度と、こんなところに来てはだめですよ。」
直後、縁の意識が落ちた。
とても深いところから浮かび上がる感覚。朝起きるときと少し似ているかもしれないが、それよりは比べ物にならないくらい深い。
「……縁さん!どうしたんですか⁈目を覚ましてください、縁さん!」
未玖の声だ。五感と意識が少しづつ繋がっていく。視界がだんだん明瞭になっていく。
あ、そうだ、
「ゆき!」
創造神は腕の中で眠っていた。ただ、腹部の穴がもう閉じている。
「んん……?うるさいな、もう少し寝させて……。」
「ゆき……!」
縁はゆきに抱きついた。
「……ッ!なになに、どうした?……ああ、そういうことか。破壊神さんをどうにかしないとだね。」
「ちょっと待って!」
「……ん?」
「またやられたりしない?」
「……あー、ダイジョーブ。あの時はちょっと油断してただけだから。」
「本当に大丈夫なんだよね……?」
「うんうん、まあ見てなって。」
瞬間移動でもしたのか、ゆきは姿を消した。
白髪少女は宇宙の一番深淵の世界でずっと一人でした。クールに話していたけれどほんとは他人と話すことができてすごくうれしかったし縁と別れたくなかったはずです。かわいいね。
寝ている時に見ている夢の世界っていうのは物理次元より少しだけ深い次元です。精神次元と近いかもしれないね。




