ゆきちゃんの消失Ⅵ
ずっと放置してたけどナンバリングミスってたの直しました
ゆきちゃんは死んだのか?
「死ぬ」というのをその個体の全活動の停止とするならば、彼女は死んでいた。破壊神によって活動している状態を破壊されたのだから。
そんな状態のゆきは、いくら創造神と言っても何もできない人形でしかない。その身にどれだけ強力な力が眠っていようが、その力を発動するトリガーたるゆきの意思が存在しない限り創造神の力は働き得ないのだ。
縁はただ願った。
まだ別れたくない。こんなところで終わりたくない。もっと遊んでいたい。だから、
できることならまた目を開いて。
破壊神はほんの少しだけ、昔のことを思い出していた。あれから5000年ほど経ったのだろうか。人間社会はあの頃とは比べ物にならないほど発展した。たくさんのモノで溢れた社会になった。
ただ、彼女はどこにも存在しない。
何度も彼女と別れなければならなかった運命を嘆いた。ずっとこの運命を仕組んだ犯人を探していた。
そんなある日、何かの覚醒を感じた。何か自分に匹敵する、否、自分よりも大きな力を持った存在が覚醒したのだと。
そして知ったのだ。創造神の存在を。
考えたのはただ一つ。
あいつがこんな理不尽な世界を作ったのが全ての発端だ。
「邪魔が入ったが、早く追いかけるか。」
ところが、歩き始めた脚を掴む腕があった。
破壊神の足元の結莉が手を伸ばしていた。
「させない……ッ!」
「……まだ生きてたのか。」
「……本当は、まだ死んでなくて良かった、って言いたいんじゃないの?」
「……うるさい。」
「あなたの行動にはいくつか不審な点があった。」
結莉は雷霆を杖代わりにして立ち上がった。破壊神は感情が読み取れない表情で結莉を見つめる。
「まず、ゆきさんの体を破壊しきらなかったこと。彼女は、いくら創造神といえどもその肉体は物理次元……我々の住む低次宇宙のものであり、生物学的に説明可能なホモ・サピエンスとほとんど同じ。破壊神であるあなたの力なら簡単に破壊できたはず。それに、ゆきさんを行動不能にした後、縁がやってくるまで待っていたこと。わざわざ誰かに見られるかも分からない街中の公園で行動に及んだことと併せて、合理的でない。あなたほどの存在なら、地球上程度の広さならどこへでも瞬間的に移動可能だ。場所はいくらでも選べたはずなのに、ここを選んだ。ほんとは縁に見つけてもらって止めてほしかったんじゃないのか?……それに、私を殺さなかったこと。殺しきれなかった、なんてわけはない。戦っていて分かった。あなたは全力の一パーセントもかけずに私をひき肉にできる。あの蹴りで私を殺さなかったのは、殺したくないからとしか考えられない。」
「……うるさいッ!」
破壊神が地面を蹴る。そのつま先を中心として大きなクレーターが出来上がった。
「……そっちがその気なら、こっちも本気を出すのが礼儀でしょう。」
結莉は雷霆を構えなおす。
「Remove restriction. Code;Lunacy!」
雷霆が青白く輝き始める。強力な稲妻が溢れ出し始めた。
「馬鹿か……そんなことをしたら自分自身も感電して体が長くはもたないぞ。」
「そんなの……重々承知ッ!」
結莉は雷霆を槍の要領で突き立てた。
「本当に、人間は馬鹿で嫌になる。」
破壊神は力業を力業で封じるかの如く、全てを破壊する衝撃波を放った。




