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第三節 立場の逆転 1話目

「あらぁ、シロにグスタフじゃなぁい。お久しぶりねぇ」

「おやおや、これは嬉しい援軍ですね」

「おお! 誰かと思えばベス殿! 再び会えて嬉しいぞ!」


 アジト内の円卓に、少しずつだが初代オリジナルメンバーが揃いつつある。

 そして――


「あの方が槍術に長けていると噂の……!」

「ほーん、中々に強そうな槍使いじゃないか!」

「キョウ、中々はおかしい。相当が正しい」


 彼らにとっては幸運にも、というべきであろうか。ユンガーにキョウ、そしてチェイスの三人が同じ円卓についている。


「あらあら、元気の良さそうな子達ばかりじゃない」

「彼らの平均レベルは90前後と、それなりに役に立つ者ばかり集まっていますから」

「それは鍛え甲斐があるというものだ! ハッハッハッ!」


 グスタフさんの言う通り、彼らがもしレベルアップするというのであれば今は元より更に貴重な戦力となる。が、噂が周回遅れで届いているグスタフさんには悪いが、現状としてレベルアップの気配はなく、正直あまり期待していない。


『そういえば、正式サービス開始から他に入ってきたプレイヤーとかいないのか?』

「今のところは。それよりもベスさんが入ったことの方が戦力的には桁違いですよ。これでボクとグスタフさんで前線を抑えつつ、ジョージさんとベスさんの二人で背後から奇襲を仕掛けたり、少数精鋭で潰しにかかる際の成功率も段違いに変わってきたりと、戦略的にはかなり広がりますから」


 今まで前線は他の面子に任せての負担をかける形だったが、これでこっち側だけで確実に戦況をコントロールするところまで可能になるだろう。


『よし、これで戦力は整ったが……例の古代文字は解読できたのか?』

「そういえばグスタフさんの知り合いに依頼していた筈ですが……」


 そうして俺とシロさんはほぼ同時にグスタフさんの方を向くと、既に用意が出来ているといった様子でこの円卓のある部屋の出入り口の方を向く。


「入ってきてくれ」


 その一言でドアが重々しく開き、まさに考古学者といった風貌の男が一人入ってくる。


「いやはや、早速新たな古代文字を目にすることが出来たことは光栄に値する」

『その人が例の?』

「ああ。現実世界でも有数の考古学者の、アレクサンダー先生だそうだ」


 マジかよ……現実世界でも考古学者って、相当凄い人じゃないか。ただの白い髭を生やした老人ってワケじゃないのか。


「アレクサンダー教授……まさか本人とは……」


 えっ、シロさん知ってるの? まさか知らないのは俺とベスだけ――


「アレクサンダー……米考古学研究会の副会長じゃないのぉ」


 あ、駄目だ完全においていかれた。というよりなんでそんな人がこの世界ゲームに迷い込んじゃっているんだよ。


『……まあ、本題は古代文字についてだ。現実世界での知識を活かした解読に感謝する』

「ほっほっほ、そんなに改めなくとも、これは趣味みたいなものじゃから」


 とはいえそこからは本来の考古学者らしい真面目な雰囲気でもって、テーブルの上に俺が今回書き写してきた二十文字と、それに対応するような五十音表のようなもの広げ、アレクサンダー教授は早速解説を始める。


「この頭の二文字、これは季節を示している。そしてこちらの五文字とこの文字がかかって――」


 ……正直言って頭に入ってこない。話が専門的すぎて俺には理解ができない。知力(INT)の問題ではなく、専門外の畑違いといった方がここは正しいだろう。


「……熱心にお話のところ申し訳ありません、教授。我々は素人故に、もう少しかみ砕いた話をしていただければ幸いです」


 どうやらシロさんも理解には難色だったようで、困ったような表情で教授に対して提案をしている。


「そうか、すまなかった。つい熱くなってしまってな。ひとまず結論からいうと、これは王位に即した者が天使かそれに近い何かに対して賛美するような言葉が並べられている、ということじゃろうな」

「天使を……」

『賛美……成る程な』


 その訳し方ならば理解は早い。恐らく天使というのは、あのオラクルのことを指しているのだろう。事実今の剣王も、姿を見るなり喜んでいた。


「その天使というのはどういったものなのか、これから他に読み取れることは?」


 シロさんの問いに対して教授は頷きながら、更に読み解いていく。


「これはおそらく王国の歴史…………黙示録、七つの罪は七つの使いによって滅ぼされるだろう……」

「っ!?」


 七つの罪……俺を含むギルドのメンバーは、その瞬間に息を呑んだ。


「……ラストが危ない」


 これはもっと他に調べなければ……手遅れになる前に。

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