第二節 三人目 10話目
「――へぇ、つまりは拾った子達ってことね」
『だからさっきからそうとしか言っていないだろう』
晩飯も済ませて余裕もできてきたのか、ベスはここでようやく三人の少女について事情を呑み込むことができたようだ。
「チッ、そのまま勘違いしてしまっていた方が――」
『ラスト』
「い、今のは違います!」
このまま勘違いが広がった方がとんでもないことになるぞ、全く……。
「でも、安心したわぁ。ある意味ではジョージはジョージのままって感じで」
『どういうことだ?』
「ふふっ、教えないわぁ」
……なんかモヤモヤするが、まあいいだろう。
『それはそうと、今日の寝床はどうするつもりだ?』
この家にある個室は全部で三つ。一つは俺、一つはラスト、一つはウタ達三人の為の部屋。客室なんてものは残念ながら家を建てる段階では全く考えていなかった。
「そうねぇ。できれば泊めさせて貰えば嬉しいんだけどぉ――」
「あら、でしたら外の犬小屋が空いていますわ」
「犬小屋なんてねーよ」
ラストのボケを冷静に処理しながら、俺は今の部屋割りからどこをベスに割り当てるべきかを考えた。
『流石に男の部屋に寝かせる訳にもいかないだろうし……』
「あら? 別に私はジョージと一緒のベッドでも構わないけどぉ?」
それは何かと一線超えてきそうで怖いので止めておきます。おまけにラストが今鬼のような形相でベスにガンをとばしているのがなんとなく察せられるし。
「私の主様と床をともにする権利は羽虫には無い筈ですけどぉ?」
「あらあら、あんまりしわを寄せすぎると人より早く老けるわよぉ?」
だから高レベル同士で無意識のうちに煽り合うな怖いから。いろんな意味で。
『客人に寝かせるよりはまだ身内で俺の部屋を埋めた方が良いだろうし……』
「でしたら主様!」
『よし、ウタ、ユズハ、アリサ。悪いが今日は俺の部屋で寝てくれ』
「あっ、はい」
「パパの部屋で寝れば良いのか?」
『ああ。代わりにお前達の部屋でベスが寝ることになる。俺は……リビングで適当にソファに横になって寝るから』
「ちっくしょう!!」
いや、かなり悔しがっている様子だがラストをベッドに入れたら最後なんか色々……うん、お察しです。
「ジョージはそれでいいのぉ?」
『ああ。明日はレリアンで古代文字を解読できる奴を探す。お前達も買い物があるのなら、ついてこい』
「主様、私もよろしいのですか……?」
ラストは不安げに聞いてくるが、流石にレリアンで何かが起こることは無いだろう。
『ああ。基本的には全員で行動することになるがな』
「っ! ありがとうございます!」
「ほんっと、優しいのね」
ベスは俺のことについて相変わらずだといった様子だが、別にたかだか十年で人間そこまで大きく変わることはない。
『それじゃ、明日に向けて早めに寝るとしようか』
ソファで寝るなど、会社での地獄の残業の日々以来に久々だな――