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第二節 三人目 7話目

「――それで? 何かめぼしいものでもあったかしら?」

『今調べているところだ』


 幸い、巨人を倒したことで倒壊は防ぐことができたようだ。さっきのような地鳴りも無くなり、辺りもしんとしている。


「王冠まで真っ二つにしちゃって、どれだけ張り切ったのかしら」

『そのことについては何も言うな。俺だってまさかあそこまで斬れるとは思っていなかっただけだ』


 クリティカルも重ね続ければ一撃必殺級の威力となる。そしてフィニッシュ時に上手いことクリティカルを引くことが出来れば相手を文字通り一刀両断できるが、王冠までもが真っ二つになるとは想像していなかった訳で。


『……やはり、描かれているのは古代文字か』


 前作でも遺跡の奥地には描かれていることの多い謎の絵文字(?)。ゲーム上でも正式名称が記されておらず、それとなく俺達プレイヤーの間である意味では公の名称となった古代文字。専門に解読しようとしているプレイヤーもいたようで、前作ではそのおかげで七つの大罪(セブンス・シン)のうちの一つの居場所が割れたということもあったりする。


『スクショ――って、出来る訳ないか』

「端末もないのにどうするのよ」

『やっぱり書いて帰るしかないか』


 ステータスボードから何かと使うことの多い羊皮紙を呼び出すと、早速王冠の内側に描かれていた二十文字を全て写す作業に取りかかる。


「じゃあ折角だし、今のうちに他にめぼしいものがないか探すわね」

『ああ、そうしてくれ』


 それにしてもこの冠、流石は王が身につけるものというか、過剰なまでに装飾が施されている。


『墓荒らしだったら絶対にこれも持って行くはずだが、もしかしたら途中で目覚めて急いで逃げ帰ったのかもしれないな』


 いずれにしても二度目の眠りについた巨人の横で、俺は羊皮紙に文字を書き写す。辺りはしんとした雰囲気を保ったままであるが、そろそろ帰り道の入り口くらいにはモンスターがリポップしているかもしれないな。


「……あらぁ? これって中々良いものじゃないかしら?」

『何か見つかったのか?』


 書き写しを終えた俺は再び羊皮紙をしまい込むと、ベスが立ち止まっている場所へと移動する。


「これ、まだ財宝が手つかずじゃない?」

『みたいだな』


 ベスが見つけたのは木製の宝箱。見た目は完全に世界共通認識のあの形状をしている。

 鍵がかかっていたようだが経年劣化とでもいうべきか、ベスが軽く力を込めただけでいとも簡単に宝箱の蓋は開き、中にはぎっしりと金貨が詰められている。


「わぁぁ……」

『これだけあればしばらくは資金に困らないな』


 つい最近に殆ど一文無しになった身にとって、これだけの金貨はありがたいものだ。


「お金は当然……?」

『折半だな』

「ええ、そうしましょ」


 俺達のギルドのルールは至ってシンプル。全て早い者勝ち、手柄も立てた者が独り占めできる。

 とはいっても、暗黙の了解的にギルド全体に有益ならばそっちに優先することも多い。しかし今回のこの報酬品は俺とベスで山分けと行かせて貰おう。


『さて、そろそろ撤収といこうか』

「ええ、そうね」


 今回の収穫はとても大きい。旧知の仲との合流に、謎の古代文字。そしてこれまでの出費で減ってきた資金の回収。


『今回の冒険(おつかい)は、そこそこの収穫ってところか』

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