第二節 三人目 5話目
『……さて、どうする?』
「どうするもこうするもないわよぉ」
遺跡の最深部。大広間に石を引きずるような、嫌な音が響き渡る。周りの影がより色濃く、より闇へと近づいていく――
『……どうやら墓荒らしに遭っているようだが』
恐らくは霊安室的な場所なのだったのだろう、周囲の壁には壁画が画かれているが、恐らくは飾られていたであろう宝石類が無くなっていたり、壁画の一部が剥がされていたりと墓荒らしの跡が見受けられる。
そして既に先人が侵入していたのだろうか、彼が眠っていたと思わしき棺すらも暴かれ、そして中で眠っていたはずの巨大な“王”を呼び覚ましている。
「グォオオオオオオ……」
このダンジョンの主――王冠を被りし巨人の骸が、永い眠りから再び目を覚ましていた。
『怒れる王の八つ当たりってか?』
「というより、完全に私達が墓荒らしだって勘違いされているようだけどぉ?」
だけどぉ? とか行っている暇も無い。既に壁に入った亀裂は更に広がってゆき、じきにここも倒壊するということを指し示している。
『くっ、墓荒らしに先を越されたってことはここにはもう何も無いか?』
「あらぁ? まだ残っているじゃない?」
『何がだよ』
「あれ」
そうしてベスが槍で指し示した先は、巨人が被っている巨大な王冠。
『王冠なんてどうするんだよ……』
「違うわよ。王冠の内側に、何か書かれてない?」
『いまいち見えにくいが……あれは文字か?』
どうやら何か文字が刻まれているようで、ベスはそれが何か引っかかる様子。
「どうして王冠の内側なんかに文字を刻んでいるのかしら?」
『理由は分からないが、何かしらの情報なりがそこにあるはず』
となると当然、この遺跡が崩れ落ちる前にしなければならないことがある。
『――倒すしかないか。この巨人を』
「クリティカルどれだけ重ねればいけそう?」
……十倍もあればいけるだろう。
「じゃ、その間時間稼ぎをしてあげるから、一撃で仕留めなさいねぇ」
ベスが先にでることで敵の注目を稼ぎ、その間に俺は目の前の敵を一撃で倒すためにスキルを幾つも重ねがけを開始する。
「グォオオオオオオ……!」
「ッ!? 何ッ!?」
しかし戦闘態勢をとった巨人の最初の行動は、壁に拳を叩きつけるという予想外の行動。
「あらぁー、これって更に制限時間短縮されちゃう感じ?」
『それだけに見えるか……あんなもんを隠し持っていたとはな』
巨人の王が壁から引きずり出したのは、ベスの持っていた槍が爪楊枝に思えるほどに巨大な剣だった。
「グォオオオオオオ!!」
『……こりゃ、最初から俺も参戦すべきかな』
ゆっくりと呼吸を整え、そして代償としてTPを半分支払えれば、俺の全身を真っ黒で禍々しいオーラが包み込む――
『――殺界』
運に極振りしたらどうなるか、今からそれを教えてやる。
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