第一節 神託 2話目
今回は繋ぎの回のため少々短めです。
「――神託ヲ、サズケマショウ」
神託、ということはこの化け物が今から宣う言葉というものは全て神の意志ということになる。
「暗黒大陸ハ、再ビ混沌ヘト陥ルデアロウ」
そりゃそうだろ。そうでもないとゲームが成立しないだろうし。
「大陸ガヒトツニナリシ時、全テノ罪ハ購ワレルダロウ。遂ニ残リシハヒトツノ大国、それ即チ平穏ノ証左」
要はゲームのルールと同じ、どこかの国がこの広い暗黒大陸を統治した時こそ、ゲームクリアだと言いたいのだろう。
しかし気になるのが一つある。
「全ての罪……?」
「ビクッ!」
それまで大人しく俺の後ろに隠れていたラストが、その言葉を聞くなり体を震わせる。
「……そうか、七つの大罪か!」
しかし一帯どういうことだ? 大陸統一とラスト達の存在の意味、それらがどういう関係を持っている?
いや、問題の焦点はそこじゃなくオラクルとラストの関係だ。あのよく分からない神の使いに、ラストは今も怯え、隠れている。
「……罪ハ罪。孰レ償ワレル」
その時一瞬、まるで今までそこに立っていたはずのラストの姿を探していたような、視線がぐるりと裏路地をなめ回すように過ぎていったような感じがした。それは探知スキルによる引っかかりというより、人間の本能としてそれを感じ取ったような感覚に等しい。
そうして捜し物を見つけられなかったのか、オラクルは再び天に還るようにして、その場に残光を遺しながら姿を消していった。
そしてこの登場をうまく利用するかのごとく、三代目剣王は大声でもってこのパレードを締めくくる言葉を綴る。
「オラクルの言葉の通り、我々は二度目の世界征服を行う! そのあかつきとして、今度こそこのベヨシュタットは未来永劫その名を轟かせる大国となるだろう!!」
「うおおおおお!! 剣王万歳!」
「ベヨシュタットに栄光を!!」
市民はその言葉に沸き立つが、俺にはむしろその光景が不気味にも思えた。
『……これは最低限の報告だけで、首都には近づかない方が良いかもしれないな』
「チェイスも、そう思う」
出来過ぎたオラクルの登場、そして剣王の高説。それに対して洗脳されたように過剰な興奮をしめす首都の市民達。明らかに異様だ。
「……首都の隠れ家以外、できる限りの撤収を進めるべきだろうな」
俺はいまだに怯えるラストの肩を抱き寄せながら、このベヨシュタットに湧き起こっている不気味な空気を肌身に感じ取っていた。
第三勢力の登場、そしてベヨシュタットの異変が徐々に表立ってきます。
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