第四節 旧知の窮地 8話目
夜も明け、予定通りに準備も整った。後は最後のチェックを忘れずにこなすのみ。
『全員、今持っているもので全てか?』
「ええ。村の皆も全員揃ったわ」
「一応保存のきく食料は全て纏めてあるぞ」
『ここで捨てるよりはその方が良いだろうな』
後はラストの転送魔法で全てまるごと村の近くへと転送するだけ。
『ラスト』
「承知しました」
その場にいる全員の足下にまで、魔方陣が広がっていく。それとともにラストのあふれんばかりの魔力のオーラが、魔方陣を更に輝かせていく。
「――【転送】!」
そして詠唱とともにまばゆい光が俺達を包み込み、森に残ったのは僅かな村の残骸だけとなった。
◆ ◆ ◆
「おぉ、これがお前の力かー」
「この程度、造作も無いわ」
転送先に広がる草原を前にして素直に驚き感嘆の息を漏らすペルーダと、ここぞとばかりに調子に乗るラストをよそにして、俺とリーニャは転送魔法で散らばった荷物を纏め、村の皆を連れて野道を外れて森へと向かっていく。
『道中は俺とリーニャが先頭を、ラストとペルーダで最後尾を守る。何かあったらすぐに連絡を取るように』
「では早速移動しましょう」
「って、ちょっと待てよおい! あたし達をおいてくな!」
「主様、主様ぁー!!」
そんな慌てるようなスピードでもないだろうに……とはいえ、【転送】を誰かに見られている可能性も考慮して、早めに姿を消さないと。
『ここを入り口としようか』
森の入り口の大木に目印代わりに刀で斬り傷をつけ、その後も見るものが見れば分かるように×印の傷を木々につけながら歩いて行く。真っ直ぐに村に行けるようにと目印をつけながら、俺は森の奥の目的地へと脚を更に運んでいく。
『……ここでいいだろう』
秘境とまではいかないが、この森の奥には隠された湖が存在する。地下から湧き出す水は透明で飲み水にもなる上、湖畔のすぐそばに高い木があるわけでもなく、まるで湖とその周りだけがスポットライトのように日光で明るく照らされている。
『後はこの森を俺がすぐに買い占めれば、近くの村の人間も近寄ることはなくなるだろう。そもそもこの森を持っている地主も持て余しているようだから、快く俺に譲ってくれると思う』
「イイじゃんイイじゃん! あたしここ気に入った! 今までで一番綺麗なところじゃん!」
「確かにここなら魚も捕れそうだし、今通った道だけでも薬草や野草もかなりの数が生えていたから食料にも困らなさそう」
俺から見ても中々の好条件そうな場所だったが、その道専門の彼女らの目からしてもかなり良い場所のようだ。これならリーニャ達とも村の側で暮らすことができるだろうし、何よりこれから防衛の時の味方が増えたことになる。
とはいっても被害を出させるような呼び出し運用をするつもりはないし、あくまで保険としてだが。
『さて、後は土地を買ってしまえば彼女達の安全は確保できる』
百年前の借りを少しはこれで返せたことだろう。後はエルフの品々を買ってくれるような行商人を見つければ――
「――見つければ?」
……もう既に見つけているじゃないか、俺。
余談ですが、ニ○ジャガイデンというゲームがありまして……面白いですよ。(´・ω・)
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