第四節 旧知の窮地 7話目
先に倒した二人が装備していたものを調べたいところだが、どうやら互いの居場所を普段から把握しているのか、襲撃した地点に素早く七人の反応が近づいてくる。
「普通なら複数人で現場を調べに来て正解だ。だが――」
――俺にとってはそれこそがまさに釣り餌だということを、相手は分かっていない。
「現場は……うっ!?」
一人は首を切り落とされ、もう一人は喉から多量の血を流して倒れている。そんな現場を目撃すれば、自然と戦意は喪失されていく。
「な、なんだよこんな……! ひでぇ……!」
「う、お、おえぇ……」
ま、そりゃそうなるだろうな。少し前まで一緒にいて、そしてついさっきまで声を聞いていた相手が、こんな無惨な姿になるとは誰も想像できなかっただろうよ。
「そういうゲームだからな、これは」
今まで安全な場所から撃ち殺してきた輩が、いきなり末梢の恐怖と対面するとなった瞬間これだ。このゲームは全年齢対象となっているが、こういったゴア要素は十八歳以下を対象に普段は規制がかかっている。
……たまに粋がった奴が直で見てしまってトラウマになったりもするが、そこは記憶の抹消がよく役に立つとか立たないとか。
精神力を上げることでおまけとしてグロ耐性がつくらしいが……まあ、ある意味では精神異常に耐性がつくということだろうか。
そして更に――
「――シィッ!!」
「ぎゃあっ!!」
一人だけジリジリと後ろに下がっていたから背後から斬り捨てさせて貰った。まあ、痛みも何も感じる間もなく抹消されるからある意味有情だといえよう。
「う、うわぁああああああ!!」
残った六人の内一人があまりのパニックに滅多打ちにアサルトライフルの引き金を引いているが、そんなものが通用するはずもなく。
「ぐぎゃっ!!」
「ぐあぁっ!?」
パニックになった味方に気を取られた一人を含めて続けざまに斬殺。残った四人は全滅を恐れたのか、それぞれ散り散りに散っていく。
だがそれを逃す程、俺は甘くない。
「抜刀法・参式――」
――絶空乱舞刃。
「かっ、は――」
気配は全て消え去った。他愛ない。
「……さて、もう一眠りするか」
恐らくさっきの銃声でラスト辺りが起きているかもしれないが、もう片付いたことだろうし問題ないだろう。
「ふぁあ、どっちに向かえばよかったか――」
「主様ぁ!!」
うーわ、予想以上に早かったわ。しかも姿を現わした時には既に毒針も用意してあったりとフル装備なんだが。
「ご無事でしたか!? 主様!」
『無事だから。大丈夫だから。というかお前が寝ている間に全て片付いたから』
「主様……私を守るために……!」
いやいや、そこは私達ということにしなさいよ。というかここぞとばかりに抱きつくな。
『時刻は……四時か。悪いが戻ってから三時間くらい寝かせてくれ。そこから移住作業を再開しよう』
「承知しました。では主様、折角ですから私の膝枕でお眠りください」
さっきまで俺の膝枕で寝ていた癖に、まるで最初からこっちだけ膝枕を受けるかのような言い方をしやがって。
『……そうする』
しかしその誘惑に抗えないというのが、俺の悲しき性なのだろう。
普段ラストとの共闘が多い主人公ですが、ある意味では足枷が無くなった次回の方が情け容赦なく強いかもしれません。
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