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第四節 旧知の窮地 6話目

「……うわぁっ!? はぁっ、はぁっ……」


 まだ日も明けないうちに勢いよく上半身を起こし、目を見開く。周囲を見回したが、家の窓から広がっているのは静かな森の光景だけ。

 もの凄い悪夢を見た気がする。宴会と称した恐ろしい何かが繰り広げられていたような、そんな夢を見た気がする。


「……なんだ、夢か――」


 ――と思ったが、現状を見る限りところがどっこいこれが現実ということになる。

 衣服の乱れはないものの、本当に何もなかったのか心配になってきた。


「……どうすればいいんだ」


 それにしても、寝転がっているご主人の膝を枕代わりにするとは、良い度胸をしているじゃないかラスト。寝顔は可愛いから起こすつもりはないが。


「んん……主様、ダメですわ……こんなところで、あぁん……」


 いやいや一体どんな夢を見ているんだよ。そして俺の腰にしがみついているせいで余生に危機感を覚えるわ。


「……それにしても、いつもこうしていると不思議に思うんだよなぁ」


 前作からこれまでずっと俺は腑に落ちないところが一つだけあった。それはあの管理人システマも含めて、ラストやリーニャ、ペルーダがあまりにも人間染み過ぎているという一点だ。

 あのホムンクルス達ですら自己犠牲の精神をもって提案をしたりと、普通であればそこまでの行動をするとは思えない。


「AIは人工の夢を見るか? ってか?」


 とある有名な小説みたいなことを呟いてしまったが、あくまでこれはゲームの世界、そして俺達プレイヤー以外は全て人工知能《AI》だと何度も運営側からの結論が出ている。

 だがどうしても、誰しもが不思議に思うくらいに彼らは感情豊かで、そして俺達含むプレイヤー側にすんなりと溶け込んでいる。


「……今ここで管理人を呼び出して問いただしたとしても、あいつは全てAIだって応えるだろうな」


 そしてそんなAIに会えたことひとつでも喜ぶ俺は、一体何なのだろうな。


「まっ、そんなことはどうでもいいか」


 どこまでいこうがラストはラストだ。他の何者にも代えられない。


「さて、もう一眠り――ッ!?」


 俺の探知スキルに引っかかったのは九つの気配。それは明らかに敵意をもって、殺意をもってうごめいている。


「……九人か。ここから近いのはリベレーター、だとすれば――」


 ――偵察部隊リコンか。この村の方へ真っ直ぐと向かってくる雰囲気ではなさそうだが、いずれはこの場所が見つかってしまうだろう。先に叩いておかなければ、面倒なことになる。


「……悪いな、ラスト」


 折角ぐっすりと眠っている彼女達を、起こすわけにはいかない。俺は枕代わりにステータスボードから野営用の布地を丸めたものをラストの頭の下に差し込むと、そのままゆっくりとその場を離れていった。



          ◆ ◆ ◆



 ――深夜未明。偵察部隊全員が暗視ゴーグルを装着して、辺りを念入りに探索クリアリングして回っている。

 一歩進んで、更に一歩進んでは各々の手になじむような改造が成された自動小銃アサルトライフルを構えて辺りを見回す。

 幸か不幸か、ラストが昼間に威嚇スキルを使ったせいで野生生物は一切見受けられない。その為か偵察部隊の面々も段々とではあるがクリアリングが雑になりつつあり、表情にも余裕がでてきている。

 ――それを見計らって、殺しにかかる奴がいるとも知らずに。


「よし、一気にこの森を抜け――ぎゃあっ!?」

「どうした!? ……ゲホッ、がほっ……ごろぁっ!」


 まずは一人。一振りで素っ首を斬り落とす。そして二人目は背後から喉を貫き、血を口いっぱいに溜めさせてから引き抜いて殺した。


「どうした!? 一体何が起こったんだ!?」


 返り血で赤くなった無線機トランシーバーを口元まで持っていき、俺は静かにこうささやいた。


「あと七人……」


 無線機からの反応などどうでもいい。宣言通りに殺す。

 今の俺は本当なら気分が良かった。だが、ラストもエルフ族も寝静まっている時に来たお前等が悪い。


「あいつらの安寧を邪魔するなら……皆殺しだ」

 エルフ族の酒はアブサンレベルがデフォルトで出てきます。(´・ω・)


 ここまでまた楽しんでいただけたのであれば、恐縮ですが評価等いただければ幸いです(作者の励みになります)。(・ω・´)

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