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第四節 旧知の窮地 5話目

 静かだった村が引っ越すということで騒がしくなっている中、俺とラスト、そしてリーニャとペルーダの四人で今後のことについて更に話を煮詰めることに。


「ここから別の森に引っ越すってもよぉ、あたし達の普段の生活はどうすりゃ良いんだ?」


 口寂しいのか樹液のよくでる木の小枝を口に挟みながら、ペルーダはもっともな疑問を俺にぶつけてくる。


「そりゃ、ジョージのいうことには何も反対するつもりはねぇし、あたしも最大限協力する。でもようやくここの狩りや野草取りになれてきたってのに、また生活を一から建て直すってのは現実に難しいんだよ」


 どうやらこの場所ですらも既に何度か転々とした末の場所のようで、ペルーダとしてはまた一から生活基盤を作る難しさのことについて意見したがっているようだ。


『ああ、分かってる。当面は俺が生活面全てを援助する。それと手先の器用なエルフ族の装備品、あれはそれなりの値段で売ることができる。そこで俺が仲介役になって外との交易もできるようにすれば、その後の生活も安定できるはずだ』


 無論、取引の中抜きをするつもりはない。外から食料なりも安定して供給できるパイプの確保さえできれば、彼女達は今よりも豊かに暮らすことができる筈だ。


『いきなり来ておいて突拍子も無いことかもしれないが、亜人の迫害の件については俺にもある意味では責任がある。だから――』

「んもう! そこまで自分を責めるなよジョージィ! ほんと、可愛いんだからよー!」


 だから折角真面目な話で纏めようとしているのにどうして我慢ができないんだこの金髪エルフは。


「……本当、来てくれただけでも嬉しいんだからよ。リーニャとか、ずっとあのマフラーをつけているんだぜ? 何回も洗濯して、汚れがとれなくなってもずっとつけててさ」

「ちょちょっとペルーダ! 恥ずかしいから!」

「な? なんかあたし達のところに来る時は毎回毎回しかめっ面だけどよ、たまには最後まで笑顔でいようぜ?」


 確かに毎回この村に来る時は、何かしらお互いに問題を解決するために来ていた。そもそも最初の出会いが味方の指揮官の失態による撤退戦でボロボロになったところを匿って貰ったわけだから、なんともいえないものだが。

 しかしだからこそ唯一命の恩人ともいえる彼女達を救いたいというのが、俺の心のそこからの本心だ。


『……ああ。その為にも――』

「その為にも! 今日は一杯飲んで、明日になってから移住を開始しようぜ!」

「はぁ……?」



          ◆ ◆ ◆



「やべえ、頭がクラクラする……」

「なっはははは! ジョージってば一杯目でもうノックダウンってか!?」

「エルフ族と人間の強さを一緒にしたらダメだよペルーダ。さ、ジョージさん、私に捕まって。先に休みま――」

「それをこの私が許可するとでも思って!? 主様の介抱はこの私、ラストがきちんと最後まで行いますから!」


 なんで今回に限って俺の周りは酒豪揃いなんだよ……こりゃひっそりとポーション飲んで早めに復帰しないと、気がついたら全身剥かれた挙げ句に認知フラグが立っている結果になりかねない。というより早速ラストが動き出そうとしていたのがマジで恐怖だ。


『と、とnyかく俺っhはもう飲まにぇえkらなあ……』


 タ、タイピングまで怪しくなってきたぞ……これ、マジでヤバい。

 意識がある内にポーションを、って――


「――これは……何だ?」

「何って、酔い覚ましのポーションだよ」


 いや、明らかにスリのスキルで酒にすり替わっているようにしか見えないぞリーニャ。しかもエルフ族の酒だから度数が高すぎてステータス異常が上書きされてしまう。


「わ、悪いが流石に――」

「じゃーあたしが口移しで飲ませてやろうかぁ?」


 ペルーダがケラケラと笑っているが、目がマジだ。


「い、いや――」

「だ、だったら私がしてもいいけど!?」


 お前も酔った勢いか何か知らないが顔を真っ赤にして言うんじゃないぞリーニャ!


「ダーメ。主様の唇は私だけのものだから」


 ああ、こいつは通常運転だわ。酔ってる酔ってない関係ないわ。


「頭痛ぇし……もう、ダメ――」


 ここで俺の意識が一旦途切れてしまったが、その後村全体で盛り上がった宴会の末に俺の身に何が起こったのか、想像などしたくなかった。

 エルフ族のリーニャとペルーダのフルネームですが、それぞれリーニャ=エルエルベ、ペルーダ=ニュルベルデという名前だとか。(´・ω・)


 ここまでまた楽しんでいただけたのであれば、恐縮ですが評価等いただければ幸いです(作者の励みになります)。(・ω・´)

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