第四節 旧知の窮地 4話目
『ひとまず村の皆に移住の準備をして貰う』
「いきなりな話だねそれは」
『大丈夫だ、移住先に目星はつけているし、その土地は俺が買い占める予定だから誰にも手は出させない』
ガレリア近くの農村――その更に近くに、ちょっとした森がある。土地全てを買い占めたとしても痛手にはならないし、いざという時には行き来も一時間かからない程度の移動で済むから、利便性も悪くない。
『全部で十七人……他のエルフ達は?』
「例の排斥で散り散りになって、あと一人入れてこれだけ」
最後に会った時は確か男の姿もあったと思うが、今いるのは女だけ。そしてそれを守っているのがリーニャともう一人なのだという。
『大丈夫だ。お前達を保護するだけの資金は捨てる程ある』
だからといって本当に捨てたらただの馬鹿だが。少なくとも彼女達の身の安全は絶対に守る自信はある。
「ありがとうジョージさん。それじゃ、今から皆に話して準備をさせようと思います。いつ出発にするんですか?」
『そうだな……ラスト』
「はい」
『全員を【転送】で一気に村近くまで転送できるか?』
「お安いご用ですわ」
【転送】が可能とあらば明日にでも移動を済ませておきたい。
『出発は明日にでも行う。後はそのもう一人が帰ってくるのを待たなければ――』
「まさか、ジョージ!?」
……その声は、まさか――
「会いたかったぜジョージィ!!」
――気がついた時には遅かった。俺の死角から飛び付き、頬に舌を這わせてそのままぺろりと俺の耳を舐めてくる金髪もふもふ髪のエルフが、俺にとって通算三回目の押し倒しを敢行する。
「百年ぶりじゃん! くたばってなかったのかよ!」
『あー……誰かこいつを離してくれ』
久々にペルーダというエルフの洗礼を受けた俺は、顔によだれをつけたまま誰かの(主にリーニャの)助けを呼ばざるを得なかった。
「こ、の、相変わらずの金髪無礼野郎めが!!」
「ん? なんだよお前ももれなくおまけでついてきてるのかよ」
そしてここはここでまた火花が散っているのであるが……まあ、もう突っ込むのはやめにしよう。
もう一人の問題児は次回登場予定です。
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