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第三節 荒れ地の王 4話目

「むぅ!? その特徴的な声はまさか!? ジョージ殿か!?」

『やっぱりあんただったか、グスタフさん』

「グスタフぅ……? ああ、あの筋肉髭だるまでしたか」


 やはり十年経てば変わる部分もあるのだろう、初老も過ぎてきたのか髪に白髪が混ざってきている。顔つきも僅かにしわが増えたような、まさに歴戦の老兵と呼ぶに相応しい姿の男がそこに立っている。

 しかしその中でも変わらないものもある。相変わらずの筋肉質の肉体に、濃い髭。そして背中に背負うは巨大な戦斧“ゴウライ”。一振りで雷を招き嵐を呼び起こすと揶揄される武器だ。

 “吹き荒ぶ暴風”、“百戦錬磨の荒れ地の主”――それらの異名を冠する戦士ウォリアー、それがグスタフという男だ。


『まさかまた会えるなんて思っていなかったですよ』

「それがしも、ジョージ殿とこんなところで再開するとは……」

「あ・る・じ・さ・ま!」


 一体何だというんだラスト。ちょっと昔話に花を咲かせようとしているだけなのに、そんなに強く俺にひっつかなくても……。


「こんなところでのんびりしていてはいけません! 例の作戦についてお伝えしないと!」

『お、おお……そうだったな』

「むっ? 作戦とは?」

『後で話すとしよう。それと、ベヨシュタット側も音響石を手配されているんですか?』

「ああ。全員集めるのか?」

『勿論。時間は残っていない、急いで対策を立てなければ――』



          ◆ ◆ ◆



『これで全員か?』

「いや、被害を受けた連中の離脱や、抹消された人間プレイヤーもいる。だから最初の時よりも人数は減っている」


 できる限り森側近くまで退くことで時間稼ぎをしつつ、現在の状況を皆と共有する。全体の代表指揮は一番レベルが高い俺が取らせて貰えることとなったが、現状を打開するのは中々に困難なものだった。


「まさか刀王がこちら側にいたとは……」

「こりゃ勝ち目も見えてきたかも!」

『俺のことはどうでもいい。それよりも音響石サウンドストーンで聞いた限りだと、敵側も横隊で進軍するために集まっているという話だ』


 側面につこうにもどこから横隊で攻めてくるかまでは分からない。皆の前に出した敵の音響石から時々であるが全体命令が聞こえてくるが、敵側も被害が出ていることを考慮しているのか、はたまた元々から盗聴を警戒しているのか、場所などについては暗号で喋っている。


「この二二○○ってのは恐らく二十二時、つまり夜の十時だ。俺は前作でキャストラインについていたから、これが時間を指しているってのは分かる」

「アルファ、ブラボー、チャーリーとかは全て小隊の割り振り、フォネティックコードだ。一番後ろのアルファベットでオスカー、つまりOまで聞こえたってことは最低でも敵は十五の部隊に分かれているって事だな」


 それぞれのアルファベットを(エー)(ビー)(シー)、とは言わずに、ALFA(アルファ)BRAVO(ブラボー)CHARLIE(チャーリー)と呼ぶことで、確実に頭文字を伝える手段を取っている。聞き慣れていない人間にはこれすらも暗号に聞こえるかもしれないが、前作のキャストラインという国を知っている人間にとっては慣れ親しんだ暗号コードだ。


『ちょっと待て。俺が倒した部隊にはRの文字、つまりROMEO(ロメオ)が割り振られていたぞ』

「そうだとしたら十八の部隊……ちょっと大規模なことになってきたぞ」


 一つの部隊当たりの人数を俺が遭遇した人数と同じ五人として、十八ならば九十人。たいするこちらは五十人を超える程度。数としては圧倒的に不利だ。


「ちょっと待て、向こうは援軍も呼んでいるって聞こえていたぞ!?」

「何だってんだよ! こっちは五十人しかいないのに!」

「こっちも援軍を呼べないのか!?」


 辺りがざわつき始め、一人の不安が全体に広がりつつある。


「こんなの勝てるはずがない! 撤退しよう!」

「そうだ! 立地的にも沼地は足を取られて不利だ! ここは森まで撤退して、再度遭遇戦を仕掛けよう!」


 この沼地を捨てて森へと撤退する――一番筋が通った判断だ。事実としてこちら側はこれまでグスタフさんが孤軍奮闘していたとしても、残りのメンツが被害を被っている。


『正直言って、俺も森まで撤退して遭遇戦に持ち込みたいんだが……グスタフさん、あんたが敢えて沼地で戦っている理由を聞きたい』


 俺が問いかけるが、グスタフさんは固く口を閉じたまま。しかし理由があるのなら教えて貰わなければ、俺も森で戦うことを決定しなければならない。


『一体理由は何なんだ?』

「……あの森には、エルフ族の隠れた小さな村があるんだ」


 エルフ族――人間プレイヤーは人間以外の種族にはなることができない。つまりエルフ族といった亜人の種族は、確定でNPCということになる。


「なんだ、NPCの村かよ。だったらどうでもいいじゃん」

「それな。巻き込んじまったらしょうがないけど――」

『それなら話は別だ。沼地で決着ケリをつける』

「えぇーっ!?」


 ……何事にも例外は存在する、ということだ。


『エルフ族を巻き込むのはまずい。ここで食い止める』

「食い止めるったってどうやってやるんだよ!? 俺達の方が圧倒的に不利なんだぞ!?」

「何人かは突撃部隊トルーパーだったり魔導師ソーサラーだったりもいるが――」

「悪いが技術者エンジニアがいるからって即興で何とかなるわけでもないからな」


 俺に応援を頼んだクロウも皮肉を言っているが、それはそうとしてやらなくては意味がない。


『心配するな。まだ策が無いということではない』


 これは俺とグスタフさんがもの凄くリスクを背負う作戦だが、成功すれば挟み撃ちができる。


『俺にその情報を流しちまったんだ、あんたにもその責任を取って貰わなくちゃな』

「元よりこのグスタフ、この戦場で暴れ回るつもりよ!!」


 さあ、もう一つの作戦について話を進めるとしようか――

 シロに続いて二人目の前作プレイヤー登場です。ここまでまた楽しんでいただけたのであれば、恐縮ですが評価等いただければ幸いです(作者の励みになります)。(・ω・´)


(追記)今更感が満載ですがざっくりとしたステータス表とか後書きに追記した方が面白いとかあれば感想などでご意見いただければ幸いです。

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