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第三節 荒れ地の王 3話目 Wasteland Hallucination

 相手の作戦は割れた。後はベヨシュタット側にいかにして伝えるかが肝になるが――


『クロウと連絡を取るのも手だが、ここが敵陣側だとすれば傍聴スキルが怖いからな……』


 傍聴スキル発動には二つの方法がある。一つは相手に開発した盗聴器をスリ渡すことで発動する傍聴術と、もう一つは広範囲における盗聴装置を設置することで、一帯の通信を全て拾い上げる方法。無論後者の方が器用さ(PRO)の数値が必要になってくるが、開発の成功さえすれば戦場の情報戦は握ったも同然になる。


『下っ端に音響石しか持たせていない時点で傍受装置は設置されていないと思うが……』


 そもそも個人的かどうかは知らないがクロウがメッセージで俺という応援を呼んだ時点で、ある程度の敵の装備や練度を測れているのかもしれないが、念には念を、だ。


「主様、私は何をすれば……」

『とりあえず探知魔法を展開しておけ。こっそりと移動を重ねた結果敵陣の真ん前にでてしまいましたなんて、洒落にならないからな』


 くすねた地図とコンパスを参考にする限り進む方向は分かっているが、死んでしまっては元も子もない。

『慎重に進む。後に続け』

「承知しました」


 常に周りの音、水面、空気を感じ取りながら、静かに進んでいく。

 周囲が静かになればなるほどゴドルナ鉱山の時とはまた違った、ピリピリとした戦場の緊張感が漂う。


『……伏せろ』

「えっ」

「いいから伏せろっ」


 キーボードで打つタイムラグすら勿体ない。俺はラストを引き寄せるようにして近くに寄せるが、ラストはそんなことよりも俺から貰った服が汚れてしまうことの方が気になってしまっている。


「折角の服が――んっ!?」


 声が大きすぎる。

 俺が手で口を塞いでいると、前方から殺気だった何かが更に近づいてくるのを肌で感じる。

 霧の中に影もなく、そして水面も一切動いていない。


『……探知スキルは?』

「引っかかりませんでした」

「まずいな……」


 侍職特有の殺気を感じ取る特殊探知スキルに引っかかったのはありがたいが、ラストの探知スキルに引っかからないとなると相当な実力者に違いない。

 そして相手もこちらに気がついたのか、接近するスピードが更に速くなっていく。


「――来るッ!!」

「もらったぁ!!」


 ザバァッ!! と音を立てて水面から姿を現わしたのは、泥を被った大男。大斧を両手で振り被り、兜割りを繰り出そうとしている。


「ッ!? 待て! こっちは援軍――」

「チェストぉおおおおおおおおおお!!」


 地鳴りとともに、水柱が打ち上がる。あまりある破壊力が沼地に亀裂を走らせ、大地を割っていく。


『ラスト!』

「私は大丈夫です、主様! それよりも敵の姿が――」

『ああ……確認したところだ』


 未だ収まらぬ揺れの中で、俺は近場の木の上に降り立ってその男を見下ろす。


「むぅん!? このグスタフの一撃を回避するとは、見事!!」

『そりゃそうだろうよ! 何せ“元”同僚なんだからな!!』

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