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第三節 荒れ地の王 2話目

今回繋ぎなので少々短いです。同日もう一話投稿予定です。

 昼間であるにも関わらずうっすらとかかる霧が視界を奪っていく。こうなった場合周りの動きを探るには、水の音に耳を澄ませなければならない。

 もし不用心にバシャバシャと足音を立てる者がいたのであれば、この地に住まう大型のワニにたちまち足を食いちぎられるだろう。辺りを見回す限り、そう考えることができる。

 更に泥に植わった木もぽつりぽつりと見えるばかりで似たような光景が広がり、下手すれば森よりも迷いがちになりそうだ。


「主様、折角のお召し物が……」

『静かにしていろ。まだ敵軍にも味方軍にも遭遇していないんだ』


 スピット湿地帯。名前だけは聞いたことがあったが、予想以上に遠距離職にとって有利としか思えない地形効果だ。このような近接職不遇の地で戦おうなど、どんな愚か者なのだろうか。


「面倒な野生生物もいるこの場所で戦うなど、一体どんな神経をしているんだそいつは……」


 モンスターの処理も敵の処理も、銃ならば簡単に処理できるだろう。本当に考えれば考える程に頭を悩ませる展開だ。


「……主様、お気をつけて」

『分かっている』


 それまですり足のように進めていた足を止めて、俺は足下の水面をじっと見つめる。

 小さな波が一つ二つ、三つ――明らかに前方から何者かが多数進軍している。


「…………」

「相手も馬鹿としか思えねぇよな。こんなに見通しが悪い場所まで追ってくるとはよ」

「静かにしろ。ここらはリベレーター側だから大丈夫だと思うが、流石に遭遇戦になったら近接職が有利だ」


 続いて剣士とは思えない特有の重装備の布がこすれる音と会話の声が聞こえてくる。内容からして今回の敵、リベレーターのものとみて間違いないだろう。できる限り姿勢を低くし、腰元の刀に手を添える。

 今回装備しているのは暗夜刀といって、レアリティレベルは他より下の73レベル。しかしこれを装備していれば、本来ならば僅かに聞こえる太刀音ですら消してくれるというユニークな機能がついた刀だ。


『銃声がなる前に、始末をつけなければ』


 念の為に泥を被ることで熱探知も回避できていると思うが……。


「……シィッ!」

「ん? 今何か音が――っ!?」


 抜刀法・参式――啼時雨なきしぐれ


「か……は……っ!」

「っ! 誰だっ!」


 抜刀法・弐式――双絶空そうぜっくう


「確かに遭遇戦だと近接は最強だな」


 最初の一閃で三人、続く後続を斬り捨てて俺は敵の死体を漁る。


「主様、ここは敵陣側の可能性が。念の為【空間歪曲エリアルディストーション】を――」

『駄目だ。エフェクトで余計に目立つ』


 それに……これは幸運というべきか。


『読み通り、リーダー格の男が熱探知ゴーグルを持っていた。これを逆に利用させて貰おう』


 更に音響石サウンドストーン。これは通信担当らしき男しか持っていないところから、他の部隊との連携を取るために使われていると推測できる。


「……トランシーバーは開発しなかったのか?」


 音響石よりも通信傍受されにくい筈だが……まあ、文明レベル的にも舐められているのだろう。


「ゴーグルと音響石はそのまま装備するとして、後は――」


 その時だった。

 それまで無音だった音響石から突然声が発せられ、リベレーター全軍への指示が響き渡る。


「リベレーター全軍に告ぐ! 我々はこれより横隊でもって敵軍を潰しにかかる。二二○○、各自事前に示し合わせた場所にて集合するように!」

「成る程、良いことを聞いた……」


 恐らくは遭遇戦を諦めたのだろう。これは側面から一気に潰すチャンス。しかし俺がこの小隊を潰してしまったことで敵軍も何かしらの考えを持っているはず。


「あるいはトップがNPCのせいで、こういった利用のされ方を想定していないかだが」


 いずれにしても、この情報を踏まえた上でベヨシュタット側に対策を伝えなければ。

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