第二節 新たな戦術魔物 1話目
ひとまず三人をどうするかの目処をたてることはできた。俺は家が建つまでの間、メンバーに事情を話して三人をそのままギルドの拠点へと預けると、レリアンの街を練り歩きながらその他の予定を進める事にした。
「ようやく再び二人きりになれましたね」
『まだやるべき事は山積みある。それを忘れるな』
本当ならばここ最近の働きをねぎらうこともしたかったが、グッと我慢。ここでラストのねだるような視線と目を合わせてはいけない。
「主様ぁ~」
「くっ……」
フードを目深にかぶりなおし、俺は目的の場所へと早足で向かう。
街には必ず一つはあるクエストを斡旋する掲示板。殆どが酒場と同じ場所にあるとされていて、その例に漏れずレリアンも街中にある酒場に掲示板が存在する。
『失礼』
酒場の扉を開き、中へと一歩足を踏み入れる。流石に真っ昼間から飲んでいる輩はあまりいないようで、プレイヤーらしき人物の姿も恐らくは見当たらない。
『プレイヤーの姿は無し……ベヨシュタットに所属するプレイヤーは殆どが首都で要件を済ませられるから仕方ない事だが』
前作にて首都の開発計画にシロさんも携わっていたおかげなのかそのせいなのか、ベヨシュタットに所属していたプレイヤーの多くが首都で生活することの利便性を味わってしまっている。
『シロさん曰くレリアンも開発しがいのある街だと言っていたが、この現状だぞ……ん?』
現状の厳しさに愚痴を吐きながら掲示板を眺めていると、興味深い一文が俺の目を強く引きつける。
「主様、これは……?」
『夜空を飛ぶ鴉の群れ、リーダーと思わしき大鴉の姿も……もしかしてこれは――』
俺が掲示板に貼られたクエスト概要の書かれた羊皮紙を手に取ろうとした矢先、まるで奪い取るかのように横から紙をかっさらい、そのままぐしゃぐしゃと握り潰す恐ろしい悪魔の姿が。
「エンヴィイイイイ……あの、死に損ないの○ッチがぁあああ……!」
『……と、とりあえず確認にいこう』
同じラストがここまで過剰な反応を示す以上、七つの大罪の一つである可能性があるのだろう。そして万が一そうだった場合、こちらの陣営に引き入れておかなければ。
『ラースがいない今、空いてる枠を埋めるチャンスといえばチャンスだが……』
「あの腐れビッ○、殺す殺す殺す殺す……!」
……色んな意味でシロさん連れて行った方がいいだろうな。ブレーキ役は多い方がいいだろう。
「なにやら騒がしいですねぇ……ああ、また一匹哀れな人間が肉になりに来たというのですか。やれやれ、仕方がないです。私が直々に捻りつぶして差し上げましょう」