第一節 メンター 1話目
シロさんとの会議を終えた後、俺は早速成すべきことを成すべくアジトを後にする。
『まずは人員集めか……本気で選抜を組めば俺達の時と同じ六人程度の少数精鋭で充分だろうが、こいつらにとってはそういう訳にはいかないだろうからな』
この世界の住人がどれほど頭が良いかは知らないが、少なくとも俺達のようなネットゲームらしい互いのスキルを織り込んだ連携は組むことができず、あくまでこの世界に見合った戦術しか考えることができないことは知っている。
『人数……頭数揃えるだけでも三桁は欲しいな。それと別枠でプレイヤーも数人は欲しいな』
プレイヤーが多過ぎても、ネットゲームにおいてはトラブルの元になりかねない。顎に手を当てて考えごとをしつつ、正面玄関から外へと出る。ここにも庭があるようだが、剣王の庭から少し株を拝借――分けて貰ってこっちに植えても良いかもしれないな。
そんなことを考えつつ表の方へと歩いていると、外で待機していたラストが俺の姿を見るなり何かに弾かれたかのように勢いよく俺の方へと向かってくる。
「主様! 随分とお待ちしたのですよ!」
『すまないラスト。シロさんと今後のギルドの方針について話し合いをしていたんだが、結構長引いてしまってな』
その理由の一つとして、このアジトの建て替えにかかった費用の折半の内訳だ。シロさんは多めに出してくれるといったが、俺はあくまで五分五分で折半をしておきたかった。
その理由としては至極単純で、シロさんの善意で出してくれているのは分かっているが、そのままそれに甘えてしまえばとんでもない金額を出させてしまう事になる。それ故に俺の方も半分は出すという形に落とし込んでおきたかった。
『後は……人員集めに向かうか』
前作と同じであれば、初心者が最初にシステマによって案内される大きな町がある。現実で言えばスイスのような、どこの国にも属さない永久中立を保つ特殊な町。
『今から“白き町”ストラードに行く。お前もついてくるか?』
「そんなこと言われずとも、分かっているでしょう?」
当然といわんばかりににっこりとして、ラストは俺の腕に自分の腕を絡ませる。
『それじゃ、行くか』
そうして俺が一歩足を踏み出そうとした瞬間――
「あーっと! 丁度いいや! ユーに一つ人助けをして貰おう!」
「うおっ!」
流石に日に二度も要請無く目の前に姿を現わされると、こっちも心臓が飛び出しそうになる。
『今度は何の用だ!?』
「いやいやちょっとね、なんていうか、序盤も序盤で詰んでるプレイヤーが三人いるから手助けしてきて欲しいかなーって思ってさ」
お前ついさっき管理人として肩入れできないって言ってなかったか!?
『ついさっきプレイヤーに肩入れできないとか言っていたくせに』
「いやいや、流石に最初の町にもたどり着けないんだよ? それを放置するのは可哀相すぎるでしょ」
聞いた話によれば初回ログインないしレベル1にリセットされたプレイヤーが最初にこの世界に降り立つフィールドである始まりの草原から、最初の町でもあるストラードにすらたどり着けずに死亡を繰り返している様子。
全く、そんな鈍くさい奴の面倒をどうして俺が見なければならないのか。
『だったらどうして俺に押しつける。他のやつでも問題ないだろうに』
「それは……うーんとね、ユーが一番ミーにとっては話しかけやすいプレイヤーだからかな!」
AIから話しかけられやすいと評されるとはこれいかに。とはいえここまで管理人からお願いされることも初めての自体なので、俺は仕方なく受けることに。
『分かった。だがそいつらが最初の町にたどり着くまでだ。それ以降はどうなろうが俺の知ったことでは無いからな』
「それでいいから! お願い! 運営からのクエストだと思ってさ!」
そう言ってシステマは俺のステータスボード上のメッセージ欄に無理矢理クエストという形で初心者プレイヤーの救済依頼をねじ込んでくる。
「ちょっとだけお駄賃つけておくから! よろしくネ! 今後導入予定のメンター制度とかのアップデートのテスターだと思ってサ!」
『言っておくが、本当に今回だけだからな』
予定外のクエストを組み込まれた俺は、ひとまず“白い町”ストラードを目指して旅を始めることとなった。
◆ ◆ ◆
「どうしようどうしよう! このままだと院長さんに怒られちゃうよー! ユズハちゃんねぇどうしよう!?」
「ごちゃごちゃうっせぇなアリサはよぉ! あたし達で何とかしていくしかねぇだろ! なあウタ!」
「全く……大丈夫よアリサ。いざとなったら院長さんが助けてくれるはず」
「なっはっはー! そんなことよりもさ、折角だから冒険しようぜ! こんな平原じゃなくて、危険地帯にさ!!」




