第六節 辿り着いた先にあるもの 2話目
『全く、こんなお粗末な作戦が通る訳が無いだろうに……』
「通る通らないではなく、通すのですよ。それができなければ、貴方も私も死亡して終わりですから」
確かにやり口を知っている人間からすればお粗末極まりない。しかしこの作戦を実際に実行まで移す人間がどれだけいるのか考えれば、上手く行く可能性が微粒子レベルで存在する……?
作戦の概要はトロイの木馬に類似したものだった。侵攻戦の結果攻めあぐねて撤退を強いられたものの、既にこの世界で名を売っているシロさんを捕縛できたというシナリオで敵陣の奥深くまで潜入、そこから一気にガレリアを治める領主を仕留める。
奇襲、暗殺といった形で速攻でガレリアの支配権を白紙に戻した後、外側から一気になだれ込んで掃討にかかるという雑な作戦だ。
正直シロさんの地力と俺やラストという有力な存在がいるからこそ、こんなデタラメな作戦を通すことができるともいえる。
「それで? ジョージさんはどうされます?」
『俺はラストと【遮断領域】ですぐ横を同伴しよう。下手に裏切られた時にも迅速に処分できるように』
ちなみにこの時既に俺はラストに犯られている訳だが、フードを深くかぶっていれば多少表情がぎこちないところとかやつれているところとかごまかせている……筈。
……ラストが妙に上機嫌にニコニコしているという違和感に気がつかなければ。
「主様と一緒に戦えるなら私は文句はありませんわ」
というわけでレリアン内部への潜入メンバーとしてシロさんと俺、そしてラストが選抜される。
「一応攻め側の大将がまだ生きていて、それで連れてくるわけだから説得力はありますかね。えーと、お名前は――」
「クロウだ。あくまでこのゲームでの名前だがな」
そういうとクロウはシロさんの手によって縄をほどかれて自由になると、諦めがついたのか大人しく俺達の作戦に加担をするために指摘点をいくつか上げ始める。
「撤退したにしても兵隊がいない上、更に戦車まで無くなったという状況はどう説明させるつもりだ」
「それならば確かカイが装甲車を一台鹵獲していたはずです」
「はっ。ナイフで車輪の部分を破壊して身動きをとれなくしてあります」
「履帯を外したのか。この程度ならば修理は簡単だ」
話を聞く限りでは移動手段に問題はなさそうだ。後は包囲網をしく為の人数だが、ドワーフ族が百人あまりと、主力級は残っているものの負傷して撤退した者もいるため三十人に減ったギルドメンバーだけ。いくらレベルが高いとはいえ今度こそ被害が出てもおかしくない。
「その辺でしたらご安心を。ちゃんと作戦は考えてあります」
『大丈夫なのか?』
「ええ、勿論。その為にドワーフ族にありったけの火薬を持たせて来ているのですから」
……なんとなくだが、嫌な予感がしてきた。
『これ、下手したら外より中の方が危険じゃないか……?』




