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第五節 援軍到来 4話目

「まだか!? まだか!? まだか!?」

「キョウ、落ち着いて」


 引き金の軽い拳銃のごとく今にも飛び出しそうなキョウをチェイスが何とか抑えている中、俺は好機を見極める。

 乱戦というよりも真っ向からの、数と数とのぶつかり合い。こうなった場合は敵としてもあまり気を散らさずに、正面だけを意識できる。当然それだけに側面への配慮の余裕もまだ残されているから、ここで少人数で突っ込んだとしても、成功するかどうかは疑問だ。


「…………」

「ジョージさま?」

「大将! 俺もう我慢できねぇよ!」

『分かった。俺が先に出る』


 こうなったら誰かがまず一人、攪乱させるために突っ込むのが一番だ。


『お前達は隙を見て戦車を狙え。ただし側面からではなく、背後からだ』

「分かった」

「よっしゃあ!! このキョウ・リクガミがやってやるぜぇ!!」


 もう大声を出されようが構わない。縮地で敵陣を真横から切り裂き、分断をはかるのみ。


「抜刀法・弐式――」


 草むらが揺れる。敵も気がついただろう。黒い影が、草原に紛れていることを。

 だがもう遅い。


「――閃烈断せんれつだん!!」


 突如として真っ二つに裂け、大口を開ける大地。たった一太刀で軍団を横から前後に分断することで、俺は戦車をそれ以上前へと進軍させないようにする。


「なんだ一体!? 突然地割れが起きたぞ!?」

「なんてこった! 何人か落ちてったぞ!」


 前後共に混乱が起きている隙に、俺は音響石サウンドストーンでユンガーに連絡を取る。


『敵陣の後ろに大穴を空けてやった。お前達はそのまま前に進んで、穴の底へと追い込んでやれ』

「大穴……ッ!? 承知しました!」


 音響石をしまい終えると、俺はそのまま分断された後ろの軍の前に立ち、自ら背水の陣を敷くような形で戦車と相対する。


『さて、伏兵だ』

「くっ……! まさか、あいつは!?」

「黒いフードに腰に挿げてる刀……なんてこった、蒼侍じゃねぇか!? クソッ! だから斥候の奴ら帰ってきてなかったのかよ!」


 蒼侍、これまた懐かしい異名が聞こえたな。まあ当然ながら引継ぎ組にとってはいやという程俺の名前は知れ渡っているようで何より。


「こうなったら前線を切り離して撤退だけでも――」

「敵将ぉおおおおおおおおお!! 討ち取らせてもらうぅあああああああああああ!!!」

「なんだ!?」

「来たか。抜刀法・壱式――」


 まるで咆吼のようにも思えるキョウの叫び。そして当然ながら敵は背後へと気を取られ、俺はその一瞬を見逃さずに挟み撃ちで腰元に手を添えて敵陣へと踏み入る。


「ばぁっとぉほぉう!! 壱式ぃ!!」


「――牙導裂罅がどうれっか!!」

鉄壊てっかいぃ!!」


 前からは刀の刺突による真っ直ぐな突進。背後からは戦車の砲台を一撃で叩き斬る強烈な斬撃。突進によってはね飛ばされ、奈落へと落ちていく随伴兵が最後に見たのは、切り札でもある戦車が一撃のもとに機能不全へと陥った瞬間だった。


「っしぁあ!! 大将首は貰ったぁ!!」


 そのまま戦車のハッチをこじ開けようとするキョウであったが、流石にそこまでは残りの兵が許さない。


「あ、あの男を殺せ! 蒼侍は後だ! 大将をやられちゃこの戦いも終わり――」

「サイス・サイズ――“死神の大鎌(デスサイズ)


 キョウを引きずり下ろそうと敵が戦車に群がったその瞬間――巨大な鎌が兵を薙ぎ倒して一掃していく。


「指一本、触れさせない」

「なんだなんだ!? こんな奴等、蒼侍のギルドにはいなかったはずだぞ!?」


 こいつら続編ってことで百年経っていることを理解できているのか? とはいってもチェイスの使う攻撃範囲変化技には俺も初見は驚いたが。


「クソッ! こいつら一体何だってんだ!!」

「俺達か!? 俺達は“殲滅し引き裂く剱ブレード・オブ・アニヒレーション”だ!!」


 このタイミングで名乗り出るか……まあ、決着がついた後にギルドとして敵に名を売るのはタイミングとして悪くない。いずれ噂話は味方へと返ってくる。


「なんてこった、あのギルドはまだ有力なままだったのか!?」

「兵長!! 撤退を! 撤退を!!」

「やかましい!! うるさい! 聞こえておるわぁ!!」


 キョウが開けるまでもなく、バァンという音と共にハッチが宙へと打ち上げられる。


「こういう時の為に俺達は秘密兵器を開発しただろうが!!」


 中から出てきたのは、他の兵士と同じヘルメットをつけたゴーグルの男だった。男の視線はゴーグル越しには見えないものの、確実に俺達の姿を一瞥した上で自信満々で言葉を続ける。


「出てこい! 我がしもべ達よ!」


 次の瞬間――


「オゥ!!」

「とぉぁ!!」


 装甲車の前面装甲が、内部から吹き飛ばされる。飛んでいく鉄板に何人かが巻き込まれて死亡(ロスト)していったが、ゴーグルの男はそれがどうしたと眉一つ動かすことなく、鉄板が巻き起こした土煙が晴れるのを待っている。


「どうやらわたし達の出番のようですな、兄貴!」

「オデ、コイツラ、ツブス…オデ、メシ、モラウ……」

「ああ。思いっきり暴れてこい。ここで勝てば晩飯は豪華だぞ」

「こいつらは……!?」


 今度は俺達の方が驚かされる番だった。鉄板をパンチ一つで吹き飛ばし、その姿勢のまま立っている大男。その姿はまるでフランケンシュタインを彷彿とさせている。

 そしてもう一人、同じく鉄板を蹴破ってでてきたのは、薄手の布きれ(ワンピース)一枚だけを身に纏っているという、まさに究極の軽装備の少女。

 ……どちらも頭にラジコンのアンテナらしきものが一本突き刺さっている。


「いってこい、我がホムンクルス達! 試作ゼロ号!! 一号!!」


 あるあるだよな。初回の名前が適当なのって。しかしながらその実力は本物の様子。


「試作一号、今から兄貴の敵を叩きのめすです!」

「ゼロゴウ、オデ、ツヨイヨ……!」

筋力(STR)だけは一丁前ってか?』


 ここにきてホムンクルスなど、敵もまた随分と新要素を使いこなしているようだな。

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