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第五節 援軍到来 3話目

「全軍前に進め!! 装甲車部隊は随伴歩兵にしっかりと両脇を固めさせろ!! 一切の隙を許すな!!」

「第一から第三部隊までは正面を抜け! 第四、第五はそれぞれ側面から潰しにかかれ! 一気に包囲して終戦へと向かわせるぞ!」

『まずいな……思ったより数が多過ぎる』


 平原の中でも背の高い草むらに身を隠していると、周囲を包囲できる程の戦力を用意しているという想定外の情報を耳にする。しかも装甲車も各部隊に一台ずつ、更に軍の大将らしき人物が乗っているであろう車両……あれ、戦車かよ。


『拠点から見る限りだと人の数が多いことは予想できたが、まさか装甲車四台に戦車とはな』

「ジョージさま、厳しい?」


 厳しいか厳しくないかでいうと厳しい。が、まだ勝ち目はある。


『幸いにもこっちにはまだラストがいる。随伴歩兵のうちの何人かをこちら側に堕とすことができれば混乱を招くことができる』


 後はその隙にどれだけ戦車に近づくことができるかだが……。


『……キョウ』

「俺か!?」

『大声を出すな』


 自分に何か役割を振られることを期待しての大声だろうが、隠密活動をする時にその声は要らない。


『俺が今からこの戦車隊を正面から叩く。その隙に側面から戦車まで一気に近づいて破壊しろ。……確認だが、壱式・鉄壊てっかいは使えるか?』

「ムッ、いくら俺が馬鹿だからって抜刀法が使えないわけじゃないぞ!」

『だから静かにしろといっているだろ』

「す、すまん……俺、昔から声がでかいから」


 どうせ後でいくらでも出して貰うことになるから今は我慢しろ。それよりも鉄壊が使えるのであればあの程度の戦車はどうということはないだろう。盾を破壊するのに使える技はそのまま装甲破壊にも使えるからな。


『チェイスはキョウの援護に回れ。周囲の敵を刈り殺せ』

「分かった」


 さてまずは真っ正面からの衝突だが、双眼鏡でしばらくは様子をうかがわせて貰おう。


「敵軍散開! 正面と左右か攻めてくるぞ! 正面は私が引き受けよう! カイは右の敵の相手を! 残りのメンバーはそれぞれ各場所の指示を仰げ!」

「ならば私も左を任されよう!」


 遂に敵との衝突隣、ユンガーはギルドのメンバーに対してそれぞれ指示を出して軍を動かしている。そしてティスタもそれを手伝うように自ら買って出ており、防衛の準備は整ってきている。


「ユンガーの指示はあまり聞きたくないが……仕方ないな」


 カイはそうしてベストをパチッと整えると両手にナイフをそれぞれ多数召喚し、大軍を前に堂々と立ち塞がる。


「さて、ここから先はこのカイ・ハーロウを倒してからにして貰おうか」

「なんだこのガキ! 一人でこの第四部隊を相手にするつもりか!?」


 当然ながらカイの後ろには他のギルドメンバーも控えており、魔道士ウィザード射手アーチャーは壁の上や遮蔽物の影に潜んでいるのは間違いない。しかしそれらを差し置いて一歩前へと出ているのは間違いなくカイ・ハーロウただ一人。


「……チッ!」


 左手にあるうちの一本のナイフが、それでも進軍をしようとする第四部隊の足元の地面に突き刺さる。


「俺は“殲滅し引き裂く剱ブレード・オブ・アニヒレーション”の中でも親切な方だから警告してやろう。そこから一歩でも前に進んだら…………殺す」


 随分と自信満々なようだが、本当に大丈夫なのか? そう思っていると案の定、敵は警告を無視して装甲車でナイフを押しつぶして真っ直ぐに進軍を再開した。

 その瞬間――


「――警告はした」

「がっ……!?」

「ごはっ……!?」

「いびゅの、まに……!?」


 どうやら俺の思い過ごしだったようだ。というよりも俺だからはたき落とせたのであって、やはり普通の二桁レベルのプレイヤーやNPCにとってはじゅうぶんに速過ぎる投擲だったようだ。

 ……というよりも、同時に八本投げては召喚術で即座に補充、また投擲ともなれば大型散弾銃を常にぶっ放している状態といっても過言ではないだろう。

 そしてその援護をするかのように、射手や魔道士が遠距離から攻撃を仕掛けている。


「遠距離職だけこちらに残れ! 後は反対側の二代目刀王の援護に向かえ!!」


 カイの指示の通り、それまで待機していた剣士フェンサーは全てティスタの援護へと向かうことに。

 そしてティスタはというと――


「抜刀法・参式――絶空乱舞刃ぜっくうらんぶじん!!」


 ――何の問題もなさそうだ。裂牙烈風ざがれっぷうよりも広い範囲攻撃を放ちながら、単騎敵陣ど真ん中を真っ直ぐに突き進んでいる。


「止まらねぇぞあの青髪の女!」

「刀王……じゃないよな!? おかしいだろこの強さ!」

「私は、二代目刀王だ!!」


 ここで名乗ってしまって早めに敵に名を知られるのはあまり良くない気が……まあ、討ち漏らしもなく全員斬り捨てれば問題ないだろう。

 前衛は……言わずもがな、一番激しい乱戦状態でありながら、ユンガーが軍を率いて真っ正面からかち合っている。


「この私を、舐めるなぁあああああッ!!」


 サーベル一本で装甲車周りの護衛を蹴散らしつつ、後続の魔導士が装甲車に直にダメージを与える隙を作っている辺り、それなりに戦いなれているようだ。この分だと援護の必要はないだろう。


「あらあら、全員頑張っているようね」


 俺からすればお前がサボっている様子も丸見えだぞ、ラスト。


「……あっ、主様……」

「ようやく気がついたか、馬鹿め」


 思わず素で愚痴を吐いてしまったが、そんな俺の様子を失望と取ってしまったのかラストは焦った様子で正面前線へとかけより得意の魔法を展開する。


「殺す! 殺す殺す殺す!! 【刺突心崩塵ハートキルスティンガー】ッ!!」

「ぐぉおおおおあああっ!?」

「な、何じゃこ――ぐはぁっ!?」

「くっ、やはり私と戦った時は手を抜いていたか……!」


 勢いよくばらまかれる死の棘が敵陣へと降り注ぎ、一瞬にして前線が崩壊する。


「なんだあの戦術魔物(TM)は!?」

「まさかあいつは前作における七つの大罪(セブンス・シン)、ラストじゃないか!?」

「聞いてないぞそんなの! こんなの反則だ!!」


 そりゃまあ高々二桁レベル同士の戦いにレベル150が参戦すればこうなりますわな。敵ながらご愁傷様。


「まったく、動けるなら最初から動いておけばいいものを……『さて、そろそろ動くぞ』」

「っしゃあ!! 一番のりはこのキョウ・リクガミじゃああああ!!」

「キョウ! 待って!」


 ……こっちはこっちで、問題児が一人いるのは頭が痛いな。

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