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引退していたVRMMOの続編が出るらしいので、俺は最強の“元”刀王として、データを引き継いで復帰することになりました  作者: ふくあき
反逆の序章 ~オーヴァチュア~ 

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第四節 ヴァンパイア 2話目 Disused Skill

「そしてこれがその答え」

「ッ!? これは一体!?」


 ティスタにとってはとても驚くべきものであっただろう。だが前作でのワノクニの戦い方を知っている俺にとっては、予想の範疇に値する。


「ぐはぁっ!!」

「ぎゃあっ!」

「一体何が起きている!?」


 いつの間に背後を取られていたのか、辺りを見回すと黒装束の敵に次々と背後から心臓を貫かれて死んでいく兵士(NPC)の姿が。


『……違う、影だ! 奴らは既に、影に忍び込まれていたんだ!』


 ついさっき来たばかりの俺達の影には潜り込まれていなかったようだが、それでも被害は甚大だ。だがここで敗北とステータスボードに判定が下っていないということは、まだ拠点兵長は死んでいない。勝ち目はまだ残っている。


『そういえばシロさんは!?』

「シロ? まさかあの男も? 偵察隊の話だと姿は無かったらしいけど」


 シロさんがいない? だとしたらこのメッセージはなんだ?


『くっ、いなくてもやるしかないか!』


 考えは後だ。あの人が懸念していたのは恐らくこの暗殺者集団。暗殺が不可能となった今、目の前にいる女と同様に一時的に影に潜むスキルを使って、四方八方から攻め立てることを予備のプランとして考えてあったようだ。


『二段階に準備していたとは、用意周到な作戦だな……!』

「師匠! こっちもプランBを!」


 はぁ!?


「ねぇよそんなもの!」


 しかしながらNPCのみの軍隊とは違う、プレイヤーがいるからこその仕込みのある戦法。

 引継ぎ組なら相手にとって不足なし。俺も本気で戦う意味がある。


「師匠! 味方は――」

『諦めろ! 相手も直接トップを取りに来ているんだ。これ以上被害が広がる前に、こっちも先にトップを仕留めなければ!』


 どのみち暗殺成功ともなればほぼクリティカル確定。つまるところよほどのことが無い限り即死。それよりも目の前のリーダー格の女を倒せばこっちの防衛成功になる筈。


「抜刀法・弐式――絶空ッ!!」

「ロルカ様! ぐはぁっ!!」


 飛び道具で仕留めようとしたが、敵の一人が自ら肉盾となって目の前で真っ二つにされていく。


『……一体どんな教育をしてるんだ?』

「うーん、そうねえ……主だけは絶対に死なせないっていう忠誠心かしら?」


 成る程、洗脳に近い教育か。ワノクニらしい戦い方だ。おっと、今は確かアシャドールとかいう国名だったか?


『……だ、そうだがラスト』

「あらあら、随分と薄っぺらい忠誠心ですこと」


 そうして俺は一番忠誠心の高い戦術魔物に語りかけると、既に事は済ませているとでもいわんばかりにラストの方は不敵に嗤っている。


「その忠誠心と、私の【魅了チャーム】とはどっちが上なのかしらぁー?」


 前作にて彼女と戦った時に一番厄介のが、強烈な魅了魔法チャームだった。

 ――敵を魅了することで同士討ちを狙い、それを見て楽しむのが一番の快楽なのだと、かつてのラストは俺に聞かせてくれた。

 そして今、再び同じ事が起きようとしている。


「なっ……!? 貴方達、何をしているの!?」

「私はラスト様に、絶対の忠誠を誓う……!」


 それまでベヨシュタットの兵士を殺し回っていた敵軍の一部が寝返り、恍惚の表情で今度は同士討ちで殺し合いを始めている。


「何をやっているの貴方達! 目を覚ましなさい!!」

『無駄だ。まともに目を合わせてウインクや投げキッスの一つでも貰えば最後、二度と解除されることはない』


 まさに色欲を司る魔性の女。俺もこうしてタイラントコートが手に入るまでは、ラストのいる幻獄最深層・ミラージュには一歩も足を踏み入れなかったわけだし、その時組んでいたシロさんも、僅かに見られる足下と発せられる声や効果音だけでラストの攻撃に無理矢理対処していた位だし……やっぱあの人おかしいわ。


「さて、半分くらいは減ったかしらぁ?」

『今洗脳している者も始末しておけ』

「承知しました。では……【恋慕崩壊ハートブレイク】」

「ラスト様――ぐはぁっ!!」

「ガハァッ!?」

「ラスト様ばんざーい!! ぼげぁっ!!」


 彼女が右手をキュッと可愛らしく握りしめれば、魅了された者が血を吐いて次々と倒れだす。これが魅了した相手限定の即死魔法、【恋慕崩壊ハートブレイク】だ。言葉の通り心臓を握りつぶされる形で破壊され、一撃死となる。彼女が七つの大罪セブンス・シンたる所以のぶっ壊れ魔法だ。


『さて、残りはお前だけだがどうする?』


 正直にいうと、こういう乱戦の時のラスト程頼りがいのある者はいない。敵に魅了をかけて味方に引き込み、数で巻き返して勝利を収める。そして残った強者とのPVPで俺が勝てば文句なしだ。

 たった二手で状況をひっくり返された黒服の女は、戦況が一気に負けに近いものへと傾いたことを悟ると、何故かニヤリと笑いだす。


『……何が可笑しい?』

「別に一度で勝てなくても問題は無いと判断しただけ。そしてほぼ撤退を選択させられている今だからこそ、最後の悪あがきができる。立つ鳥跡を濁しまくれるってこと」


 女は登場した時と同様に黒い渦に巻かれてそのまま影へと消えていく。


『逃がすな、追え、ラスト。追って確実に捕まえるか、仕留めてこい』

「主様の方はどうされますか?」

『俺か? 俺は――』


 直後に防護壁を吹き飛ばす爆風と共に、マシンバラもといテクニカの巨大装甲車が一台と、複数の追加の兵士が乗り込んでくる。


『俺は今からこいつらを始末する。後に続け、ティスタ』

「はっ! 師匠の言うとおりに!」

「むぅうううう! 主様ぁ~」


 俺と離れたくないのかラストがごねだしたので、またしてもラストとは急な約束を取り付けることに。


『分かった分かった、この戦いが終わったらご褒美をやるから』

「ご褒美ですか!? きゃー! 期待しておかないと!!」


 うん、そこまでとんでもない要求が通るわけが無いはずだが。


「今すぐあの女を串刺しにしなきゃ!」

『言葉が物騒すぎてドン引きだな……』


 後が怖いがまずは目の前の相手。テクニカの軍勢の割り込みに、まずは対処しなければならない。


「プランB! ――といきたいところだが、既に相当数やられているようだな。投降するなら命だけは助けてやろう!」


 目の前に広がる被害状況を前に、拡声器越しの音声は高らかに勝利を宣言している。

 気に入らない。まだ俺が残っている。“殲滅し引き裂く剱ブレード・オブ・アニヒレーション”が、刀王が残っている。

 俺は静かに柄に手を添え、敵を前に臨戦態勢を取る。


『その言葉、後でそっくりそのまま帰ってくることになるぞ』

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