第三節 曲者ぞろい 5話目
今回繋ぎの回のため短めです。
「一度ならず二度までも、本当に助かりましたぁ」
そう思うんだったらいい加減危険地帯を一人で歩くのを止めたらどうなんだと小一時間問い詰めたい。
そんな俺の心配をよそにして、マルタは走りすぎて乱れていた息を整えるために両膝に手を乗せて肩で呼吸をしている。
『しかし本当に、何故わざわざ危険地帯ばかりを歩くんだ? 今回も前回も、俺や他の冒険者が通りかからなかったら死んでいたぞ?』
「それはそうですけど、行商人としては近道を通った方が――」
「主様の忠告を無視しようというのか。ならば今すぐにでもこの場で聞かなかった場合と同じ結末に仕立て上げてやろう」
ついさっきまで機嫌も悪くなかった彼女の右手に、再び毒針が姿を現わす。ラストもマルタのトラブル体質にはイライラしているようで、先程の男の時よりも更に好戦的な態度を取っている。
「主様、やはりこの虫ケラは死なねば分からぬとしか思えません」
馬鹿は死ななきゃ直らないというが、マルタに限っては死なせるのはもったいない。
『助けた命をこっちで潰してどうする。それよりもこいつも連れて帰ろう』
「なっ、何故でこのような者を!?」
何故って、この前のテクナッチ港で分かれてからこの辺を歩いているということは、首都を目指していると推理ができるからだ。
『今から首都へとラストの転送魔法で飛ぼうと思う。お前も着いてくるか?』
「いいんですか!?」
やはり目を輝かせている辺り、目的地は首都ベヨシュタット。荷物の大半もここで売りさばく予定の筈。
彼女が売り物している物品はいずれも高品質で悪くない。ここで行商人として物を売っている間に、彼女をギルドの物品仕入れ先として確保する考えを企てる考えが頭に浮かんでいる。
行商人は転々としている以上、一カ所に止まることはできない。しかしながら転々として鍛えられた審美眼は、定点の商店を持つようになっても商品の品揃えの面で役に立つはずだ。
『ということでラスト、済まないが一人追加だ』
「全く、主様も人が良すぎるのですから……」
溜息をつきながらも魔方陣を展開してくれている。あとで褒めてやらねば。
『人員はまだ選別が済んでいないがそれなりにいる。物資は調達先をもう少しで確保できる。あとは目標を決めて仕掛けるだけだ』
「主様、一体何をお考えで?」
なーに、先日に続いてギルドの名声を上げるための下準備だ。
明日(10/26)は諸事情により更新が難しいため、次回更新は10/27の予定となります。