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第二節 久しく見ぬもの 6話目

「あのお方の邪魔をするなら……殺す!」

『……まあ、実力を見るという意味でも少し遊んでやるか』


 殺意を持ってくれるくらいが、本気の力を測るには丁度いいだろうし――っと。


ッ!!」


 バックステップと同時に四本のナイフが俺に向けて飛んでくる。刺突メインかと思えば投げナイフか、妥当だな。長物を持つこちらの方が攻撃範囲が広いことは勿論、ナイフだと鍔競り合いに持ち込まれた時点で力負けするのは明らかだからな。


『だが八本のナイフだけで投擲をやるのは無策……恐らくは――』

「【召喚サモン】!」


 ――だろうな。召喚術でいくらでも呼び出せるということは、魔法剣士マジックナイトがこいつの職業か。


「懐かしいな……」


 うちにも以前一人いたな。生意気な魔法剣士マジックナイトが。あの時は確か高校生だったが、十年たった今、恐らくどこかで真面目に働いているのだろう。


「っ、戦いに集中もできないのか貴様は!!」


 どうやら俺が思い返しながら軽くナイフをいなしているところを舐めプと受け取られたようで、ムキになって更にナイフの投擲数を増やし、その合間を縫って自らも前に出てくるようになった。


『なんだ、折角距離をとれたのにわざわざ突っ込んでくるのか』

「貴様のようなヤツは、俺が直接の度を掻き切ってやる!!」


 そうして意気揚々と突っ込んでくるのは良いが、さっきから余裕を持ってナイフを打ち落とされていることを頭に入れておかないと――


『――こうなる』

「あっ!?」


 二桁いかない数の投擲程度なら容易に叩き落とせるくらい見切っているのだから、手足があって可動範囲に限界のある人間の動きなど予想するのは容易い話。後はそれに合わせて刀を振るえば、簡単に相手の持つ得物をはたき落とすことができる。


「俺のナイフが……!?」

『あのまま遠距離でもう少し粘っていれば、隙の一つでも作れたかもしれないな』


 実際は器用さ(PRO)を上げている俺にとっては朝飯前の所業でしかないが。過去にガトリングの弾を全部打ち落としたこともあるのだから、この程度の速度が見切れぬはずがない。


「そんな……」


 負けを認めたのかその場に膝をつくカイを前に、悠々と刀を鞘に収める。すると遠くからパチパチと拍手の音とともに、俺が会いたかった存在が向こうから会いに来てくれている。


「お久しぶりですね。相変わらずの黒いフード付きコート、一目で分かりました」

『だったら止めたらどうなんだ? 高みの見物をしていたようだが』

「いえ、もし偽物だったらそのままカイに始末して貰おうと思いまして」


 相変わらず合理的なのか非情なのかよく分からない論調を展開する男だ。


「とはいえ、お会いできて嬉しいですよ」

『まあな』


 白と黒、互いに相反する存在でありながら、剣王の下に一丸となって戦っていた最強の三人のうち、二人が揃う。


『これで例の最初期メンバーはベスだけか? 流石にリアルで主婦やってそうだが』

「あの方については私も連絡の取り方すら分かりませんからね。仕方ありませんよ」


 ようやく初代“殲滅し引き裂く剱ブレード・オブ・アニヒレーション”の二人目、シロと出会えた。この調子でまた一人、また一人と再集合できればいいのだが。


「えっ……シロ様、もしかして本当にお知り合いだったのですか?」

「ええ。貴方は話を聞かずに飛び出していきましたからね」

「ばっかじゃねえの! 俺は少なくともすぐに手を出さねぇ!」


 というよりは味方だと分かっているなら仲裁に入ればいいものを、と俺は腕を組んで偉そうに登場するキョウに呆れた視線を送る。


「なんだとこの突貫馬鹿野郎!! シロ様を置いて真っ先に敵陣に突っ込みやがって!」

「切り込み隊長が切り込まないでどうすんだよ! あぁ!?」


 ……目の前で頭突きをしたまま互いに一歩も引かない光景を見せられた。どうやらキョウとカイはあまり仲が良くはないようだ。


「バカ、二人」


 シロの後ろから、先程分かれたばかりのチェイスが姿を現わす。どうやらあの後無事合流できたらしい。


『……これで今の代の主要メンバーは全員か?』

「いえ。後の幹部三人は別件でまた動いて貰っています」

『つまり全員で六人……あの時と同じか』

「ええ。最初は三人、そこから更に三人。それがある意味我々のギルドらしい集まり方ですから。……さて、今の戦闘結果も出ましたし戻りましょうか」


 ステータスボードのお知らせ欄には、確かに今の防衛戦がベヨシュタットの勝利で終わったのだと知らしめるメッセージが届けられている。


『ここからまた、俺達の戦いが始まるんだな』

「ええ。当分は彼らの育成になりそうですが」


 これで役者はほぼ揃った。後は反逆の狼煙を何時上げるのか、その時に向けて力を蓄えるだけ。


『……ラスト』

「はい?」

『……ありがとう』


 お前という心残りがあったおかげで、平凡な社会人でしかなかった俺が、武士としてまた高揚感を得られることができたのだから。

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