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第七節 本当の意味での復帰 4話目

 ――あれから二日ほど経過するが、例の二人が現れる気配はない。

 下手に潜んでいる場所を教えては意識してしまうからと、囮のアイゼにすら俺達の位置は知らせていない。しかし確かに俺とラストは、アイゼから少し離れたところで待機を続けている。


「一向に現れる気配はありませんね……」


 導王も気が進まないながらもやはり今回の件には危機感を持ってくれている様で、負傷したジュデスを近くに置きつつ、城内にケファロを待機させる形で護衛の配置を行っている。

 そして残りのゼバルベル、ガイデオン、ジェイコブで三ヶ所の検問を中心に配置、遊撃役としてヨハンを見張りとして見回りさせることで、万全の体制をとることにしたようだ。

 城内については導王が直々に指揮を執っているが、城の外――つまりアイゼを囮とした作戦は俺に一任してくれているようだった。


「……流石に短期間で何度も襲撃を重ねて――」

「迎えに来たぞ、アイゼ!!」

「っ、貴方でしたか!」

「ああ! モリオンヌには反対されたが、俺一人なら身軽に動けるからな!」


 ――くるのかよ、このバカは。そしてどうやら敵はプレサス田中一人だけのようで、その口ぶりから他に誰かが来ることもないようだ。


「仕事だ。やるぞラスト」

「仰せのままに」


 そうして今回俺達が隠れていたのが――


「――抜刀法・終式――」


 ――天雷!!


「うおぉあっ!?」


 頭上から雷のように浴びせた袈裟斬りは、確かに田中の胴体を切り裂いていったはずだった。


「……流石に一撃では仕留められなかったか」


 勇者職だけあって防御力もまずまず、か。いや、違うな。並大抵なら今の一撃で文字通り終わっていたが、やはり今までが甘く考えていたといって差し支えないようだ。

 その証拠として、俺は現状所持している中でも最強の刀である羽々斬(ハバキリ)でもって、最初の一撃を加え入れたのだから。


「ぐ、はっ……!?」


 しかしそれでも重傷を負わせるくらいには手痛いダメージを与えられていたようで、田中はそのまま片膝をついてその場に伏せようとしている。


「おっ、お前、卑怯だぞ! それでも元“王”か!?」

「“元”王だからこそだ」


 そうだ。元の肩書に意味なんてものはない。


「今ではただの一般プレイヤー。卑怯な手なんざ、上等だ」


 お前を始末すれば、その分俺は強くなれる。お前を倒しさえすれば、ひとまず虚空機関ヴォイドの力を削ぐことができる。


「貴重な経験値という意味で貴様に感謝こそすれ恨みはないが、ここで死んでもらう」

「ぐっ、馬鹿にしおって……」


 応急処置に回復薬を飲む田中を前にして、俺もまた自分自身にバフをかける為のポーションを次々と口にしていく。

 攻撃力、防御力、敏捷性――これらを強化するポーションにも普通なら多少のリキャストタイムは発生するが、俺が飲んでいるのは過去にギルドで作っていた特別性で、多少効果は落ちるがリキャストタイムが非常に短く、連続してバフをかけることができる。


「さて、互いに準備が整ったようだな」

「準備って、お前が一方的にポーションをがぶ飲みしてただけだろ!」

「そっちだって悠長に回復薬一本を飲み干したんだろ? だったらいいじゃないか」


 そうして俺は納刀をしていた腰元の刀に手を添えて、改めて名乗りを上げる。


「“無礼奴ブレイド”の露払い役、ジョージ……参る」

「ふん! 格好つけおって、今に吠え面かかせてやろう!」


 こうして俺と虚空機関最初の一人目との戦いの火ぶたが今、切られようとしていた――

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