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第六節 息つく暇 4日目 

「なっ――」

「我々の秘密を知っているだと!?」

「なんだと!?」


 ここでの「なんだと!?」には二つの意味があった。一つはここで初めて耳にしたかのように動揺して見せたことで、俺がその情報を知らなかったとアピールする点。

 ――もう一つは、どうして俺と導王だけが知り得る情報を、こいつ等が持っているのかという点だった。


『……どこでその情報を知った?』

「うーん、貴方達の言うところの占いとでも言っておきましょうか」

「バカな!? 我らが大いなる主しかできない筈の占いを、どうして――」

「何も大いなる主だけの専売特許という訳ではありませんよ。対応する魔導書を読み解くことさえできれば、会得することは不可能でありません」


 不敵な笑みを浮かべるモリオンヌの姿が、俺達にとって一気に危険性を孕んだものに見えてくる。自然と腰元の刀の柄に手を添えながら、俺はいつでも戦闘に入ることができるように構えをとりつつ、更に情報を聞き出そうとした。


「それで、インテリジェンス・ウェポンが狙いということは――」

「ええ。大方予想通り、“武器”として奪いに来たのです」


 それだけ聞ければ十分に、敵対する理由となる。


「抜刀法・壱式――居合――」

「待て!」


 縮地で踏み込み、一閃のもと斬り捨てようとした俺の前に、ジェイコブが割って入る。


「ここは俺達に任せろ」

「相手はお前たちの事を攫うとまで豪語しているんだぞ、一筋縄でいく相手じゃない」


 戦うにしても全員でかかっていくべきだと説得しようとしたが、更にジュデスも構えを取り、そしてアイゼが俺の刀を抑えるように手を重ねてくる。


「ご心配なく。私達は大いなる主の剣として、このような場面など何度も切り抜けてきましたから」

「ほう、かかってくる気か。想定の範囲内だな」


 アフロの男はそう言って剣と盾を構える。その見覚えのある構え姿から、俺は一つの職業を思い出す。


勇者ブレイブか、面倒だな……』

「その通り、お前の仲間であり、あの化け物と同じ勇者ブレイブ職だ」


 シロさんを化け物呼ばわりとは……否定はできないが。


『本当に三人だけで倒せるのか? 一人は勇者職、そしてもう一人は恐らく魔導士ウィザードだぞ』

「心配ご無用でございます、ジョージ様。このジュデス、大いなる主より優れた魔導士を知りませんから」


 ジュデスの言葉を挑発と取ったのか、モリオンヌは眼鏡を人差し指でクイッとかけなおす動作を取った後に、そのまま人差し指をジュデスの方へと向ける。


「ほう……ならば、この魔法も受けきれるとみてよろしいですね?」

「ふふ、何が来ようと見切って見せ――何だ、と……?」


 モリオンヌの指先に急速に集められる光。その輝きは薄暗い裏路地を照らす小さな太陽のような眩さまで高められていく――


「その身をもって味わうといい……【甲式閃光熱波(アルファレイ)】!!」


 ――たった一瞬の出来事だった。神滅式(かみごろし)と同じスピードで放たれた光線レーザーが、まっすぐにジュデスの腹部を撃ち抜くのは、まさに瞬きもできぬスピードで行われた。


「なっ!?」


 光線はそのまま遠くの地面に着弾すると、巨大な爆炎が轟音とともに辺りを恐怖へと陥れていった。


「……ぐはっ!?」


 数拍遅れてジュデスは膝をつき、開けられた風穴に手を当てて痛みを堪えようとしている。その様子を見たジェイコブは一瞬にして味方がやられたことに動揺しつつも、レイピアを構えて戦闘態勢に入る。


「よくもジュデスを!」

「ふむ、少しやり過ぎました」

「まったくだ! こうなったら“導王”もすぐに出張ってくるぞ」

「田中さん! この場で“導王”は“NGワード”だと事前に確認したではありませんか」

「おっと、悪い悪い」


 導王がNGワードだと……? 一体どういう意味だ? 


『……色々と疑問が積み重なるが、こちらの手札が一枚無条件に落とされた以上、俺も参戦させて貰う』

「おやおや、まずいですね。刀王ともなれば、今の【甲式閃光熱波(アルファレイ)】だけで攻略法がバレた可能性もあります」

「だったら俺が代わりに出るまでよ!」


 そうしてモリオンヌと交代するように前に出てきたのは、田中と呼ばれたアフロの勇者。


「俺の名前はプレサス田中! 隙に呼んでくれ!」

『別に親しくもないからな。田中と呼ばせて貰おう』

「はっはっは! では手短ながら、死合おうぞ――」

「お待ちください」


 一触即発。次の瞬間には刃を交えようとしていたところで、一人の女性の声によって動きが止められる。


「なっ……アイゼ!?」

「ここは私に任せてくださいジェイコブ、そしてジョージ様」

「任せろって、さっきのを見たか!? 俺がやる!」

「いえ、私にやらせてください」


 そういうとアイゼは腰元に挿げていたブロードソードを抜剣し、その切っ先をまっすぐに田中の方へと向ける。


「ここから先、この“希望”のアイゼがお相手いたします」

「へぇ、女だからって俺は手を抜くつもりはないがいいよな?」

「別に構いません。貴方達の言う通り――」


 ――私はただの、つるぎですから。

 この小説とは関係のないことになりますが、短編を3つ投稿しました。読んでいただければ幸いです(´・ω・`)。

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