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第六節 息つく暇 1話目

『――ブラックアート時代から続く長い歴史があるんだな。この街には』


 そういえば前作における導王が統べる魔導国家であるブラックアートの時も、首都は同じマドレアだったか。前作から百年という時が過ぎた設定にしては、街並みが大きく変わったようには見えない。


「今の導王となってから三十年経つが、大きな戦いはヴァニクス平野を除けばほとんど起きていない」


 確かにベヨシュタットから招集がかかった際も、大抵の相手国はテクニカかリベレーターがほとんどで、後はナックベアくらいなくらいか。

 アシャドールももしかしたら今まで相手をしてきた中にいたのかもしれないが、そもそも暗王率いる暗殺メインの国家自体、前作からして表立ってきたことはないからカウントできない。


『確かにソーサクラフと真正面からから事を構えるなんて話は聞いたことがないな』

「大いなる主は積極的な戦を好まない平和主義なお方だからな。基本的には中立を保っている。だが大きな戦争となれば、我々が表に立って戦う。その上、この国には他の国以上に冒険者が立ち寄っていて、拠点としている者も多い。彼らもまたいざとなればこの国の為に戦うだろう」

『なるほど。目立った大きな軍は持っていないにしても、他国に匹敵するだけの戦力を即座にそろえることはできるということか』


 ガレリア領も冒険者が集う憩いの街となっているが、ソーサクラフの場合その規模が国レベルという訳か。となれば有名な冒険者や、正式にソーサクラフに取り入っていないとはいえそれなりに有力なギルドが控えている可能性も高い。

 尚且つ他の国とも自由に行き来している冒険者がいたとして、ソーサクラフ側に立たれてしまっては国の内情まで筒抜けにされる可能性もある。


『上手く自衛のシステムが出来ているという訳だな』

「それもこれも導王が人種問わず、そして種族問わず、門戸を叩いてきた者全てを受け入れるという懐の深さから成されたものだ」


 確かに街を歩いている限りでは、多様な種族が何の違和感もなく互いに交流し、過ごしているのが見える。ある意味では、前作におけるベヨシュタットを想起させるような光景で、今の俺にとっては懐かしさもあり、そして羨ましさもあった。

 そんな中でジェイコブは、だからこそ自分達が王を守る剣とならねばならないと、強く拳を握っている。


「あのお方の優しさは底なしだ。だからこそその優しさにつけこんだ刃が届かぬように、俺達は目を見張っておかなければならない」

『その一環として、俺に襲い掛かった訳か』

「あの時は警戒せざるを得なかった。何せ初代刀王が単身で真っ向からこの国にのりこんで来たのだからな」

『そう言われたら、納得するしかないか』


 そうして俺とジェイコブが会話を続けていく中で、後ろを歩いていたアイゼとラストも、少しずつだが会話を重ねている。


「……確かに主様の言う通り、多種族国家としては理想の形かもしれないわね」

「その通りなんですよー! ここでは種族間を問わずに結婚とかも許可していて、まさに多様性を受け入れる素敵な国なんです!」

「確かに私と主様が結婚できそうなのは、この国くらいなものかもしれないわね」

「へぇ、結婚の予定があるのですか?」

「……いずれはね」


 いずれって……そんな話聞いたことないんだが。かといってわざわざ真っ向から言い張ってまで否定する気もないが、とりあえず放置しておこう。


「…………」

「主様から普段なら飛んでくるツッコミが無い……ということは、遂に私を――」

『いちいちツッコむのに疲れたからスルーしているだけだ』

「そ、そんなー……」

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