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第五節 王の器、人の器、道具の器 3話目

「“インテリジェンス・ウェポン”……」


 導王の言葉を反復することで、言葉の意味をかみ砕いて飲み込み、理解する。

 知性を持った武器だと……? そんなもの前作には存在しなかったし、見たことも聞いたこともない。最近で思い出されるものとすれば、シロさんが持っていた“報復者アンサラー”という自動で戦闘を行う剣であるが、あれはあくまで剣単体の代物。それがアイゼやその他の奴らのように、人を模って顕現するなんて前代未聞だ。


『そんなものが、あり得るのか……』

「あり得るからこそ、今まさに見てきたのだろう? アイゼやガイデオン、そしてその他の(つるぎ)達を」


 自分がいくら否定をしたとしても、現にその姿を目にしてしまっているという事実を動かすことはできない。


『……そんな秘密を俺に教えてよかったのか?』

「別に構わないさ。これから先に語る条件を呑んでくれるなら、ね」

『……いいだろう。まずは聞かせて貰おうか』


 現時点ではどんな条件が飛び出てくるのか予想できない。そう思って身構えた状態で導王が次に口を開くのを待っていると、導王はゆっくりと口を開き、こう語った。


「――彼らに、戦争後の自由を与えてやってくれないか?」

『……それはどういう意味だ?』


 自由を与える――そんなことなど元より、平和になった世の中で武器は必要となる筈がない。


 ――必要とならない? ……なるほど、そういうことか。


『あいつらに、戦う以外の新たな存在意義を与えてやってくれということか』

「そういうことだ。それも、彼らの自由意志に則った形でね」


 簡単な話、聖剣七人衆という戦う集団から彼らを解放させたいという訳か。そしてもっと言えば、導王そのものが戦争を望んでおらず、この世界がいち早く平和になることだけを願っているということか。


『こちらとしては構わないが、問題は奴らがどう思うかだな。ここまで話を重ねてきた限りでも、導王の配下としての使命感は凄まじいものだったぞ。それこそ本気で命を懸けている』

「それは彼らがそれ以上の喜びを知らないからに過ぎないからだ。剣として生まれたからといって、剣として戦うのみの選択肢だけを選ぶ必要なんてない。彼らには私達と同じで、自由な“意思”を持っているのだから」

『自分達と同じ……』


 ここでふと俺の脳裏に浮かんだのが、他の誰でもないラストの姿だった。

 俺だって何度も考えたことだ。この世界はあくまでゲームであって、実在する世界ではない。そしてこの世界(ゲーム)の住人だって、具体的には精巧に作られただけのAIに過ぎない――かもしれない。

 かもしれないと言ったのは、俺がラストから感じる想いが、そしてギルドのメンバーやその他の住人から届けられる言葉が、考えが、どうしても機械的なものだと処理できないからだ。


「君からすれば、馬鹿げているかもしれないし、滑稽に見えるかもしれない。それでも僕はあの(つるぎ)達に、彼らに自由を――」

『分かった、条件を呑もう』

「本当かい?」

『ああ。自治権についても同じく、戻った後で俺が話をつけておく。……あんたは恐らく、俺と気が合いそうな気がしたからな』


 導王もつまるところはAIに過ぎない。そんなAIが他のAIの自由を求めるなんて、確かに滑稽に見えるかもしれない。

 だがラストに対する俺の想いと、導王の想いに何一つ違いはない。


「……そうか、君は信じてくれるのか。彼らに本当の意味での自由が訪れてくれることを」

『俺だって、似たような考えを持っているからな』

「はははっ、だとしたら、もし出会っていたタイミングが違っていたなら、良き友になれたかもしれないな」

『確かにもっと早く会えていたなら、今のベヨシュタットなんかじゃなく、あんたの下に仕えていたかもしれないな』


 そうして互いに納得のいく条件の下、第二王子の書状の内容は導王の名のもとに承諾してもらえることに。


「それでは書状の通り、我々ソーサクラフは後の新生ベヨシュタット国となるであろう三か所の領地について、一切の手出しをしないことを誓おう」

『その言葉、ありがたく頂戴する』

「おって正式な書状を君に渡すとしよう。それまで申し訳ないが、もう少しだけこの国を見て行ってくれないか?」

『無論、国として大先輩となるソーサクラフの視察をさせて貰うとしよう』

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