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第五節 それぞれに示された道 5話目

「それは……あまり穏やかな話じゃねぇようだな」


 既に上司であるバトラを裏切り、テクニカを抜けるという行為を経験したクロウにとって、国を相手取る行為のリスクの計算はそう難しいものではなかった。


「上司の前で無様にも銃殺されかけた俺が言えたことじゃないが……下手したら今度こそ死ぬぞ。はっきり言って国の側近というのは僻地のお偉いさんとは動かせる駒の規模が違い過ぎる」

「分かっています。ですからボクは探りを入れると同時に、ガレリア領とラグール砂漠、そしてギルサール領の連携を強め、二つの領地の主要都市であるレリアン、チェーザムの防衛能力強化に加えて、ザッハムの本格的な都市開発を提案したいのです。これが三つ目の提案。そして最後ですが――」


 ここでシロさんは俺の方を向いて、そしてさっきの話と繋げるようにしてこう語った。


「周辺国との停戦条約を結んできてください。ソーサクラフ、ナックベア、そしてテクニカ。特にテクニカとは絶対に結べるように努めてください。向こうの王の気性はイマミマイさんを通してある程度把握しているので、敵国相手とはいえ興味さえ持ってもらえれば話は通じるはずです。導王の方は情報が少ないですが、少なくとも今は小競り合い程度に近いので、こちらもまだ話は通じるかと」

『それって遠回しに俺に行って来いってことか?』

「遠回しではなく直に頼んでいるつもりですが」


 えぇー……滅茶苦茶な振り方してくるじゃないですか。


「ご心配されずとも、ボクもナックベアの方には顔を出そうと思っています」

「それって大丈夫なのか? あんた蹴王と一騎打ちで土をつけさせたんだろ?」

「ええ、それを踏まえての敢えての訪問です。向こうも一騎打ちで戦った者がわざわざやってくるというのに、不意打ちだとか数で囲んで叩くとか武人の恥みたいなことはしないでしょうし」


 確かにナックベアの武に対する愚直さは過去のベヨシュタットにも通じるところがあるし、正々堂々と戦うことを誇りとする拳王が、蹴王と一対一で戦った相手にそんな真似を許すとは思えない。


「ということでジョージさんには順番としてソーサクラフ、テクニカの順で訪問に行って貰えると助かります。ボクもちょっとだけですがテクニカには興味がありますので、できればご一緒できればと思いまして」

「フン、私は先にテクニカに行って目的の物品を買いたいのだがな」

「お気持ちは分かりますが、これもギルドを守るため、ひいてはジョージさんを守るためと思っていただければ……」


 いつもより大分言い方を変えてきたなシロさん。ようやくラストの扱い方が分かってきた感じか?


「……仕方あるまい。主様の為だ」

「ありがとうございます。では最後にベスさん」

「ようやく私に仕事かしらぁ?」

「ベスさんにはまた別の意味で重要な仕事についてもらいます。内容としては、最近ガレリア領に探りを入れ、こちらの動きを嗅ぎまわっている集団がいるようです」

『その件についてだが、俺の家があるクエッタ村にも夜中に不審な人間が家を一軒一軒調べていたらしい』

「おや! それは大変でしたね。グリードは大丈夫でしたか?」

『魔法でカモフラージュをして一応は誤魔化せていたようだが、それでもいつまでもつか分からない』


 実際に相手がどの程度の力量なのか把握できていない現状、グリードを上回る解析スキルなりを使われたらまずいことになる。


「だとしたらジョージさんの家にいる子供たちも含め、一旦全員をここに引き上げて頂いた方がいいかもしれませんね」

『分かった。すぐにこっちに移動させよう』


 となると、この後すぐにでもこの建物へと移動をさせるべきか。色々と本当のことを話すと怖がることにもなりそうだから、幹部がユズハに対して本格的に稽古をつけるという名目で移動してもらうか。グリードには裏で本当のことを話せば、協力してもらえるだろうし。


「ベスさんにお願いしたいのは、当然ながらここレリアンの街も防御を固める開発を開始しますが、それにあたって嗅ぎまわっている輩を――」

「片っ端から始末すればいいのねぇ? 簡単よぉー」

「……そうなります」


 殺しとなればウッキウキで返事をするベスを前に、ただ一言しか言うことができなかったシロさんだった――

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