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第一節 変貌する国家 3話目

「――今日のところはここらで休憩させていただきやすぜ、旦那」

『分かった。馬車には妻が乗っている。くれぐれも中を見ることが無いように』

「わ、分かってますってば……」


 いざという時にはラストには戦ってもらうつもりであるが、オラクルという存在が信仰として広がっているという現状に脅えが収まっていない状況、まともに戦えるとは考えづらい。


『……おい』

「へい!」

『どこに行こうとしている?』

「どこって、ちょっと用を足しに行ってくるだけですぜ」

『……音響石サウンドストーンを手に持ってか?』

「ぐっ……」


 恐らく俺が金を持っていることを知って、野党に襲わせて金品を山分けしようとでもくらいに思っていたのだろう……まったく、前作のベヨシュタットであればあり得ない事態だぞ。


「こうなったら……」

『呼びたかったら好きなだけ呼べ。貴様を除いてひとまず皆殺しにしてやる』


 ここから先は脅して御者をただ働きさせることができるから、ある意味金銭が浮いたな。

 そんな呑気な考えを持ちながらも、残心を発動して敵の位置を図る。


『……十、二十……三十人か』

「ぐははははっ! 随分と羽振りがいいらしいじゃねぇか! 俺達にも恵んでくれよ!! それにおまけに美人の奥さん連れてるらしいじゃねぇの!? 一目見てみてぇなあオイ!!」


 坊主頭の大男が、その身に余る大剣を片手で軽々と振り回し、切っ先をこちらに向けてくる。

 ……ああ、そうか。いつものタイラントコートを身に着けていないから、こいつら俺の事感づいていない感じか? それにしてもキーボード使っているの俺ぐらいのものだからそっちでも気づくと思うんだがな。

 そして予想していた通り、御者と大男は通じていたようで、俺に勝つ前提で金品の割り振りについて話し始めている。


「お、おい! 紹介料二割だからな!! 物品はだめだぞ! 金だけだ!」

「分かってるっつーの! おい! 大人しく――」


 それにしても切っ先を向けられっぱなしなのも不愉快だな。


「――大人しく、なんだ?」


 剣を持つ腕を一瞬で斬り飛ばし、俺は問いを返す。


『大人しくしないと、どうなるんだ?』

「ぐ、うぎゃあぁああああああ!?」

「うるさいな……」


 今度は声も出せないように、一撃必殺の唐竹割り。もはやこの程度の相手なら抜刀法すら必要ないな。


『面倒だ。全員まとめて来い――いや、それも面倒だ。こっちから皆殺しにさせてもらう』

「なんだと――ぐわぁっ!?」

「ぐぎゃあっ!?」

「ぎっ――」


 縮地を使っての辻斬り。一度も納刀することなく、そのまま全員斬り捨てる。


「ばっ、馬鹿な!? こいつら全員レベル50“も”あるプレイヤーなんだぞ!?」

「チッ、50“しか”ないのかよ。やたらさっきから経験値がカス以下のものしか入らないはずだ」


 恐らく正式サービス後の後発組、あるいは新規組か。どっちにしても、こんな下らないロールプレイしかできない奴らが束になってかかってきたところで、ゴミ掃除にしかならない。

 そうして残りも片っ端から切り刻んでいると――


「くっ、せめて女を人質に――」


 そうして盗賊の内の一人が馬車の扉に手をかけたが――


「――バカが」


 ――がら空きの背中に向けて袈裟斬り。上半身と下半身を別れさせたところで、今度は俺の方が刀の切っ先を御者の方へ向ける。


『……さてどうする?』

「ど、どどどどうするって――」

『このまま“盗賊から救ってくれた礼としてタダでレリューム領まで送り届ける”か、この場所で“不運にも辻斬りにあって微塵斬りとなった死体として発見される”か。早く選べ。俺は苛立っているんだ』

「ぜ、是非とも盗賊からお救い頂いた冒険者様を、無事レリューム領まで送り届けさせていただきたいと思います!!」


 相手の実力を読み間違えるくらいなら、最初から大人しくしておくんだな――

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