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引退していたVRMMOの続編が出るらしいので、俺は最強の“元”刀王として、データを引き継いで復帰することになりました  作者: ふくあき
流転の章 ~コンチェルト~

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第一節 変貌する国家 1話目

 新章スタートになります。また頑張って楽しめるような話を続けていければと思います。気に入っていただけましたら評価などいただけますと幸いです。(´・ω・`)

「うぅうううぅ……」

「知らん知らん、俺は何も知らん……」


 蹴王の離脱によりチェーザムを奪取することができた俺達は、いつものように連絡役のエニシに依頼をしてきた貴族への報告などを任せて、各々しばらくの自由時間をとる運びとなった。

 ひとまず今回のMVPとしてシロさんは例の貴族に呼ばれているらしく、その後俺も紹介したいというメッセージも来ていた。

 だが家の中の様子からして、はいそうですかとすぐに向かいに行ける筈もなく――


「あーるーじーさーまぁー……」

『……自分でママ呼びさせているんだから半分は自業自得だろ』


 ユズハ達三人はもとより、グリードも住むようになったこの家。流石に六人もいるとなればそれなりの大所帯になってきたのは間違いない。そんな中で俺がいない間、ラストは一人で家を切り盛りしていたようで(というか少しは手伝えよグリード……)、本人としても俺と長期間会えなかったのもあって元気がなくなり、駄々をこねている様子。


『なんだかんだ言ってウタとか手伝ってくれた筈だろ?』

「でーもー……私の料理は主様に食べさせるためであって、このような輩の為に作っているわけではないんですぅ……」

『そうは言ってもこれだけ住んでいるんだからしょうがないだろ……』


 こうなったら道を挟んで向かいの土地か、隣の土地でも買い取って家を追加で建てるか……? いや、そうして俺とラストだけになった場合、誰がストッパーというか、自制する雰囲気を作り出してくれるのか。流石にアラサーで毎日ヤるってのはきついし枯れるぞ。


「……考えたら前作でよく腹上死しなかったな俺」


 なんて下らないことも頭をよぎりながら、実際問題どうしようか考えるべきではある。

 家の振り分けとしては俺とラストは絶対一緒の家なのは確定として、やはりグリードと三人娘が一緒の家という形でいいのか? 様子を見る限りでは特に相性が悪いといったこともなさそうだし。


「……もう少し稼いでおきたいところだが」


 ベスとの折半分、そして今回の戦争で敵から回収した武装や所持金を換算すれば、今すぐにでも土地は抑えることができる。だが日々の生活費も膨れ上がっているのも考えるともう少し余裕を持たせてから土地購入に踏み込むべきか。


「ひとまず、貴族に会いに行くか……『ラスト』」

「はぃ、なんでございましょう……」


 駄目だこいつ、グダグダ過ぎて猫みたいに伸びてる。


『今から貴族に会いに行く。お前もついてこい』

「はぃ……えっ!?」

『俺とお前だけだ。帰りは【転送(トランジ)】でさっさと帰るぞ』

「承知しました! 主様!」


 二人きり――言葉の意味を理解したラストは、急に空気の入った風船のように飛び上がって出立の為の支度を始める。


「えぇー!? 今日の稽古はないのー!?」

『俺が帰ってからならやれるぞ、ユズハ』

「そっか、ならいいや!」


 そろそろユズハも本格的にクエストに連れまわしてもいいかもしれない。最初は経験値のおこぼれ稼ぎになるだろうが、すぐにある程度は戦えるようになるはず。

 そんなことも考えながら、俺はラストを連れて家を後にする。


「久々の二人きり……」

『そんなにいうほど経って――るな。まあ、訪問先は貴族の家だが』


 それにしてもチェーザムの土地を欲しがっていたという貴族、なんて名前だったかな――



          ◆ ◆ ◆



「――それにいたしましても、シロ殿の今回の活躍によりこの度の我がベストラード家の我が儘が叶えられることとなって、誠に感謝いたします」


 その風体は、現代風にいうのであれば英国紳士と言えば想像しやすいだろうか。モノクルをかけ、フィット感のあるスーツを身に着けた中年の紳士が、今回の戦争のMVPであるシロと机を挟んで向かい合うように座っていた。

 どちらも礼儀を弁えているのか、上品な空気が漂う中、シロは紳士のお礼に丁寧に返答を返す。


「いえいえ、こちらとしても後ろ盾として今後も支援などいただければ幸いです。それよりも一つ聞かせて欲しいのですが」


 エニシに劣らぬ丁寧な仕草の冒険者に気分を良くしたのか、紳士である男はにこやかに質問に答える様子を見せる。


「シロ殿からの質問であれば、なんでも答えますぞ!」

「でしたら……何故ベヨシュタットに近い北東部にあるレリューム領から、わざわざ砂漠を挟んでかなり離れた南西のギルサール領へと自ら領地替えを志願したのです? チェーザムという栄えた街があるとはいえ、砂漠近郊の地域で農地も少なく、あまりうまみが無いように思えますが」


 ――しかし質問の内容を前にして男は動揺し、口をつぐむ。

 わざわざこんなことを聞いてくるとは、敵か、味方か。色々な思惑が巡る中、目の前の青年を信じたのか、紳士は静かに本音を吐露する。


「……ここだけの話です。私は……ベヨシュタットを見捨てる選択肢を取ることを考えているのです」


 衝撃的な回答を前にそれまでにこやかだったシロは、ある意味ヴェルサスと相対した時以上の真剣なまなざしを紳士に向けた。


「……それはまた随分と、物騒な話ですね――」

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