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第八節 王対王 4話目

「ぐっ、くそっ!」


 どうしようもないもう一つの敵。召喚されたモンスターならその命を断てばいい。だがアンサラーと呼ばれるその武器に、命などありはしない。


「さて、アンサラーに相手をしてもらっている間、追加でこちらも」

「もう一本だと!?」


 ――その剣は、炎の龍を纏っていた。うねり、猛り、燃え盛り――生きた龍を纏っていた。


「――魔法剣“倶利伽羅くりから”。まだ色々と仕込まれているギミックを解析中ではありますが、今はただの炎の魔法剣として扱わせてもらいましょうか」

「生きた魔剣に、龍を纏う炎剣! ジョージ殿! これは――」


 くっそぉ! こうなったら俺もどこかに武器を求めに出歩かなければ!


「ぐぐぐ……」


 双眼鏡を持つ手が、嫉妬で震えている。ある意味ジェラス以上に心を揺さぶられたぞ。


「くっそぉ! こんなんアリかよぉ!?」

「それを言うなら、こっちも金剛脚ダイヤモンドレッグについて文句を言いたいくらいですよ」


 実質的な二対一。しかも片方は意識せずとも勝手に動く魔剣。


「クソッ! 楽しくなってきたじゃねぇか!!」


 ヴェルサスの顔から余裕が消えたが、代わりに現れたのは強敵を前にした笑み。


「やっぱり楽しいよな、この世界ゲームはよぉ!!」

「その意見には、同感ですね!!」


 倶利伽羅の刃は金剛脚で受け止められる。だがその炎に対する耐性は皆無。


「ぐぁあああ!!」

「ようやく、ダメージが通りましたか」


 ――最初の一撃(ファーストアタック)をとったのは、シロさんだった。


「くっ、まだ表面を焼かれただけだぁ!」

「……勝負あったな」

『ああ』


 こっちは武器でもって防御もできる。だが相手には防御不可の攻撃が――避けなければならない攻撃が、入り混じって飛んでくる。


「くっ、こうなったら俺の奥義を――」

「――そこまでだ」


 ――蹴王の蹴りを、シロさんの炎の一撃を。その男は瞬間的にその場に姿を現し、空間を歪ませるバリアでもって割って入り、防いで見せた。


「っ! あいつは――」

「なんだあいつは!?」


 俺のセリフに被せるように叫ぶのは止めてもらっていいすかグスタフさん……。


「……虚空機関ヴォイドの連中、何をしに来たんだ?」


 フード付きの真っ黒なロングコート。だが動作の細かな所作の違いから、キリエ達と一緒にいた輩とはまた違う人間のように思える。


「虚空機関……?」

『ああ、グスタフさんにはまだ言っていなかったか。そういうギルドがいるんだよ』

「以前にも遭遇したのか!?」

『した。そしてその中に、キリエもいた……』

「なんと!? キリエ殿も――」

『詳しい話は後だ。まずは目の前の状況把握が重要だ』


 奴の張ったあのバリア……恐らくは【空間歪曲エリアルディストーション】。使えるのはラストだけだと思っていたが――


魔導士ソーサラーは詳しくないが……確か対応する魔導書を読めば魔法自体は使えるということだったな』

「それにしても、あれは確かにラスト殿の【空間歪曲エリアルディストーション】に似ているな」

『ああ。恐らく同じか、同等の魔法が発動されている』


 それにしても何だ? あの魔導士は。あの中華服の男と同じ、出現するまで探知ができなかった。かといって、【転送(トランジ)】のように事前に魔法陣が出現した気配もない。


「……まさか、縮地か?」


 いや、あり得ない。それこそあり得ない。あれは侍のスキル。魔導士が会得できるものではない。

 ――僅かな可能性だが、魔法剣士か? だとしたら、キリエが関連している……?


「どうするよ、ジョージ!」

「ん?」

「ん? じゃなくて、向こうも一騎打ちに割り込んで来やがったんだ! こっちもグランドウォーカーを使って援軍出すべきじゃねぇのか!?」

「っ!? そうだよその通りだクロウ!」


 急いで乗り込み、クロウの運転に任せて急いで近づいていく。


「クソが、一騎打ちとか言いながら、ヤバくなったら割り込みかよ! 蹴王が聞いてあきれるぜ!」

『全くもってそうだな…………だがその蹴王側も、これは想定外だったみたいだ』


 男が登場するなり、シロさんは即座に距離をとって盾を呼び出していたが、これに対してヴェルサスはフードの男と何かもめているのか、互いに向き合って言い合いをしている様子。


「何を手ぇ出してんだぁ!! 邪魔すんじゃねぇよ!!」

「落ち着けヴェルサス。俺は契約に従って動いたに過ぎない。契約者からの言付けで、蹴王という高レベルプレイヤーを死なせるくらいなら、このチェーザムを明け渡した方がマシだと言われている」

「なるほど……確かに都市ならば手放したところでリセットもなく、都市開発もそのまま。ですが高レベルプレイヤーは抹消されれば、リビルドも含めて色々と時間がかかりますからね」


 ――特に王を冠する者であれば、地位を含めて尚更に。


「……どうやらやっこさん、離脱するみたいだぜ」

『何? 総大将が離脱をすれば自動的に敗北になって、チェーザムはこっちの領地になるが……』


 敵は領地と人間で、人間を取ったということか。

 ――グランドウォーカーが到着するころには、蹴王とフードの男は【転送(トランジ)】によって、その場から姿を消していた。


「わりぃ! こっちの援軍が遅れた」

『すまん』

「いえいえ……それより、見ましたか?」

『ああ。虚空機関の所属先はナックベアだったってことか?』

「断定するのはまだ早いかと。向こうは契約で来たと言っていましたから」


 一体どういう目的のギルドだ……? どこかの国を勝たせるのが、この世界ゲームの終了条件だというのに。あれだけの力を持っていながら、襲い掛かることもなく撤退だけということが気がかりになる。


『……どこかのタイミングで、再度情報整理が必要そうだな』

「それも我々の主要プレイヤー、そして主要幹部(NPC)を全員揃えての情報共有も兼ねてですね」


 ひとまずこの一連の顛末はナックベア側も把握したのか、撤退戦はおろか、無条件降伏によって、チェーザムの街は俺たちの手に落ちることとなった――



          ◆ ◆ ◆



 ※※『リベリオンワールド』、大型アップデートのお知らせ!※※


 この度VRMMOゲーム、リベリオンワールドにVer.1.05アップデートが実装されることになりました! 内容としましては新実装第一弾! この百年間、暗黒大陸“レヴォ”に何が起きたかを追体験できるクエスト、その名も“パラドックスクエスト”を正式に実装!!

 そして遂にレベル130を超えたプレイヤーが出現し始めたことを祝して、あのオラクルに対抗できる――かもしれない!? 武器シリーズ、“アポクリファ”の実装、そして更なる隠し武器も!?

 今までも、そしてこれからも! “一生涯”楽しめるVRMMO、『リベリオンワールド』から目を離すな!!

次回から新章です。評価などいただければ幸いです。

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